動画編集なんてしたことのなかった私が、気づいたら毎週のように映像をつくるようになっていた話

触れたきっかけと思ったこと

友人の結婚式の二次会で流す映像を頼まれたのが始まりだった。「スマホで撮った写真と動画をいい感じにまとめてほしい」と軽く頼まれたものの、私は今まで動画編集なんてしたことがなかった。パソコンにインストールするような本格的なソフトは高額だし、操作も難しそうで敷居が高い。かといって、大切な友人の晴れ舞台で使う映像を適当なもので済ませるわけにもいかない。

スマホで何かいいアプリがないかと探していたとき、妹が「私これ使ってるよ」と教えてくれたのが、無料で使える動画編集のアプリだった。妹は趣味でダンスをしていて、練習動画をよくSNSに投稿している。その動画がいつも見やすくて、テロップやエフェクトもついていて「どうやって作ってるんだろう」と思っていたのだけれど、まさかスマホアプリだけで完結していたとは驚きだった。

最初は「無料だし、たぶん機能も限られているんだろうな」と正直あまり期待していなかった。これまでも無料の写真加工アプリなどを使って、透かしのロゴが入ったり、保存するのに課金が必要だったりという経験を何度もしていたから。でも妹が実際に作った動画を見せてもらうと、本当にクオリティが高くて、これが無料でできるのかと信じられない気持ちになった。BGMもちゃんと入っているし、場面転換もスムーズで、とても素人が作ったとは思えない仕上がりだった。

「まあ、とりあえずダウンロードだけしてみるか」という軽い気持ちでインストールしてみた。結婚式まであと三週間。時間はあまりなかったけれど、何もしないよりはマシだろうと考えていた。このときはまだ、自分がこんなにも動画編集にハマることになるとは思ってもいなかった。

最初に戸惑った体験

アプリを開いて最初に困ったのは、あまりにも機能が多すぎることだった。無料アプリだから機能が少ないだろうと思っていたのに、画面にはたくさんのメニューが並んでいて、何から手をつければいいのか全くわからなかった。「新しいプロジェクト」というボタンを押して、とりあえず友人から預かっていた写真と動画を読み込んでみた。

タイムラインに素材が並んだものの、そこからが問題だった。素材をタップすると編集メニューが出てくるのだけれど、「トランジション」「アニメーション」「エフェクト」「フィルター」など、専門用語のようなものがずらりと並んでいる。動画編集の知識がゼロの私には、それぞれが何を意味するのかさっぱりわからなかった。試しに「エフェクト」を押してみると、さらに何十種類ものエフェクトが表示されて、もう頭が混乱してしまった。

最初の一時間は、ただ適当にいろいろな機能を触っては「あ、これは違う」と戻る作業の繰り返しだった。写真を切り替えるときにふわっとした効果を入れたいのに、どこをどう操作すればいいのかわからない。音楽を入れようとしたら、動画の音声と重なって変な感じになってしまった。テロップを入れたいのに、テキストの大きさや位置を調整する方法がわからず、画面の端っこに小さな文字が表示されるだけで、全然思い通りにならなかった。

妹に「わからないことがあったら聞いて」と言われていたけれど、何がわからないのかすらわからない状態で、どう質問していいかもわからなかった。結局その日は二時間ほど格闘して、たった十秒程度の映像を作っただけで終わってしまった。しかもその十秒も、素材をただ並べただけのもので、とても人に見せられるようなクオリティではなかった。

このとき初めて、「動画編集って簡単そうに見えて、実は奥が深いんだな」と実感した。妹が作っていた動画も、きっと何度も試行錯誤して作り上げたものなんだろう。無料だからといって甘く見ていた自分を少し反省した。でも同時に、これだけ機能があるということは、使いこなせればかなりいいものが作れるはずだという期待も湧いてきた。

試行錯誤しながら気づいたこと

翌日、気持ちを切り替えてもう一度挑戦してみることにした。前日の失敗を踏まえて、今度は一つ一つの機能をじっくり確認しながら進めることにした。まずはシンプルに、写真を順番に並べて、それぞれの表示時間を調整するところから始めた。素材をタップして長押しすると、表示時間を伸ばしたり縮めたりできることに気づいた。これだけでも、写真の切り替わるリズムが全然違って見えることに驚いた。

次に挑戦したのが、写真と写真の間の切り替え効果だった。前日は「トランジション」という言葉の意味がわからなくて避けていたのだけれど、実際に触ってみると、これが場面転換の効果のことだとわかった。何十種類もあるトランジションを一つずつ試してみると、スライドするもの、フェードするもの、回転するものなど、それぞれ全く雰囲気が違った。結婚式の映像には派手すぎるものは合わないだろうと考え、シンプルなフェードやディゾルブといった効果を中心に選んでいった。

音楽を入れる作業も、前日よりはスムーズにできた。アプリ内に用意されている音源がたくさんあって、ジャンル別に分類されていることに気づいた。結婚式向けの優しいピアノ曲やアコースティックギターの曲を試しに当ててみると、それだけで映像の雰囲気がぐっと良くなった。ただ、音楽の長さと映像の長さが合わなくて、音楽が途中で切れてしまう問題が発生した。

ここで悩んだのだけれど、いろいろ調べてみると、音楽の長さに合わせて映像の長さを調整する方法と、音楽自体をカットして映像の長さに合わせる方法の両方があることがわかった。私は後者を選んで、音楽の盛り上がる部分をうまく使えるように、曲の前半と後半を組み合わせてみた。これが意外とうまくいって、自然な流れができた。

テロップについても、少しずつコツがわかってきた。テキストを入れるときは、背景の色によって文字が見えにくくなることがあるので、縁取りや影をつける機能を使うといい。フォントの種類も豊富で、結婚式らしい上品なものから、ポップで楽しいものまで選べた。ただ、あまり凝りすぎると逆に読みにくくなるので、シンプルなデザインを心がけた。

この段階で気づいたのは、動画編集には「引き算」の美学があるということだった。最初はあれもこれもと盛り込みたくなるのだけれど、実際に見てみると、情報が多すぎて逆にわかりにくくなってしまう。本当に必要な要素だけを残して、余計なものは削る。この判断ができるようになってから、作品のクオリティが一気に上がった気がした。

自分なりに工夫したポイント

結婚式の映像づくりで一番悩んだのが、ストーリーの構成だった。ただ写真を時系列に並べるだけでは面白くないし、かといって凝りすぎても見ている人が疲れてしまう。友人カップルの出会いから結婚に至るまでのストーリーを、どう映像で表現するか。何日も考えて、最終的に「章立て」の構成にすることにした。

「出会い編」「交際編」「プロポーズ編」「これから編」という四つの章に分けて、それぞれの章の最初にタイトル画面を入れることにした。タイトル画面には、テキストアニメーションという機能を使って、文字がふわっと現れる演出を加えた。この章立て構成のおかげで、全体の流れがわかりやすくなったし、メリハリもついた。

もう一つ工夫したのが、音楽の使い分けだった。最初は一曲を通して使うつもりだったのだけれど、それだと単調になってしまう。そこで、章ごとに雰囲気の違う曲を使うことにした。出会い編は軽やかなピアノ曲、交際編は明るいアコースティック、プロポーズ編は感動的なストリングス、そして最後のこれから編は希望に満ちたアップテンポな曲。それぞれの曲の切り替わりも、場面転換とうまく合わせることで、自然な流れを作ることができた。

写真の見せ方にもこだわった。ただ静止画を表示するだけではなく、ゆっくりとズームインしたりズームアウトしたりする動きをつけることで、動画らしさが出ることに気づいた。この機能は「アニメーション」のメニューにあって、様々な動きのパターンが用意されていた。写真の中で特に見せたい部分に視線を誘導するような動きをつけると、よりドラマチックな印象になった。

色味の調整も重要だった。友人から預かった写真は、撮影した時期や場所がバラバラで、色合いが統一されていなかった。明るすぎるものもあれば、暗めのものもある。これをそのまま並べると、映像全体のクオリティが下がってしまう。そこで、フィルター機能を使って全体的に統一感のある色味に調整した。結婚式という華やかなシーンに合わせて、少し明るめで温かみのあるトーンに統一することで、プロが作ったような仕上がりになった気がした。

実際の場面でどう役立ったか(旅行・日常など)

結婚式の二次会で映像を流したとき、予想以上の反応があった。会場のみんなが真剣に見てくれて、感動的な場面では拍手も起こった。新郎新婦の二人も涙を流して喜んでくれて、「まるでプロが作ったみたい」と言ってもらえた。このときの達成感は今でも忘れられない。

この経験がきっかけで、自分の日常でも動画を作るようになった。最初は家族旅行の記録から始めた。両親と妹と四人で行った沖縄旅行。今までは写真を撮るだけで満足していたのだけれど、動画でまとめてみたらどうだろうと思った。海の映像、食事の様子、観光地での写真、そういったものを組み合わせて、三分程度の旅行記録映像を作ってみた。

旅の思い出を映像にすることで、その場の空気感まで残せることに気づいた。波の音、街の喧騒、家族の笑い声。静止画では伝わらない臨場感が、動画には確実にある。編集しながら旅を振り返ることで、その時の感情まで鮮明に思い出せた。完成した映像を家族で見たとき、母が「これ、すごくいいね。毎年作ってほしい」と言ってくれた。

その後、友人の誕生日サプライズ用の映像を頼まれることもあった。友人グループのメンバーから、それぞれお祝いメッセージの動画を集めて、一本にまとめる作業だった。人数が多かったので編集は大変だったけれど、メッセージの順番を工夫したり、間に思い出の写真を挟んだりして、ストーリー性のある構成にした。誕生日当日、サプライズで見せたときの友人の驚いた顔と嬉しそうな表情は、何時間もかけて編集した甲斐があったと思えるものだった。

日常的にも使うようになった。ペットの猫の成長記録を月ごとにまとめたり、料理を作る過程を早送り動画にしてみたり。SNSに投稿すると、友達から「いつもの写真投稿より見やすい」「動画のクオリティ高いね」といったコメントがもらえるようになった。特に料理動画は反応がよくて、レシピを聞かれることも増えた。

仕事でも役立つ場面があった。会社の部署で新人歓迎会を企画したとき、チームの紹介動画を作ることになった。メンバー一人一人の写真と簡単なプロフィール、そして歓迎メッセージを組み合わせた短い映像。これを入社初日の新人に見せたところ、「温かい雰囲気が伝わってきて嬉しかった」と言ってもらえた。上司からも「次回のプレゼン資料も、動画を取り入れてみないか」と提案され、新しい仕事のチャンスにもつながった。

続けてみて変化したこと

動画編集を続けていくうちに、自分の中で大きな変化が起きていることに気づいた。まず、日常の風景を見る目が変わった。以前は何気なく通り過ぎていた景色も、「これ、動画にしたら面白いかも」と考えるようになった。夕暮れ時の空、雨上がりの水たまり、カフェの窓から見える街並み。そういった何気ない瞬間に、映像的な美しさを見出せるようになった。

撮影の仕方も意識するようになった。以前は適当にシャッターを切っていたけれど、今は「後で編集することを前提に」撮るようになった。同じ場所を複数のアングルから撮ったり、動画と静止画を組み合わせて撮ったり。少し長めに動画を回しておいて、後から必要な部分だけを切り取る。こういった撮影技術も、編集を通して自然と身についていった。

音楽の聴き方も変わった。映像に合う曲はどういうものか、この曲のどの部分を使えば効果的か、そんなことを考えながら音楽を聴くようになった。カフェで流れているBGMを聞いて、「これ、旅行動画に合いそうだな」と思ったり、ドラマのサウンドトラックを聞いて、「このアレンジを参考にしてみよう」と考えたり。音楽と映像の関係性について、以前よりもずっと深く考えるようになった。

周りの人との関わりも増えた。動画を作っていることを知った友人たちから、いろいろな相談や依頼が来るようになった。「子供の運動会の映像をまとめてほしい」「結婚記念日に夫へのサプライズ動画を作りたい」「ペットの思い出動画を作りたい」。一つ一つの依頼に応えることで、誰かの大切な思い出づくりに関われることが嬉しかった。

自分の中に、新しい表現手段ができたことも大きな変化だった。以前は言葉で伝えることが苦手で、感謝の気持ちや大切に思っている気持ちをうまく表現できないことが多かった。でも、動画という形なら、自分の想いを伝えられる気がした。母の日に感謝の映像を作ったとき、面と向かっては恥ずかしくて言えない言葉も、映像という形なら素直に表現できた。母は何度も繰り返し見てくれて、「こんなに嬉しいプレゼントはない」と言ってくれた。

技術的にも確実に成長していることを実感できた。最初は一本の動画を作るのに何時間もかかっていたけれど、今では効率よく編集できるようになった。どの機能をどう使えば自分のイメージに近づけられるか、経験を重ねることで直感的にわかるようになってきた。新しいテクニックも、オンラインのチュートリアル動画などを見ながら少しずつ習得している。

最近では、単に編集技術だけでなく、ストーリーテリングの重要性も理解できるようになってきた。どんなにきれいな映像でも、どんなに高度な編集技術を使っても、そこに伝えたいメッセージや感情がなければ、見る人の心には響かない。逆に、シンプルな編集でも、ストーリーがしっかりしていれば人を感動させられる。これは動画編集に限らず、人生のいろいろな場面で応用できる考え方だと思った。

まとめ

友人の結婚式映像作りから始まった動画編集の旅は、予想もしなかった方向に私の日常を変えていった。最初は「無料のアプリでどこまでできるんだろう」という半信半疑な気持ちだったけれど、実際に使い込んでみると、その可能性の広さに驚かされ続けた。機能の豊富さに最初は戸惑ったものの、一つ一つ丁寧に向き合うことで、自分なりの使い方が見えてきた。

動画編集を通して気づいたのは、大切なのは高価な機材や難しいソフトではなく、何を伝えたいかという想いと、それを形にしようとする工夫だということ。スマホ一つあれば、誰かを感動させる映像は作れる。技術的な完璧さよりも、そこに込められた気持ちのほうが、見る人の心に届く。

今では、何か特別な出来事があるたびに「これを映像に残したい」と自然に考えるようになった。旅行や誕生日といったイベントだけでなく、何気ない日常の一コマも、後から振り返ったときに大切な思い出になる。そういった瞬間を映像として残せることは、人生を豊かにしてくれる素敵なツールだと思う。

動画編集は、思っていたよりずっと奥が深くて、でも思っていたよりずっと身近なものだった。専門的な知識がなくても、少しずつ学びながら楽しめる。失敗しても何度でもやり直せるし、試行錯誤すること自体が面白い。これからも、日常の中で心に残った瞬間を映像に残していきたいし、大切な人たちの記念日には、想いを込めた映像を贈っていきたい。

気づけば、動画編集は私の生活の一部になっていた。毎週末、何かしら編集作業をしている自分がいる。それは義務ではなく、純粋に楽しいからやっている。新しい表現方法を見つける喜び、誰かに喜んでもらえる嬉しさ、自分の成長を実感できる達成感。動画編集は、そのすべてを与えてくれた。あの日、結婚式の映像制作を引き受けて本当によかったと、心から思っている。