サブスク管理アプリで気づいた"払ってるのに使ってないモノ"たち

触れたきっかけと思ったこと

給料日前のある夜、通帳記帳をしながら愕然とした。毎月確実に減っていく口座残高を見つめながら、「あれ、私そんなにお金使ってたっけ?」という疑問が頭をもたげた。確かに外食も多少はするし、欲しいものを買うこともある。でも、それにしてもこの減り方は尋常じゃない気がした。

家計簿アプリを開いてみると、食費や交際費はそこまで異常な額じゃない。じゃあ何だろう。そこでふと目に入ったのが、毎月決まった日に引き落とされている小さな額の支出たちだった。Netflix、Spotify、Apple One、Amazonプライム、それに何かの動画配信サービス。あとクラウドストレージとか、英語学習アプリとか。一つ一つは千円とか数百円の世界なんだけど、これが積み重なると結構な額になっていた。

「まあでも、全部使ってるし...」そう自分に言い聞かせようとしたけど、心のどこかで引っかかるものがあった。本当に使ってる?Netflixっていつ最後に開いたっけ?英語学習アプリなんて、確か正月に「今年こそ英語やるぞ!」って意気込んで契約したやつだけど、その後ちゃんと開いたことあったかな?

そんなモヤモヤを抱えながらSNSを眺めていたら、友人が「サブスク管理アプリで整理したら月5000円も浮いた!」みたいな投稿をしているのを見つけた。サブスク管理アプリ?そんなものがあるのか。正直、「アプリでアプリを管理する」というメタ的な状況に少し笑いそうになったけど、背に腹は代えられない。私もこのままじゃマズいという危機感があった。だって、このペースで無駄な支出を続けていたら、貯金なんて夢のまた夢だ。

その日のうちに、いくつかサブスク管理アプリを調べてダウンロードした。レビューを読みながら、「同じような悩みを持ってる人ってこんなにいるんだな」と少し安心したりもした。私だけじゃないんだ、という変な連帯感。そして期待半分、不安半分で、自分のサブスクリプション整理の旅が始まった。

最初に戸惑った体験

アプリを開いて最初にやることは、自分が契約しているサブスクを全部登録することだった。「簡単でしょ」と思っていたけど、これが想像以上に大変だった。まず、自分が何に契約しているのかを正確に把握できていないことに気づいた。

クレジットカードの明細を三ヶ月分くらい遡りながら、定期的に引き落とされているものを探していく作業。これがもう、宝探しというか、恥探しというか。出てくる出てくる、自分でも忘れていた契約の数々。「あ、これ契約してたんだ...」と何度呟いたことか。

特に困ったのが、英語表記の謎の引き落としだった。「ADOBE CREATIVE」とか「CANVA PRO」とか、見覚えはあるんだけど、いつ契約したのか、何に使うつもりだったのかすら思い出せない。Adobeなんて、確か去年の夏に友達が「写真編集に便利だよ」って言ってて、勢いで契約した気がする。でもそれっきり一度も開いてない。月額2,980円を、もう半年以上払い続けていた計算になる。

さらに戸惑ったのが、一つのサービスなのに複数の課金ポイントがあるパターンだった。スマホゲームのアイテム課金とか、動画配信サービスのチャンネル追加とか。「これもサブスクに入るの?」と混乱しながら、とりあえず月額で発生しているものは全部リストに入れていった。

登録作業だけで二時間くらいかかっただろうか。完成したリストを眺めて、文字通り呆然とした。サービス数、全部で19個。月額合計金額、23,450円。年間にすると約28万円。これを見た瞬間、本気で心臓が止まるかと思った。

「嘘でしょ...」思わず声に出していた。毎月2万円以上、サブスクだけで払っていたなんて。これは家賃の次に大きな固定費じゃないか。いや、私の場合、光熱費より高い。何やってんだ私。

でも同時に、一つ一つを見ると「これは必要」「これも使ってる」と思えてしまうのが不思議だった。Netflixは週末に見るし、Spotifyは通勤中に聴いてる。Amazonプライムなんて、配送料無料だけで元が取れてる気がする。じゃあ何が問題なんだろう?

アプリには各サブスクの「最後に利用した日」を記録する機能があった。これを正直に入力していく作業が、また辛かった。Netflixは「3日前」。うん、これは使ってる。Spotifyも「今日」。問題ない。でも、英語学習アプリは...「90日以上前」。ヨガのオンラインレッスンも「60日以上前」。クラウドストレージに至っては、いつ最後にファイルをアップロードしたかも思い出せない。

この「最後に利用した日」という数字が、容赦なく現実を突きつけてきた。お金を払い続けているのに、全く使っていないサービスが、少なくとも5つはあった。

試行錯誤しながら気づいたこと

リストを作っただけでは何も変わらない。そこから、どれを解約してどれを残すかを決める作業が始まった。これが思いのほか難航した。

最初は単純に「使ってないものは全部解約すればいいじゃん」と思っていた。でも実際にやろうとすると、不思議な抵抗感が湧いてくる。「いや、でもこれは来月使うかもしれない」「せっかく契約したのにもったいない」「解約したら、また契約するとき面倒くさい」。そんな言い訳が次々と浮かんでくる。

特に困ったのが、「年間契約」になっているものだった。動画配信サービスのひとつは、年間契約にすると月額換算で500円安くなるという謳い文句に釣られて、一年分を一括で払っていた。もう半年分使っちゃってるから、今さら解約しても返金はない。「だったら残り半年は使い倒した方がいいよね」と思いつつ、結局使わないままさらに月日が過ぎていく。

試しに、一週間だけ「意識的にすべてのサブスクを使ってみる」という実験をしてみた。月曜日はNetflix、火曜日は英語アプリ、水曜日はヨガレッスン...という具合に。これが予想以上にしんどかった。仕事から帰ってきて、夕飯作って食べて、お風呂入って、さあ英語の勉強しようと思っても、正直疲れててそんな気力はない。結局スマホでSNS見て終わり、みたいな夜が続いた。

この実験で気づいたことがあった。私は「契約すること」と「使うこと」を混同していたんだ。英語学習アプリを契約した時点で、なんとなく「英語の勉強してる感」を得ていた。ヨガのオンラインレッスンも、契約しただけで健康的になった気がしていた。でも実際には、一度も開いてないんだから、何も変わってないのに。

もう一つ気づいたのは、サブスクには「攻めのサブスク」と「守りのサブスク」があるということだった。Netflixとか音楽配信サービスは攻めのサブスク。これは積極的に楽しむためのもの。一方、クラウドストレージとかセキュリティソフトは守りのサブスク。何かあったときのための保険みたいなもの。

問題は、私の場合、守りのサブスクが多すぎた。「念のため」で契約してるものが多すぎて、結果的に何も守れていない。クラウドストレージなんて、無料プランでも十分だったのに、「いつか容量足りなくなるかも」という漠然とした不安で有料プランにしていた。実際の使用容量を確認したら、有料プランの10%も使ってなかった。

さらに試行錯誤してみて分かったのは、複数のサービスで機能が重複しているケースが多いということだった。Apple OneにはApple Musicが含まれているのに、Spotifyも契約している。Amazonプライムで見られる映画があるのに、Netflixも、他の動画配信サービスも契約している。よくよく調べてみたら、私が見たい映画の8割は、Amazonプライムで見られることが分かった。

こうして一ヶ月くらいかけて、自分のサブスク利用実態を徹底的に分析してみた。エクセルに表を作って、各サービスの利用頻度、重複度、本当に必要か、を評価していった。完全に理系の実験レポートみたいになっていたけど、この作業は意外と楽しかった。自分の生活を客観的に見られる感じがして。

自分なりに工夫したポイント

分析結果を元に、いよいよ実際に整理する段階に入った。ただ闇雲に解約するのではなく、自分なりにルールを決めることにした。

まず設けたのが「三ヶ月ルール」。三ヶ月間一度も使わなかったサブスクは、問答無用で解約する。「いつか使うかも」は禁句。このルールで、英語学習アプリ、ヨガレッスン、クラウドストレージの有料プラン、よく分からない写真編集ソフトなど、合計6つのサービスを解約した。この時点で月額7,000円の節約。

次に考えたのが「統合できないか」というポイント。重複している機能があるなら、一つにまとめる。音楽はApple Musicに統一してSpotifyは解約。動画配信はAmazonプライムとNetflixだけ残して、他は全部解約。これでさらに月額3,000円の節約。

でも、ただ解約するだけじゃなくて、「本当に必要なものには適切にお金をかける」というスタンスも大事にした。例えば、Netflixは家族アカウントでシェアできるプランに変更。月額が少し上がったけど、実家の両親も使えるようになったから、実質的にはコスパが上がった。母親が最近韓国ドラマにハマってるらしく、「契約してくれてありがとう」とLINEが来たときは嬉しかった。

もう一つ工夫したのが、「季節限定契約」という考え方。例えば、スポーツ配信サービス。私はサッカーが好きで、シーズン中は週末に試合を見たい。でも、オフシーズンは全く見ない。だったら、シーズン中だけ契約して、オフシーズンは解約すればいい。年間で考えると、これだけで5,000円以上節約できる。

解約する際に意外と手間取ったのが、解約方法が分かりにくいサービスだった。あるサービスなんて、アプリ内からは解約できなくて、ウェブサイトにログインして、さらに「よくある質問」のページから特定のリンクを踏まないと解約ページに辿り着けない、という仕様になっていた。明らかに解約させたくない設計で、「これって法律的にどうなの?」と思いながらも、諦めずに解約した。

解約するときに必ず確認したのが、「解約時期」。多くのサブスクは、更新日の前日までに解約しないと、さらに一ヶ月分課金されてしまう。サブスク管理アプリの「更新日通知機能」を活用して、各サービスの更新日の一週間前にアラームが鳴るように設定した。

また、完全に解約するのではなく、「一時停止」ができるサービスは一時停止にした。ヨガのオンラインレッスンがこのパターン。冬は寒くてヨガやる気が起きないけど、春になったらまたやりたくなるかもしれない。だから、冬の間は一時停止して、春になったら再開するかどうか考える。この「逃げ道を残しておく」という戦略が、精神的な負担を減らしてくれた。

整理していく中で、「無料トライアル期間が終わって自動的に課金されていた」というパターンもいくつか発見した。あるアプリなんて、一年前に無料トライアルで試して、そのまま忘れて放置していたら、ずっと月額課金されていた。完全に私の管理ミスだけど、こういうのって結構あるあるなんじゃないかと思う。サブスク管理アプリの「無料トライアル終了アラート」機能は、これから新しいサービスを試すときに絶対使おうと決めた。

日常や生活でどう変わったか

サブスクを整理してから、最初の給料日を迎えたときのことは今でも覚えている。通帳を記帳して、残高を見て、「あれ?」と思った。いつもより明らかに多い。計算してみたら、整理前と比べて約1万円多く残っていた。たった一ヶ月でこの差。年間にしたら12万円。これって、旅行一回分じゃないか。

この実感が、想像以上に大きかった。頭では分かっていたけど、実際に数字として目に見える形で表れると、「ああ、本当に変わったんだ」という実感が湧いてくる。その日はちょっといいレストランでディナーを食べて、自分へのご褒美にした。罪悪感なく使えるお金があるって、こんなに気持ちいいんだと思った。

生活面での変化も大きかった。意外だったのは、サブスクの数が減ったことで、逆に残ったサービスをちゃんと使うようになったこと。以前は「あれもこれもある」状態で、結局どれも中途半端にしか使っていなかった。でも、「これとこれしかない」と分かると、その中から選んで使うようになる。

特にNetflixは、以前より明らかに視聴時間が増えた。「せっかく残したんだから見なきゃ」という義務感ではなく、純粋に「楽しみたいから見る」という感覚に変わった。週末に「今日は何見ようかな」と作品を選ぶ時間が、ちょっとした贅沢な時間になった。

音楽サービスも同じ。SpotifyとApple Musicの両方があった頃は、「あの曲どっちにあったっけ?」と探す手間があった。Apple Musicに統一してからは、プレイリストの整理もちゃんとやるようになったし、新しいアーティストを探すのも楽しくなった。

そして一番大きな変化は、新しいサブスクに対する態度だった。以前は、面白そうなサービスがあると、深く考えずに「とりあえず契約しちゃえ」という感じだった。でも今は、契約する前に必ず自問自答するようになった。「これは本当に必要?」「既に持ってるサービスで代用できない?」「無料版じゃダメなの?」

先日、友達が「このフィットネスアプリすごくいいよ!」と勧めてくれたとき、以前の私なら即座に契約していただろう。でも今回は、「まずは無料版で一週間試してみる」という選択をした。結果的に、三日坊主で終わって、有料版に移行せずに済んだ。無駄な出費を事前に防げた。

買い物の仕方も変わった気がする。以前は「月額だから安い」という感覚で、サブスクをポンポン契約していた。でも実際に年間で計算してみると、結構な額になる。この感覚が身についてから、普通の買い物でも「これって年間でいくらになる?」と考えるようになった。毎日コンビニで缶コーヒーを買うのをやめて、家で淹れるようにしたのも、この延長線上にある。年間で3万円以上の節約になる計算だ。

友達との会話も変わった。飲み会で「最近サブスク整理してさ」と話したら、みんな食いついてきた。「私も見直したい」「どうやったの?」と質問攻めにあって、自分の経験をシェアした。後日、何人かの友達から「おかげで月5,000円浮いた!」とお礼のメッセージが来て、なんだか嬉しかった。

続けてみて見えてきたこと

サブスクを整理してから半年が経った今、見えてきたことがいくつかある。

まず、サブスクの整理は一度やって終わりじゃないということ。三ヶ月に一度くらいのペースで、定期的に見直す必要がある。実際、整理後にまた新しいサービスを契約したものもあるし、使わなくなったものもある。サブスク管理アプリには「定期見直しアラート」を設定して、三ヶ月ごとに通知が来るようにしている。

それから、サブスクとの付き合い方には、人それぞれのスタイルがあるということ。私の場合は「厳選して深く使う」タイプに落ち着いたけど、友達の中には「広く浅く、いろんなサービスを試したい」というタイプもいる。どちらが正しいというわけじゃなくて、自分の価値観に合った使い方をすればいい。

興味深かったのは、「無料サービスの価値」を再認識したこと。YouTubeって、無料であれだけのコンテンツが見られるってすごいことだと思う。広告はあるけど、それを許容すれば、ほぼ無限のエンタメが手に入る。有料のサブスクばかりに気を取られていた頃は、この当たり前の事実を忘れていた。

また、「シェアリング」の重要性も感じた。Netflixを家族とシェアしたように、友達と「このサブスク一緒に使わない?」という話ができるものもある。もちろん、規約違反にならない範囲で、だけど。一人で全部契約するより、賢い使い方だと思う。

半年続けてみて、貯金も少しずつ増えてきた。月に浮いた1万円を、毎月自動的に別口座に振り込む設定にした。半年で6万円。一年で12万円。三年で36万円。この調子で続けたら、数年後には結構まとまった額になる。「塵も積もれば山となる」とはよく言ったものだ。

でも、ただお金を節約することが目的じゃないことにも気づいた。本当に大事なのは、「自分が何にお金を使っているか」を把握すること。そして、「本当に価値があると思うものにお金を使う」こと。サブスクの整理を通じて、この感覚が身についた気がする。

最近、ちょっと高級な料理教室のサブスクを契約した。月額5,000円と、決して安くはない。でも、これは「自分にとって本当に価値がある」と確信できたから契約した。実際に通ってみて、料理のスキルも上がったし、何より楽しい。これは無駄な出費じゃなくて、投資だと思っている。

サブスク整理前の私なら、「5,000円は高い」と躊躇していたかもしれない。でも今は、無駄な支出を削った分、本当に必要なものには適切にお金を使えるようになった。このメリハリが、生活の質を上げているんだと実感している。

もう一つ、続けていて気づいたのは、「デジタルデトックス」の効果。サブスクが多かった頃は、常に「あれも見なきゃ、これもやらなきゃ」という焦燥感があった。でも整理してからは、その焦りがなくなった。スマホを開く時間も自然と減って、読書をしたり、散歩をしたり、アナログな時間が増えた。

サブスク管理アプリのデータを見返すと、面白い発見がある。例えば、冬はNetflixの利用時間が増えて、夏は音楽サービスの利用が増える。自分の生活パターンが、数字で見えてくる。これを参考に、「夏は動画サービスを一時停止してもいいかな」とか、季節に応じた最適化もできるようになった。

まとめ

サブスク管理アプリを使い始めてから、もうすぐ一年になる。最初は単純に「お金がもったいない」という動機だったけど、今となっては、お金以上に大きなものを得られた気がしている。

それは、「自分の生活を主体的にデザインする」という感覚だ。以前は、なんとなく流されるままにサービスを契約して、なんとなく使わないまま放置して、なんとなくお金が減っていく。でも今は、自分で選んで、自分で決めて、自分の価値観に基づいて生活している、という実感がある。

サブスクって、便利な反面、知らず知らずのうちに生活を支配されてしまう危険性もあると思う。「あれもある、これもある」という状態が、実は何も豊かにしていないこともある。むしろ、本当に必要なものだけに絞り込むことで、それぞれのサービスをちゃんと楽しめるようになる。

もちろん、私のやり方が全ての人に合うわけじゃない。サブスクをたくさん契約して、それを全部使いこなせる人もいるだろう。でも、もし私と同じように「なんか無駄に払ってる気がする」と感じている人がいたら、一度サブスク管理アプリを試してみることをお勧めしたい。自分が何に、いくら払っているのかを「見える化」するだけでも、意識が変わると思う。

今、私の契約しているサブスクは8個。月額合計は12,000円。整理前の半分以下だ。でも、生活の質は確実に上がった。余裕を持って使えるお金があるし、本当に好きなサービスだけに囲まれている充実感がある。そして何より、「自分の生活をコントロールできている」という安心感がある。

先日、また新しい動画配信サービスのCMを見た。面白そうだな、と思った。以前なら即座に契約していただろう。でも今は、「本当に必要かな?」「今あるサービスで満足してるしな」と冷静に考えられる。そして、必要ないと判断したら、きっぱり諦められる。この変化が、私にとっての一番の収穫かもしれない。

サブスクとの付き合い方を見直すことは、結局、自分の生活と向き合うことだった。何に時間を使いたいのか、何を大切にしたいのか、どう生きていきたいのか。そういう根本的な問いに、向き合うきっかけをくれた。払ってるのに使ってないものたちは、ただの無駄遣いじゃなくて、私への問いかけだったのかもしれない。「本当にこれでいいの?」って。

今は胸を張って答えられる。「うん、これでいい」って。