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日本のインフラについて
海外に行ったり、普段のニュースを見ていて、
ふと「日本では当たり前だけど、これって普通なのかな?」と
感じたことはありませんか。
海外から日本を見たとき、
必ず話題に上がるものがあります。
それが、日本のインフラです。
見た目は決して新しくないのに、大きな問題が起きにくい。
なぜ、日本だけがこの状態を保てているのでしょうか。
動画では触れきれなかった背景や理由を、
あとから読み返せる形で整理してみました。
https://youtu.be/icWsWbYlIGU
日本に住んでいると、電車が時刻表通りに来るのも、水道から綺麗な水が出るのも、停電がほとんど起きないのも「当たり前」に感じますよね。でも、海外旅行に行った友人から「電車が2時間遅れた」「水道水が飲めない」なんて話を聞いて、改めて日本のインフラってすごいんだなって思った経験、ありませんか。
実は、この「当たり前」の裏側には、日本独特の設計思想が隠れているんです。それが「壊れない前提」のインフラ設計。今回は、なぜ日本がこんな考え方でインフラを作ってきたのか、そしてそれが今、どんな問題を生んでいるのか、ちょっと深掘りしてみたいと思います。
日本と海外、インフラの考え方はこんなに違う
日本は「壊れないように作る」文化
日本のインフラって、とにかく最初から完璧を目指すんですよ。橋を作るときも、道路を作るときも、「これは100年持つように」「絶対に壊れないように」って設計する。まるで一生モノの革靴を買うような感覚です。
例えば、東京の水道管。実は100年以上前に敷設されたものが、今でも現役で使われていたりします。当時の技術者たちが「未来の東京のために」と丁寧に作ったものが、令和の時代まで生き残っているんです。すごいですよね。
海外は「壊れたら直す」が基本
一方、欧米のインフラは「壊れることもある」前提で設計されています。これ、手抜きってわけじゃないんです。むしろ合理的な考え方なんですよね。
アメリカの友人が教えてくれたんですが、向こうでは「インフラは消耗品」という感覚があるそうです。壊れたらすぐ直せるように、部品の規格を統一したり、修理しやすい構造にしたり。車のタイヤみたいに、定期的に交換するものだと考えているんです。
ニューヨークの地下鉄なんて、週末になると「工事のため運休」が当たり前。日本人からすると「え、週末に止めちゃうの?」って驚きますが、現地の人は「メンテナンスの時間だね」と普通に受け入れています。
なぜ日本は「壊れない前提」になったのか
地震大国という宿命
日本がこんな考え方になった理由、実は地震と深い関係があります。地震が多い国だからこそ、「壊れたら直す」じゃ間に合わないんですよね。
関東大震災や阪神・淡路大震災を経験して、日本の技術者たちは「壊れない」ことの重要性を痛感しました。地震で橋が落ちたら、救助も物資の輸送もできない。水道管が壊れたら、消火活動もできない。だから、「とにかく壊れないように」という思想が根付いていったんです。
完璧主義な国民性
もう一つ、日本人の性格も関係しています。私たち、失敗を極端に嫌う文化がありますよね。「電車が5分遅れただけでニュースになる」なんて、海外の人からすると信じられないらしいです。
この完璧主義が、インフラ設計にも反映されている。「99%の安全性」じゃなくて「99.9999%の安全性」を目指す。そのために、何重にも安全装置を付けて、想定外の想定外まで考えて設計する。
実際、東京電力の送電網なんて、驚くほど複雑に張り巡らされています。一箇所が故障しても、別のルートから電気が送れるように。まるで蜘蛛の巣みたいに、何重にもバックアップが用意されているんです。
高度経済成長期の「作りまくり時代」
1960年代から70年代、日本は猛スピードでインフラを整備しました。オリンピックに向けて高速道路を作り、新幹線を走らせ、橋をかけまくった時代です。
この時期、予算も人手も潤沢にあったので、「最高品質のものを作ろう」という気概があったんですよね。職人気質の技術者たちが、「自分の作ったものは絶対に壊れない」というプライドを持って仕事をしていた。
当時の設計図を見ると、今では考えられないくらい丁寧な計算がされています。コンピューターもない時代に、手計算で何度も何度も検証して。そうやって作られたインフラが、今でも日本中で活躍しているんです。
「壊れない前提」の光と影
メリット:世界一の信頼性
日本のインフラの信頼性は、数字で見ても圧倒的です。停電時間を比較すると、日本は年間平均で約10分。アメリカは約5時間、イギリスは約1時間。桁が違うんですよ。
水道の漏水率も驚異的です。東京都の漏水率は約3%。パリは約20%、ロンドンは約25%。つまり、海外では水道管に流した水の4分の1が、地面に漏れちゃってるってこと。日本の技術、本当にすごいですよね。
鉄道の定時運行率も世界トップクラス。新幹線なんて、年間平均遅延時間が約1分。これ、台風や地震の影響も含めての数字ですからね。海外の鉄道会社からすると、魔法みたいな数字らしいです。
デメリット:メンテナンスの概念が薄い
でも、この「壊れない前提」には大きな落とし穴があります。それは、メンテナンスの文化が育たなかったこと。
「壊れないはず」だから、点検や修理の予算が後回しにされがち。新しいものを作るのは得意だけど、古いものを維持するのは苦手。まるで、新車を買うのは好きだけど、オイル交換をサボっちゃう人みたいな感じです。
実際、日本中の橋やトンネルの約40%が、建設から50年以上経っています。2030年代には、その割合が60%を超えるとも言われています。「壊れないはず」のインフラが、実は寿命を迎えつつあるんです。
コストが高すぎる問題
「壊れない」ものを作るには、当然お金がかかります。日本の公共事業費は、欧米と比べて2倍から3倍とも言われています。
例えば、道路工事。日本では「絶対に陥没しないように」と、地盤改良から始めて、何層にも舗装を重ねます。でも海外では、もっとシンプルな構造で、壊れたら直せばいいという発想。どちらが正しいってわけじゃないけど、コストは全然違ってきます。
転換期を迎えた日本のインフラ
「壊れない」から「壊れる前に直す」へ
最近、日本のインフラ管理の考え方が変わってきています。それが「予防保全」という考え方。
これまでは「壊れたら直す」事後保全が中心でした。いや、正確には「壊れないから何もしない」だったかもしれません。でも、それじゃもう限界。だから「壊れる前に直す」予防保全に切り替えようとしているんです。
人間の健康診断みたいなものですね。病気になってから病院に行くんじゃなくて、定期的に検査して、悪いところが見つかったら早めに治療する。そっちの方が、結果的に医療費も安く済むし、健康寿命も延びる。
テクノロジーが変える点検作業
面白いのは、最新テクノロジーの活用です。ドローンで橋を点検したり、AIで道路のひび割れを自動検出したり。人間が目視でチェックしていた作業が、どんどん効率化されています。
国土交通省が進めている「インフラメンテナンス国民会議」なんて取り組みもあります。専門家だけじゃなくて、地域住民も一緒にインフラを見守ろうという試み。散歩中に道路の異常を見つけたら、スマホアプリで報告できるシステムとか。
これって、インフラに対する考え方の大転換なんですよね。「壊れないから放っておく」じゃなくて、「みんなで見守って、長持ちさせる」という発想。
「直しやすい」設計への転換
新しく作るインフラには、「メンテナンスしやすさ」が重視されるようになってきました。
例えば、最近の橋は、主要な部品を交換しやすい構造になっています。まるでレゴブロックみたいに、傷んだパーツだけを取り替えられる設計。これなら、橋全体を架け替える必要がなくて、コストも時間も大幅に削減できます。
水道管も、耐震性と同時に「修理のしやすさ」が設計に組み込まれています。地震で壊れにくいのは当然として、万が一壊れても、すぐに復旧できるように。
海外から学ぶインフラ管理
イギリスの「アセットマネジメント」
イギリスでは、インフラを「資産(アセット)」として管理する考え方が進んでいます。株式投資みたいに、どのインフラにどれだけ投資すれば、一番リターンが大きいかを計算するんです。
「この橋は交通量が多いから優先的に補修」「この道路は利用者が少ないから後回し」みたいに、データに基づいて優先順位をつける。感情や政治的判断じゃなくて、数字で決める。すごく合理的ですよね。
アメリカの「民間活力の導入」
アメリカでは、インフラの運営に民間企業を積極的に活用しています。高速道路を民間会社が運営したり、水道事業を民営化したり。
賛否両論ある方法ですが、一つのメリットは「サービスの向上」。民間企業だから、利用者の満足度を上げないと商売にならない。だから、効率的な運営や新しいサービスの開発に積極的なんです。
日本でも、空港の民営化とか、少しずつ取り入れられていますよね。成田空港や関西空港なんかは、民間の知恵を借りて、サービスがどんどん良くなっています。
私たちにできること
インフラは「タダ」じゃない
当たり前すぎて意識しないけど、インフラって誰かが作って、誰かが維持してくれているものなんですよね。それには莫大なお金がかかっている。
水道料金や高速道路の料金に文句を言いたくなる気持ち、わかります。でも、その料金がなければ、インフラは維持できない。「高い」と感じるかもしれないけど、実は世界的に見れば、日本の料金は決して高くないんです。
むしろ、これまでが安すぎたのかもしれません。「壊れない」前提で作られたインフラが、メンテナンス費用を考えずに運営されてきた。そのツケが、今、回ってきているんです。
「気づいたら報告」の文化を
道路のひび割れ、橋の錆び、信号機の不具合。日常生活の中で、インフラの異常に気づくことってありますよね。
それを「誰かが気づくだろう」じゃなくて、自分から報告する。多くの自治体が、インフラの異常を報告できる窓口やアプリを用意しています。使ったことありますか?
小さな異常を早く見つけることが、大きな事故を防ぐことにつながります。みんなでインフラを見守る。それが、これからの時代に必要な意識なのかもしれません。
次の世代に何を残すか
高度経済成長期に作られたインフラは、私たちの親世代、祖父母世代が、未来の日本のために残してくれた財産です。その恩恵を、私たちは当たり前のように受けています。
でも、そのインフラが寿命を迎えつつある今、私たちの世代が考えなきゃいけないのは、次の世代に何を残すかってこと。
「壊れない」インフラを作り続けるのか。それとも、「壊れても大丈夫」なシステムを作るのか。あるいは、その中間の道を探るのか。正解はないけど、考えることをやめちゃいけない問題です。
人口が減って、税収も減っていく日本。これまでと同じやり方では、もう立ち行かなくなっています。だからこそ、発想の転換が必要なんです。
「壊れない前提」は、日本の技術力の高さの証明でもあります。でも、それに固執しすぎると、かえって危険かもしれない。柔軟に、賢く、次の時代のインフラのあり方を考えていく。それが、今の私たちに求められていることなんじゃないでしょうか。
この背景については、
「なぜ日本のインフラは老朽化しても崩壊しないのか」
で詳しく解説しています。
まとめ
日本のインフラが「壊れない前提」で設計されてきたのは、地震大国という環境、完璧主義な国民性、そして高度経済成長期の豊かさが生んだ文化でした。その結果、世界トップクラスの信頼性を実現できた一方で、メンテナンスの文化が育たず、高コスト体質になってしまった面もあります。今、その転換期を迎えている日本のインフラ。「壊れないように作る」だけじゃなく、「壊れる前に直す」「直しやすく作る」という新しい発想が求められています。インフラは誰かが勝手に維持してくれるものじゃなく、社会全体で支えていくもの。そんな意識を持つことが、次の世代に良いインフラを残す第一歩になるのかもしれませんね。


