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- 日本の仕組み・社会構造
日本のインフラは、世界的に見ても安定していると言われます。
では、それはなぜなのでしょうか。
特別な技術があるから?
それとも、予算が潤沢だから?
実は、その答えは
「考え方」や「前提」にあります。
動画では触れきれなかった背景や理由を、
あとから読み返せる形で整理してみました。
https://youtu.be/NxX7PO-bTgA
「あの橋、昭和に作られたんだって」なんて話、よく聞きませんか?日本中の道路や橋、トンネルって、実は半分以上が高度経済成長期に作られたものなんです。人間でいえば60歳、70歳の高齢者みたいなもの。でも不思議なことに、毎日車が通っても崩れ落ちることはほとんどない。 海外のニュースを見ると、橋が突然崩落したとか、高速道路が陥没したとか、けっこう衝撃的な映像が流れてきますよね。それに比べて日本は...あれ?そういえばあんまり聞かない。 これ、決して日本のインフラが丈夫だから、とか、まだ新しいから、っていう理由じゃないんです。実際には「もうヤバいかも」っていう施設、山ほどあるんですよ。
日本の作り方が異常に真面目だった
「とりあえず100年もつように」という発想
戦後の日本って、とにかく「もう二度と壊れないように」って考えで作ってたんです。空襲で焼け野原になった経験があるから、「次は絶対に長持ちするものを」っていう気持ちが強かった。 例えば橋を作るとき、普通は「50年もてばいいか」って計算するところを、日本の技術者たちは「いや、100年もたせよう」って考えたんですね。材料をケチらない、手抜きしない。まるでお母さんが子どものお弁当を作るときみたいに、「これでもか」ってくらい丁寧に作った。
コンクリートの質が違った
当時使われていたコンクリート、実は今より質が良かったりするんです。「え、技術は進化してるんじゃないの?」って思いますよね。確かに技術は進化してるんですけど、昔は時間とコストをかけられたんです。 コンクリートって、実は「ゆっくり固めた方が強い」んですよ。今は工期が短いから、早く固まる材料を使うんですけど、昔は「1週間かけてじっくり固めよう」みたいなことができた。料理でいえば、圧力鍋で作った煮物と、一晩かけて煮込んだ煮物の違い、みたいな感じです。
見えないところで必死に支えている人たち
夜中にこっそり点検してる
高速道路って、夜中に通行止めになってることありますよね。あれ、工事だけじゃなくて点検もやってるんです。それも週に何回も。 橋の下に潜って、懐中電灯片手にひび割れをチェックする。トンネルの天井を見上げて、コンクリートの剥がれを探す。こういう地味な作業を、雨の日も風の日も、真冬の凍える夜も続けてる人たちがいるんです。 私たちが寝てる間に、インフラを守ってくれてる人がいる。これ、知ってる人って意外と少ないんじゃないでしょうか。
「予防保全」という考え方
日本のインフラ管理って、「壊れてから直す」じゃなくて「壊れる前に直す」なんです。これを「予防保全」っていいます。 例えば車検みたいなもの。「エンジンが壊れたら修理しよう」じゃなくて、「壊れる前に部品を交換しておこう」っていう発想ですね。 橋でいえば、小さなひび割れを見つけた段階で補修する。「まだ大丈夫でしょ」って放置しないんです。この「まだ大丈夫」を許さない文化が、日本のインフラを支えてるんですよ。
データで管理する時代に
全部の橋にカルテがある
今、日本中の橋には「健康診断書」みたいなものがあるんです。いつ作られて、どんな材料で、どこにひびが入ってて、いつ補修したか。全部記録されてる。 人間でいえば、病院で「あなたは5年前に盲腸の手術をしましたね」って言われるような感じ。橋も「この橋は15年前に塗装を直して、3年前に床板を交換しました」って全部わかるようになってるんです。
AIとドローンが活躍
最近は技術も進化してて、ドローンが橋の点検をしたり、AIがひび割れの写真を見て「これは危険度高いです」って判断したりするようになってきました。 人間だけだと見落としがあるかもしれないけど、機械は疲れないし、見落とさない。でも最終的な判断は人間がする。この組み合わせがいいんですよね。
お金がないのにどうやって保っているのか
優先順位をつけまくる
正直な話、全部のインフラを完璧に保つお金なんてないんです。だから「どれから直すか」を決めるのがめちゃくちゃ重要。 例えば、1日に1万台通る橋と、1日に100台しか通らない橋だったら、どっちを優先すべきか。簡単ですよね。でも実際はもっと複雑で、「この橋が落ちたら迂回路がない」とか「この道路は救急車が通る」とか、いろんな要素を考えて決めてるんです。
「延命措置」という技術
新しく作り直すお金がないなら、今あるものを長持ちさせるしかない。で、日本の技術者たちが編み出したのが「延命措置」です。 例えば橋の床だけ交換するとか、コンクリートの表面だけ保護するとか。全身手術じゃなくて、部分的な治療で寿命を延ばす。これが上手なんですよ、日本は。 炭素繊維のシートを巻くだけで強度が上がるとか、特殊な塗料を塗るだけで劣化が防げるとか。「そんなんで大丈夫なの?」って思うかもしれないけど、これが意外と効果的なんです。
日本人の「もったいない精神」
新しく作るより直す方が好き
海外だと「古くなったら壊して新しいの作ろう」って発想が多いんですけど、日本人は「直せるなら直そう」って考えるんですよね。 これ、お寺や神社を何百年も修理しながら保ってきた文化と同じです。伊勢神宮なんて、20年に一度建て替えてるけど、あれも「技術を継承する」「常に最高の状態を保つ」っていう発想じゃないですか。 インフラも同じで、「作った人の思いを受け継ぐ」みたいな気持ちがあるんです。ちょっと感傷的かもしれないけど、こういう精神が結果的にインフラを守ってる。 <h3>地域の人が見守ってる</h3> 田舎の方に行くと、地元の人が「あの橋、ちょっとおかしいよ」って役所に連絡してくれたりするんです。毎日見てるから、小さな変化に気づく。 これって、都会ではなかなかない感覚ですよね。でも日本全体で見ると、こういう「地域の目」がインフラを守ってる部分もあるんです。
実は危機的状況も増えている笹子トンネル事故を忘れてはいけない
2012年に起きた笹子トンネルの天井板崩落事故、覚えてますか?9人の方が亡くなった痛ましい事故です。 あれが「日本のインフラも絶対安全じゃない」って気づかせてくれた出来事でした。実際、あの事故の後、全国で緊急点検が行われて、「ヤバい」って判定された施設がたくさん見つかったんです。
2033年問題
あまり知られてないんですけど、2033年には建設後50年以上経つ橋が全体の63%になるって言われてるんです。トンネルは42%、水門は62%。 50年って、インフラの「定年」みたいなものなんですね。人間でいえば定年後も働き続けてる状態。無理が出てくるのは当然です。
海外と比べてみると
アメリカは崩壊寸前
アメリカのインフラって、実は日本よりヤバいんです。橋の4分の1が「構造的に問題あり」って判定されてる。でも予算がつかなくて、直せない。 なぜかというと、アメリカは「新しいものを作る」方にお金を使いたがるんですね。「古い橋を直す」より「新しい宇宙船を飛ばす」方がカッコいいじゃないですか。そういう文化の違いもある。
ドイツは計画的
ドイツは日本と似てて、計画的にインフラを管理してます。ただ、ドイツの場合は「作り直す」ことに抵抗がない。「50年経ったら新しく作り直す」って最初から決めてるんです。 日本は「100年もたせる」って考えだから、アプローチが違う。どっちがいいかは一概に言えないけど、それぞれの国の文化が出てて面白いですよね。
技術者不足という新たな問題
団塊世代の引退
インフラを支えてきたベテラン技術者たちが、今どんどん引退してるんです。で、若い人が入ってこない。 なぜかって、地味だし、給料もそんなに高くないし、夜中に働くこともあるし。でも誰かがやらないと、日本のインフラは本当に崩壊しちゃう。
技術の継承が課題
「この橋はここが弱点なんだよ」とか「この音がしたら危ないんだ」とか、そういう経験に基づく知識って、マニュアルには書けないんですよね。 ベテランの技術者が「なんか変だな」って感じる直感。これを若い世代にどう伝えるか。今、すごく重要な課題になってます。
未来のインフラはどうなる?
スマートインフラの時代
これからは、橋やトンネル自体が「調子悪いです」って教えてくれる時代になるかもしれません。センサーを埋め込んで、リアルタイムで状態を監視する。 スマートウォッチが心拍数を測るみたいに、橋が自分の健康状態を報告してくれる。そうなれば、事故が起きる前に対処できますよね。
新素材の登場
最近は、コンクリートより軽くて強い素材とか、自己修復するコンクリートとか、SF みたいな技術が実用化されてきてるんです。 ひび割れが入ったら自分で治るコンクリート。これ、本当に開発されてるんですよ。バクテリアを混ぜておいて、ひびが入ると水が入り込んで、バクテリアが目を覚まして石灰を作って穴を埋める。生きてるコンクリートみたいな感じ。
私たちにできること
「当たり前」に感謝する
毎日通る道路、渡る橋。これが「当たり前」にあることって、実は奇跡みたいなものなんです。誰かが必死に守ってくれてるから。 たまには「ありがとう」って思いながら橋を渡ってみるのもいいかもしれません。ちょっと恥ずかしいかもしれないけど。
異変に気づいたら連絡する
道路に大きな穴が開いてるとか、橋の手すりが錆びてボロボロとか、明らかにおかしいものを見つけたら、役所に連絡してみてください。 「こんなことで連絡していいのかな」って思うかもしれないけど、大丈夫。むしろ感謝されます。小さな異変が大事故を防ぐこともあるんです。
今回の話は、日本社会全体の構造ともつながっています。
より大きな視点では、
【なぜ日本のインフラ設計は壊れない前提なのか】で詳しく解説しています。
まとめ:見えない努力が支えている
日本のインフラが老朽化しても崩壊しないのは、決して偶然じゃありません。最初に真面目に作った人たちがいて、毎日点検してる人たちがいて、限られた予算で優先順位をつけて直してる人たちがいて、新しい技術を開発してる人たちがいる。そういう見えない努力の積み重ねなんです。 でも正直、もう限界に近づいてるのも事実。これから私たちの世代が、次の世代に何を残せるか。インフラって、単なるコンクリートの塊じゃなくて、世代を超えた「思いやり」なのかもしれませんね。 今日も安全に家に帰れること。それが当たり前じゃないって、ちょっとだけ意識してみると、見える景色が変わってくるかもしれません。


