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サブスク管理アプリで気づいた“払ってるのに使ってないモノ”たち

サブスク管理アプリで気づいた"払ってるのに使ってないモノ"たち

触れたきっかけと思ったこと

給料日前のある夜、通帳記帳をしながら愕然とした。毎月確実に減っていく口座残高を見つめながら、「あれ、私そんなにお金使ってたっけ?」という疑問が頭をもたげた。確かに外食も多少はするし、欲しいものを買うこともある。でも、それにしてもこの減り方は尋常じゃない気がした。

家計簿アプリを開いてみると、食費や交際費はそこまで異常な額じゃない。じゃあ何だろう。そこでふと目に入ったのが、毎月決まった日に引き落とされている小さな額の支出たちだった。Netflix、Spotify、Apple One、Amazonプライム、それに何かの動画配信サービス。あとクラウドストレージとか、英語学習アプリとか。一つ一つは千円とか数百円の世界なんだけど、これが積み重なると結構な額になっていた。

「まあでも、全部使ってるし...」そう自分に言い聞かせようとしたけど、心のどこかで引っかかるものがあった。本当に使ってる?Netflixっていつ最後に開いたっけ?英語学習アプリなんて、確か正月に「今年こそ英語やるぞ!」って意気込んで契約したやつだけど、その後ちゃんと開いたことあったかな?

そんなモヤモヤを抱えながらSNSを眺めていたら、友人が「サブスク管理アプリで整理したら月5000円も浮いた!」みたいな投稿をしているのを見つけた。サブスク管理アプリ?そんなものがあるのか。正直、「アプリでアプリを管理する」というメタ的な状況に少し笑いそうになったけど、背に腹は代えられない。私もこのままじゃマズいという危機感があった。だって、このペースで無駄な支出を続けていたら、貯金なんて夢のまた夢だ。

その日のうちに、いくつかサブスク管理アプリを調べてダウンロードした。レビューを読みながら、「同じような悩みを持ってる人ってこんなにいるんだな」と少し安心したりもした。私だけじゃないんだ、という変な連帯感。そして期待半分、不安半分で、自分のサブスクリプション整理の旅が始まった。

最初に戸惑った体験

アプリを開いて最初にやることは、自分が契約しているサブスクを全部登録することだった。「簡単でしょ」と思っていたけど、これが想像以上に大変だった。まず、自分が何に契約しているのかを正確に把握できていないことに気づいた。

クレジットカードの明細を三ヶ月分くらい遡りながら、定期的に引き落とされているものを探していく作業。これがもう、宝探しというか、恥探しというか。出てくる出てくる、自分でも忘れていた契約の数々。「あ、これ契約してたんだ...」と何度呟いたことか。

特に困ったのが、英語表記の謎の引き落としだった。「ADOBE CREATIVE」とか「CANVA PRO」とか、見覚えはあるんだけど、いつ契約したのか、何に使うつもりだったのかすら思い出せない。Adobeなんて、確か去年の夏に友達が「写真編集に便利だよ」って言ってて、勢いで契約した気がする。でもそれっきり一度も開いてない。月額2,980円を、もう半年以上払い続けていた計算になる。

さらに戸惑ったのが、一つのサービスなのに複数の課金ポイントがあるパターンだった。スマホゲームのアイテム課金とか、動画配信サービスのチャンネル追加とか。「これもサブスクに入るの?」と混乱しながら、とりあえず月額で発生しているものは全部リストに入れていった。

登録作業だけで二時間くらいかかっただろうか。完成したリストを眺めて、文字通り呆然とした。サービス数、全部で19個。月額合計金額、23,450円。年間にすると約28万円。これを見た瞬間、本気で心臓が止まるかと思った。

「嘘でしょ...」思わず声に出していた。毎月2万円以上、サブスクだけで払っていたなんて。これは家賃の次に大きな固定費じゃないか。いや、私の場合、光熱費より高い。何やってんだ私。

でも同時に、一つ一つを見ると「これは必要」「これも使ってる」と思えてしまうのが不思議だった。Netflixは週末に見るし、Spotifyは通勤中に聴いてる。Amazonプライムなんて、配送料無料だけで元が取れてる気がする。じゃあ何が問題なんだろう?

アプリには各サブスクの「最後に利用した日」を記録する機能があった。これを正直に入力していく作業が、また辛かった。Netflixは「3日前」。うん、これは使ってる。Spotifyも「今日」。問題ない。でも、英語学習アプリは...「90日以上前」。ヨガのオンラインレッスンも「60日以上前」。クラウドストレージに至っては、いつ最後にファイルをアップロードしたかも思い出せない。

この「最後に利用した日」という数字が、容赦なく現実を突きつけてきた。お金を払い続けているのに、全く使っていないサービスが、少なくとも5つはあった。

試行錯誤しながら気づいたこと

リストを作っただけでは何も変わらない。そこから、どれを解約してどれを残すかを決める作業が始まった。これが思いのほか難航した。

最初は単純に「使ってないものは全部解約すればいいじゃん」と思っていた。でも実際にやろうとすると、不思議な抵抗感が湧いてくる。「いや、でもこれは来月使うかもしれない」「せっかく契約したのにもったいない」「解約したら、また契約するとき面倒くさい」。そんな言い訳が次々と浮かんでくる。

特に困ったのが、「年間契約」になっているものだった。動画配信サービスのひとつは、年間契約にすると月額換算で500円安くなるという謳い文句に釣られて、一年分を一括で払っていた。もう半年分使っちゃってるから、今さら解約しても返金はない。「だったら残り半年は使い倒した方がいいよね」と思いつつ、結局使わないままさらに月日が過ぎていく。

試しに、一週間だけ「意識的にすべてのサブスクを使ってみる」という実験をしてみた。月曜日はNetflix、火曜日は英語アプリ、水曜日はヨガレッスン...という具合に。これが予想以上にしんどかった。仕事から帰ってきて、夕飯作って食べて、お風呂入って、さあ英語の勉強しようと思っても、正直疲れててそんな気力はない。結局スマホでSNS見て終わり、みたいな夜が続いた。

この実験で気づいたことがあった。私は「契約すること」と「使うこと」を混同していたんだ。英語学習アプリを契約した時点で、なんとなく「英語の勉強してる感」を得ていた。ヨガのオンラインレッスンも、契約しただけで健康的になった気がしていた。でも実際には、一度も開いてないんだから、何も変わってないのに。

もう一つ気づいたのは、サブスクには「攻めのサブスク」と「守りのサブスク」があるということだった。Netflixとか音楽配信サービスは攻めのサブスク。これは積極的に楽しむためのもの。一方、クラウドストレージとかセキュリティソフトは守りのサブスク。何かあったときのための保険みたいなもの。

問題は、私の場合、守りのサブスクが多すぎた。「念のため」で契約してるものが多すぎて、結果的に何も守れていない。クラウドストレージなんて、無料プランでも十分だったのに、「いつか容量足りなくなるかも」という漠然とした不安で有料プランにしていた。実際の使用容量を確認したら、有料プランの10%も使ってなかった。

さらに試行錯誤してみて分かったのは、複数のサービスで機能が重複しているケースが多いということだった。Apple OneにはApple Musicが含まれているのに、Spotifyも契約している。Amazonプライムで見られる映画があるのに、Netflixも、他の動画配信サービスも契約している。よくよく調べてみたら、私が見たい映画の8割は、Amazonプライムで見られることが分かった。

こうして一ヶ月くらいかけて、自分のサブスク利用実態を徹底的に分析してみた。エクセルに表を作って、各サービスの利用頻度、重複度、本当に必要か、を評価していった。完全に理系の実験レポートみたいになっていたけど、この作業は意外と楽しかった。自分の生活を客観的に見られる感じがして。

自分なりに工夫したポイント

分析結果を元に、いよいよ実際に整理する段階に入った。ただ闇雲に解約するのではなく、自分なりにルールを決めることにした。

まず設けたのが「三ヶ月ルール」。三ヶ月間一度も使わなかったサブスクは、問答無用で解約する。「いつか使うかも」は禁句。このルールで、英語学習アプリ、ヨガレッスン、クラウドストレージの有料プラン、よく分からない写真編集ソフトなど、合計6つのサービスを解約した。この時点で月額7,000円の節約。

次に考えたのが「統合できないか」というポイント。重複している機能があるなら、一つにまとめる。音楽はApple Musicに統一してSpotifyは解約。動画配信はAmazonプライムとNetflixだけ残して、他は全部解約。これでさらに月額3,000円の節約。

でも、ただ解約するだけじゃなくて、「本当に必要なものには適切にお金をかける」というスタンスも大事にした。例えば、Netflixは家族アカウントでシェアできるプランに変更。月額が少し上がったけど、実家の両親も使えるようになったから、実質的にはコスパが上がった。母親が最近韓国ドラマにハマってるらしく、「契約してくれてありがとう」とLINEが来たときは嬉しかった。

もう一つ工夫したのが、「季節限定契約」という考え方。例えば、スポーツ配信サービス。私はサッカーが好きで、シーズン中は週末に試合を見たい。でも、オフシーズンは全く見ない。だったら、シーズン中だけ契約して、オフシーズンは解約すればいい。年間で考えると、これだけで5,000円以上節約できる。

解約する際に意外と手間取ったのが、解約方法が分かりにくいサービスだった。あるサービスなんて、アプリ内からは解約できなくて、ウェブサイトにログインして、さらに「よくある質問」のページから特定のリンクを踏まないと解約ページに辿り着けない、という仕様になっていた。明らかに解約させたくない設計で、「これって法律的にどうなの?」と思いながらも、諦めずに解約した。

解約するときに必ず確認したのが、「解約時期」。多くのサブスクは、更新日の前日までに解約しないと、さらに一ヶ月分課金されてしまう。サブスク管理アプリの「更新日通知機能」を活用して、各サービスの更新日の一週間前にアラームが鳴るように設定した。

また、完全に解約するのではなく、「一時停止」ができるサービスは一時停止にした。ヨガのオンラインレッスンがこのパターン。冬は寒くてヨガやる気が起きないけど、春になったらまたやりたくなるかもしれない。だから、冬の間は一時停止して、春になったら再開するかどうか考える。この「逃げ道を残しておく」という戦略が、精神的な負担を減らしてくれた。

整理していく中で、「無料トライアル期間が終わって自動的に課金されていた」というパターンもいくつか発見した。あるアプリなんて、一年前に無料トライアルで試して、そのまま忘れて放置していたら、ずっと月額課金されていた。完全に私の管理ミスだけど、こういうのって結構あるあるなんじゃないかと思う。サブスク管理アプリの「無料トライアル終了アラート」機能は、これから新しいサービスを試すときに絶対使おうと決めた。

日常や生活でどう変わったか

サブスクを整理してから、最初の給料日を迎えたときのことは今でも覚えている。通帳を記帳して、残高を見て、「あれ?」と思った。いつもより明らかに多い。計算してみたら、整理前と比べて約1万円多く残っていた。たった一ヶ月でこの差。年間にしたら12万円。これって、旅行一回分じゃないか。

この実感が、想像以上に大きかった。頭では分かっていたけど、実際に数字として目に見える形で表れると、「ああ、本当に変わったんだ」という実感が湧いてくる。その日はちょっといいレストランでディナーを食べて、自分へのご褒美にした。罪悪感なく使えるお金があるって、こんなに気持ちいいんだと思った。

生活面での変化も大きかった。意外だったのは、サブスクの数が減ったことで、逆に残ったサービスをちゃんと使うようになったこと。以前は「あれもこれもある」状態で、結局どれも中途半端にしか使っていなかった。でも、「これとこれしかない」と分かると、その中から選んで使うようになる。

特にNetflixは、以前より明らかに視聴時間が増えた。「せっかく残したんだから見なきゃ」という義務感ではなく、純粋に「楽しみたいから見る」という感覚に変わった。週末に「今日は何見ようかな」と作品を選ぶ時間が、ちょっとした贅沢な時間になった。

音楽サービスも同じ。SpotifyとApple Musicの両方があった頃は、「あの曲どっちにあったっけ?」と探す手間があった。Apple Musicに統一してからは、プレイリストの整理もちゃんとやるようになったし、新しいアーティストを探すのも楽しくなった。

そして一番大きな変化は、新しいサブスクに対する態度だった。以前は、面白そうなサービスがあると、深く考えずに「とりあえず契約しちゃえ」という感じだった。でも今は、契約する前に必ず自問自答するようになった。「これは本当に必要?」「既に持ってるサービスで代用できない?」「無料版じゃダメなの?」

先日、友達が「このフィットネスアプリすごくいいよ!」と勧めてくれたとき、以前の私なら即座に契約していただろう。でも今回は、「まずは無料版で一週間試してみる」という選択をした。結果的に、三日坊主で終わって、有料版に移行せずに済んだ。無駄な出費を事前に防げた。

買い物の仕方も変わった気がする。以前は「月額だから安い」という感覚で、サブスクをポンポン契約していた。でも実際に年間で計算してみると、結構な額になる。この感覚が身についてから、普通の買い物でも「これって年間でいくらになる?」と考えるようになった。毎日コンビニで缶コーヒーを買うのをやめて、家で淹れるようにしたのも、この延長線上にある。年間で3万円以上の節約になる計算だ。

友達との会話も変わった。飲み会で「最近サブスク整理してさ」と話したら、みんな食いついてきた。「私も見直したい」「どうやったの?」と質問攻めにあって、自分の経験をシェアした。後日、何人かの友達から「おかげで月5,000円浮いた!」とお礼のメッセージが来て、なんだか嬉しかった。

続けてみて見えてきたこと

サブスクを整理してから半年が経った今、見えてきたことがいくつかある。

まず、サブスクの整理は一度やって終わりじゃないということ。三ヶ月に一度くらいのペースで、定期的に見直す必要がある。実際、整理後にまた新しいサービスを契約したものもあるし、使わなくなったものもある。サブスク管理アプリには「定期見直しアラート」を設定して、三ヶ月ごとに通知が来るようにしている。

それから、サブスクとの付き合い方には、人それぞれのスタイルがあるということ。私の場合は「厳選して深く使う」タイプに落ち着いたけど、友達の中には「広く浅く、いろんなサービスを試したい」というタイプもいる。どちらが正しいというわけじゃなくて、自分の価値観に合った使い方をすればいい。

興味深かったのは、「無料サービスの価値」を再認識したこと。YouTubeって、無料であれだけのコンテンツが見られるってすごいことだと思う。広告はあるけど、それを許容すれば、ほぼ無限のエンタメが手に入る。有料のサブスクばかりに気を取られていた頃は、この当たり前の事実を忘れていた。

また、「シェアリング」の重要性も感じた。Netflixを家族とシェアしたように、友達と「このサブスク一緒に使わない?」という話ができるものもある。もちろん、規約違反にならない範囲で、だけど。一人で全部契約するより、賢い使い方だと思う。

半年続けてみて、貯金も少しずつ増えてきた。月に浮いた1万円を、毎月自動的に別口座に振り込む設定にした。半年で6万円。一年で12万円。三年で36万円。この調子で続けたら、数年後には結構まとまった額になる。「塵も積もれば山となる」とはよく言ったものだ。

でも、ただお金を節約することが目的じゃないことにも気づいた。本当に大事なのは、「自分が何にお金を使っているか」を把握すること。そして、「本当に価値があると思うものにお金を使う」こと。サブスクの整理を通じて、この感覚が身についた気がする。

最近、ちょっと高級な料理教室のサブスクを契約した。月額5,000円と、決して安くはない。でも、これは「自分にとって本当に価値がある」と確信できたから契約した。実際に通ってみて、料理のスキルも上がったし、何より楽しい。これは無駄な出費じゃなくて、投資だと思っている。

サブスク整理前の私なら、「5,000円は高い」と躊躇していたかもしれない。でも今は、無駄な支出を削った分、本当に必要なものには適切にお金を使えるようになった。このメリハリが、生活の質を上げているんだと実感している。

もう一つ、続けていて気づいたのは、「デジタルデトックス」の効果。サブスクが多かった頃は、常に「あれも見なきゃ、これもやらなきゃ」という焦燥感があった。でも整理してからは、その焦りがなくなった。スマホを開く時間も自然と減って、読書をしたり、散歩をしたり、アナログな時間が増えた。

サブスク管理アプリのデータを見返すと、面白い発見がある。例えば、冬はNetflixの利用時間が増えて、夏は音楽サービスの利用が増える。自分の生活パターンが、数字で見えてくる。これを参考に、「夏は動画サービスを一時停止してもいいかな」とか、季節に応じた最適化もできるようになった。

まとめ

サブスク管理アプリを使い始めてから、もうすぐ一年になる。最初は単純に「お金がもったいない」という動機だったけど、今となっては、お金以上に大きなものを得られた気がしている。

それは、「自分の生活を主体的にデザインする」という感覚だ。以前は、なんとなく流されるままにサービスを契約して、なんとなく使わないまま放置して、なんとなくお金が減っていく。でも今は、自分で選んで、自分で決めて、自分の価値観に基づいて生活している、という実感がある。

サブスクって、便利な反面、知らず知らずのうちに生活を支配されてしまう危険性もあると思う。「あれもある、これもある」という状態が、実は何も豊かにしていないこともある。むしろ、本当に必要なものだけに絞り込むことで、それぞれのサービスをちゃんと楽しめるようになる。

もちろん、私のやり方が全ての人に合うわけじゃない。サブスクをたくさん契約して、それを全部使いこなせる人もいるだろう。でも、もし私と同じように「なんか無駄に払ってる気がする」と感じている人がいたら、一度サブスク管理アプリを試してみることをお勧めしたい。自分が何に、いくら払っているのかを「見える化」するだけでも、意識が変わると思う。

今、私の契約しているサブスクは8個。月額合計は12,000円。整理前の半分以下だ。でも、生活の質は確実に上がった。余裕を持って使えるお金があるし、本当に好きなサービスだけに囲まれている充実感がある。そして何より、「自分の生活をコントロールできている」という安心感がある。

先日、また新しい動画配信サービスのCMを見た。面白そうだな、と思った。以前なら即座に契約していただろう。でも今は、「本当に必要かな?」「今あるサービスで満足してるしな」と冷静に考えられる。そして、必要ないと判断したら、きっぱり諦められる。この変化が、私にとっての一番の収穫かもしれない。

サブスクとの付き合い方を見直すことは、結局、自分の生活と向き合うことだった。何に時間を使いたいのか、何を大切にしたいのか、どう生きていきたいのか。そういう根本的な問いに、向き合うきっかけをくれた。払ってるのに使ってないものたちは、ただの無駄遣いじゃなくて、私への問いかけだったのかもしれない。「本当にこれでいいの?」って。

今は胸を張って答えられる。「うん、これでいい」って。

スマホで袋分け管理を始めたら、買い物ストレスが消えていった話

スマホで袋分け管理を始めたら、買い物ストレスが消えていった話

触れたきっかけと思ったこと

お金に対する漠然とした不安が消えなかった。それが私が袋分け管理に興味を持った最初のきっかけだった。

毎月、給料が入ってくる。そして毎月、なんとなく生活している。特に贅沢をしているわけじゃないし、毎晩外食しているわけでもない。なのに、月末になると「あれ、お金ってどこに消えたんだっけ?」という感覚に襲われる。銀行口座の残高を見て、こんなはずじゃなかったと小さくため息をつく。そんな日々が続いていた。

家計簿アプリは何度か試した。最初の一週間くらいは律儀に記録するんだけど、気づくと開かなくなっている。レシートを撮影するタイプのアプリも使ってみたけど、結局「記録すること」自体が目的になってしまって、支出をコントロールできている実感がまったくなかった。数字は並んでいるけど、それで?という状態。

ある日、友人とランチをしていたときのこと。彼女が会計のあと、スマホで何やら操作していた。「何してるの?」と聞くと、「袋分け管理してて、今日使った分を記録してるんだ」と教えてくれた。袋分け管理?昔、母親が現金を封筒に分けて管理していたのは知っていたけど、今どきそんなことをしている人がいるんだと驚いた。

「でもさ、現金って面倒じゃない?」と聞くと、彼女は笑いながら「違うの、スマホで袋分けしてるの。現金は使ってないよ」と答えた。スマホで袋分け?その矛盾した言葉が妙に気になって、詳しく聞いてみた。

彼女の説明によると、給料が入ったらまず「食費」「日用品費」「交際費」みたいに目的別にお金を振り分ける。そしてスーパーで買い物をしたら「食費の袋」から支出を記録する。クレジットカードやキャッシュレス決済を使っても、その場で「○○の袋から○○円使った」と記録する。そうすることで、それぞれの項目にどれくらいお金が残っているかが一目でわかるんだという。

その話を聞いて、なるほどと思った。私が家計簿アプリで挫折した理由がわかった気がした。私は「記録すること」はできても、「残りがいくらあるか」を意識できていなかった。レシートをせっせと記録しても、結局月末に「うわ、使いすぎた」と後悔するだけ。でも袋分けなら、買い物をする前に「この袋にはあといくら残ってるかな」って確認できる。つまり、お金を使う前にコントロールできるんだ。

家に帰ってから、さっそく袋分け管理について調べてみた。確かに、そういう機能を持ったアプリがいくつもある。無料のものもあれば有料のものもある。レビューを読んでいると、「これまでどんな家計簿も続かなかったけど、袋分けならできた」という声がたくさんあった。

正直、半信半疑だった。これまで何度も「今度こそ家計管理をちゃんとやろう」と思っては挫折してきた私だ。また同じことの繰り返しになるんじゃないか。でも、あの「お金がどこに消えたかわからない」というモヤモヤを解消したい気持ちも強かった。スーパーで買い物をするたび、「これ買っていいのかな」「今月、あとどれくらい使えるんだろう」という漠然とした不安を感じながらレジに並ぶのは、もう嫌だった。

よし、やってみようと決めたのは、その日の夜だった。どうせ無料のアプリから試せるんだし、ダメだったらまた考えればいい。そう思って、一つのアプリをダウンロードした。

最初に戸惑った体験

アプリを開いて最初に求められたのは、「袋を作る」という作業だった。食費、日用品、交際費、医療費、趣味…。どんな項目を作ればいいんだろう?検索すると、みんな5つとか7つとか、シンプルな項目で管理しているらしい。でも私は迷った。食費は外食も含むの?コンビニでお菓子を買ったら?美容院代は日用品?それとも別?

結局、最初は思いつくままに10個くらい袋を作った。「食費(自炊)」「食費(外食)」「カフェ・お茶代」「日用品」「美容・衣服」「交通費」「交際費」「趣味・娯楽」「医療費」「その他」。我ながら細かすぎる気もしたけど、とりあえずこれでスタートすることにした。

次に、それぞれの袋にいくら入れるか決める必要があった。これがまた難しかった。私は自分が毎月、食費にいくら使っているかすら把握していなかった。だいたい3万円くらい?いや、外食も含めたら4万円かな?もっと使ってるかも?

適当に数字を入れて、とりあえず始めてみることにした。給料日まで数日あったけど、待ちきれなくて今ある口座残高から逆算して、各袋に予算を振り分けた。食費に3万円、日用品に1万円、交際費に1万円…。そうやって割り振っていくと、あっという間に予算オーバーになった。え、こんなに使えないの?現実を突きつけられた気分だった。

何度か調整して、なんとか各袋に予算を振り分けた。そして実際に使ってみることにした。次の日、スーパーに買い物に行った。いつものように野菜や肉、調味料をカゴに入れてレジに並ぶ。支払いはいつものクレジットカード。そして駐車場に戻ってから、アプリを開いた。

「食費(自炊)」の袋を選んで、レシートを見ながら金額を入力。2,847円。登録ボタンを押すと、袋の残高が27,153円になった。ふーん、こんな感じか。思ったより簡単だった。でも正直、まだピンときていなかった。これのどこが画期的なんだろう?

数日が経った。相変わらず買い物のたびに記録はしていた。でもある日、ドラッグストアで困ったことが起きた。シャンプーとトリートメントを買った。これは日用品だからわかる。でも、ついでにリップクリームも買った。これは美容?日用品?さらに、小腹が空いたのでチョコレートも買った。これは食費?

レジを済ませてから、駐車場で10分くらい悩んだ。結局、シャンプーとトリートメントは「日用品」、リップクリームは「美容・衣服」、チョコレートは「食費(自炊)」に分けて記録した。でも、一回の買い物を3つの袋に分けて記録するのがすごく面倒だった。これ、毎回やるの?無理じゃない?

次に戸惑ったのは、外食の扱いだった。友人とランチに行った。会計は1,200円。これは「食費(外食)」?それとも「交際費」?一人で食べるときは「食費(外食)」で、誰かと食べるときは「交際費」?でも友人とランチなんて、交際って感じでもないし…。

またある日、本屋でビジネス書を買った。2,000円。これは「趣味・娯楽」?でも仕事に関係する本だし…。いや、でも会社で買ってもらうわけじゃないから趣味でいいのか?そもそも「その他」の袋って何に使うんだっけ?

こういう「どの袋に入れるか問題」が次々と発生した。分類に悩んで、買い物の記録をするのが面倒になってきた。そして恐れていたことが起きた。ある日、コンビニで買い物をしたあと、記録するのを忘れた。次の日に気づいたけど、レシートはもう捨てた後だった。えーと、いくら使ったっけ?たぶん600円くらい?何を買ったっけ?お弁当とお茶と…他に何か買ったような気もするけど…。

結局、適当に「食費(自炊)」に500円と記録した。でもこれ、意味あるのかな?と疑問が湧いた。正確じゃない数字を記録して、何の意味があるんだろう。

試行錯誤しながら気づいたこと

一週間くらい経ったころ、私は袋分け管理をやめかけていた。分類が面倒、記録が面倒、結局これも続かないんじゃないかという予感があった。でもその日、ちょっとした気づきがあった。

仕事帰り、いつものスーパーに寄った。夕飯の買い物をするためだ。カゴを持って店内を歩きながら、なんとなくアプリを開いてみた。「食費(自炊)」の袋を見ると、残りは14,326円だった。今日は何を買おう?と考えながら、その数字を意識していた。

豚肉が安かったから手に取った。298円。白菜も安い。198円。きのこのパックも買って、あとはニンジンと玉ねぎと…。買い物をしながら、なんとなく合計金額を頭の中で計算していた。だいたい1,500円くらいかな。そうすると残りは13,000円くらいになる。

レジで会計を済ませると、1,487円だった。予想とほぼ同じ。駐車場でアプリに記録して、残高を確認した。12,839円。月末まであと20日くらいある。ということは、食費の袋にはまだ十分残ってる。あ、そういうことか。

そのとき初めて、袋分け管理の意味がわかった気がした。大事なのは「分類」じゃなくて「残高を意識すること」なんだ。食費の袋に3万円入れて、今いくら残ってるか。それを知っていれば、買い物のときに「これ買っても大丈夫かな」という不安がなくなる。

その気づきから、私の使い方が少しずつ変わっていった。まず、袋の数を減らすことにした。10個も袋を作ったのが間違いだった。「食費(自炊)」と「食費(外食)」を分ける意味ってあるんだろうか?どっちも食べることにかかるお金なんだから、一緒でいいんじゃないか。

同じように、「カフェ・お茶代」も「交際費」も、結局は「誰かと過ごす時間、または自分のリフレッシュにかけるお金」だから、まとめて「楽しみ費」にしてもいいんじゃないか。そう考えて、袋を整理した。

最終的に残したのは5つだけ。「食費」「生活費」「楽しみ費」「美容・服」「予備費」。生活費には日用品や交通費、医療費なども全部含めることにした。細かく分類するより、ざっくり管理する方が自分には合っていた。

もう一つ気づいたのは、「完璧を目指さなくていい」ということだった。コンビニで買い物をして記録を忘れた日。あのとき私は「正確じゃない数字を記録して意味があるのか」と悩んだ。でも、そもそも完璧に記録することが目的じゃないんだ。大事なのは「だいたいどれくらい残ってるか」を把握すること。500円か600円か、そんな細かいことはどうでもいい。

それからは、記録を忘れたときも気楽に対応するようになった。だいたいこれくらい使ったかな、と思う金額を入れておく。レシートを一つひとつ確認して正確に記録しようとするから面倒になるんだ。ざっくりでいい。その代わり、定期的に口座残高と照らし合わせて、大きくズレていないか確認すればいい。

そしてもう一つ、大きな気づきがあった。それは「予算は固定しなくていい」ということだった。私は最初、一度決めた予算は絶対に守らなきゃいけないと思っていた。食費は3万円、生活費は2万円、みたいに。でも実際に使ってみると、月によって必要な金額は変わる。ある月は友人の結婚式があって「楽しみ費」が足りなくなった。またある月は風邪を引いて病院に行ったから「生活費」が予算オーバーした。

最初はそれがストレスだった。予算を守れない自分がダメなんだと思っていた。でもあるとき、袋の間でお金を移動させればいいんだと気づいた。今月は楽しみ費が足りないから、食費の袋から5,000円移動させよう。そうすれば全体の収支は変わらないし、どちらの袋も赤字にならない。

袋分け管理は、お金を縛るためのツールじゃなくて、お金の流れを見えるようにするためのツールなんだと理解した。予算はあくまで目安。大事なのは「全体でどれくらい使えるか」を意識することで、個々の袋の予算を死守することじゃない。

自分なりに工夫したポイント

袋分け管理に慣れてくると、自分なりに使いやすいように工夫できるようになってきた。まず私がやったのは、「週予算」を設定することだった。

月の予算を決めても、月初めにたくさん使いすぎて月末にお金がなくなる、というパターンを何度か繰り返した。だから私は、各袋の予算を4で割って、週ごとの予算を出すことにした。食費が月3万円なら、週7,500円。これを目安に、毎週日曜日の夜にアプリを開いて、今週いくら使ったか確認する習慣をつけた。

週7,500円以内に収まっていたら「今週は上手くいった」と思えるし、オーバーしていたら「来週は気をつけよう」と意識できる。月単位だと長すぎて、途中で感覚が麻痺してしまうけど、週単位なら調整がきく。これが私にはすごく合っていた。

次に工夫したのは、「先取り貯金」を袋分けに組み込んだことだった。これまで私は貯金が苦手だった。余ったお金を貯金しようと思っても、余らない。だから袋分けを始めるときに、「貯金」という袋も作った。そして給料が入ったら、まず貯金袋に1万円を入れる。その残りで、他の袋に予算を振り分ける。

最初は、貯金に1万円も回したら生活できないんじゃないかと不安だった。でも実際にやってみると、意外と大丈夫だった。むしろ「使えるお金はこれだけ」と最初に決まっている方が、無駄遣いしなくなった。貯金袋の残高が増えていくのを見るのも、ちょっとした楽しみになった。

もう一つ工夫したのは、「買い物メモ」を袋と連動させることだった。スーパーに行く前、冷蔵庫を見ながら「今日は豚肉と白菜と…」と買うものをアプリのメモ機能に書き出す。そして、だいたいいくらになりそうか予想する。このとき、食費袋の残高も確認する。

たとえば残高が5,000円しかなくて、あと10日ある。ということは一回の買い物で使えるのは多くても2,000円くらい。じゃあ今日は豚肉じゃなくて安い鶏肉にしようとか、買い物に行く前に判断できるようになった。

これをやるようになってから、スーパーでの「無駄買い」が激減した。これまでは、とりあえず店に行ってから「何買おうかな」と考えていた。そうすると、あれもこれもと目について、結局買いすぎる。でもメモを作ってから行くと、それ以外のものに目が向きにくくなる。たまに特売品で欲しいものがあれば買うけど、基本はメモに書いたものだけ。

あと、私が地味に役立つと思ったのは、「ご褒美費」を作ったことだった。これは月2,000円だけの小さな袋。この袋のお金は、何に使ってもいい。ケーキを買ってもいいし、欲しかったコスメを買ってもいい。漫画を買ってもいい。

なぜこの袋を作ったかというと、全部を「管理」してしまうと息が詰まるからだった。すべての買い物を「これは食費」「これは生活費」と分類して、予算内に収めようとすると、だんだん買い物すること自体がストレスになってくる。でも「ご褒美費」だけは何も考えずに使っていい。この「逃げ道」があることで、他の袋は頑張って管理できるようになった。

それから、クレジットカードの引き落としへの対処も工夫した。袋分けで記録しているのは「使ったタイミング」のお金。でも実際には、クレジットカードの引き落としは翌月だったりする。だから「クレジット引き落とし待ち」という袋も作って、カードで支払った金額をそこにプールするようにした。そうすれば、引き落とし日に慌てることがない。

最後に、定期的に「振り返りノート」を書くことも習慣にした。月末になったら、アプリのデータを見ながら、今月はどの袋が余ったか、どの袋が足りなかったか、何にお金を使ったか、来月はどう調整するか、そんなことをスマホのメモアプリに書き出す。この作業をすることで、自分のお金の使い方の傾向が見えてくるし、次の月の予算を決めるときの参考になった。

日常や生活でどう変わったか

袋分け管理を始めて3ヶ月くらい経ったころ、ふとした瞬間に「あれ、変わったな」と思うことがあった。スーパーのレジに並んでいるとき、以前のような不安がなかった。

前は、カゴの中の商品を見ながら「今日、結構買っちゃったな」「これ、本当に買って大丈夫かな」という漠然とした罪悪感みたいなものがあった。でも今は、買い物に行く前にアプリで残高を確認して、だいたいいくら使えるか把握してから店に行く。だから、レジに並ぶときには「今日は予算内だな」という安心感がある。

この「安心感」が、私の日常を大きく変えた。買い物がストレスじゃなくなったのだ。むしろ、予算内でやりくりすることがちょっとしたゲームみたいに感じられるようになった。今日は特売品をうまく使って1,500円で済んだぞ、とか、今週は予算より1,000円少なく済んだから来週はちょっと贅沢できるな、とか。

友人との外食も気楽になった。以前は、誘われたときに「今月、あとどれくらい使えるんだっけ?」と不安になって、行きたいけど迷う、ということがよくあった。でも今は、アプリを開いて「楽しみ費」の残高を見れば、すぐに判断できる。残高に余裕があれば即答で「行く!」と言えるし、厳しければ「来月にしようか」と素直に言える。

この「即座に判断できる」ことの快適さは、やってみないとわからなかった。以前の私は、いつもお金のことで「なんとなく不安」だった。その不安は具体的じゃない。いくら残ってるかわからない、いくら使っていいかわからない、だから全部が不安。でも袋分けをするようになってから、不安が具体的な数字に置き換わった。数字になれば、対処できる。

もう一つ変わったのは、無駄遣いが減ったことだった。以前の私は、コンビニでつい余計なものを買ってしまう癖があった。飲み物を買うついでに、レジ横のお菓子やホットスナックに手が伸びる。でも袋分け管理をするようになってから、買い物をする前に「これ、本当に欲しいの?」と自分に問うようになった。

なぜなら、それを買うと記録しなきゃいけないから。アプリを開いて、袋を選んで、金額を入力して。その手間を考えると、「まあ、別にいいか」と思えることが増えた。記録が面倒だから買わない、というのは本来の目的とは違うかもしれないけど、結果的に無駄遣いが減ったのは事実だった。

服を買うときの行動も変わった。以前はセールで安くなっているとつい買ってしまって、結局あまり着ない服がクローゼットに溜まっていた。でも今は、「美容・服」の袋の残高を見てから買うかどうか判断する。残高に余裕がなければ、今月は見送る。そうやって一呼吸置くことで、本当に欲しいものだけを買うようになった。

面白かったのは、お金を使うことへの罪悪感が減ったことだ。以前は、ちょっと高いランチを食べたり、欲しかったコスメを買ったりすると、「無駄遣いしちゃった」という罪悪感があった。でも袋分け管理をするようになってから、予算内で使っている限り、罪悪感を感じなくなった。

「楽しみ費」の袋に1万円入れてある。今月、友人とのランチで3,000円使った。でも袋にはまだ7,000円残ってる。だから大丈夫。そういう風に考えられるようになった。お金を使うことは悪じゃない。予算内でコントロールできていれば、堂々と使っていい。そう思えるようになったことが、精神的にすごく楽だった。

夫婦関係も少し変わった。私には結婚して3年になる夫がいるのだけど、以前はお金の話をするのが苦手だった。というか、避けていた。お互いの収入や支出について詳しく話すことがなかったし、家計管理も曖昧だった。でも袋分け管理を始めてから、自然とお金の話をするようになった。

「今月、食費が予算オーバーしそうだから、今週は外食控えようか」とか、「来月、友達の結婚式があるから、楽しみ費を多めに確保したいんだけど」とか。そういう具体的な話ができるようになった。数字というのは便利で、感情抜きに話せる。「お金がない」という漠然とした話じゃなくて、「この袋があと5,000円しかない」という具体的な話だから、冷静に対処できる。

続けてみて見えてきたこと

半年が過ぎたころ、私は袋分け管理が完全に習慣になっていた。買い物をしたらその場でアプリを開いて記録する。週末には各袋の残高を確認する。給料日には次の月の予算を考える。そういう一連の流れが、歯を磨くのと同じくらい自然な行動になっていた。

そして、続けているうちにいろんなことが見えてきた。まず、自分のお金の使い方の「パターン」がわかってきた。私は月の前半に使いすぎる傾向があった。給料が入ったばかりで気が大きくなっているのか、外食が増えたり、ちょっといい食材を買ったりする。そして月の後半になると、予算を気にして節約モードに入る。

このパターンに気づいてから、意識的に「前半は控えめに、後半に余裕を持たせる」という配分を心がけるようになった。最初の週は予算の2割だけ使う、二週目は3割、みたいな感じ。そうすることで、月末に「お金がない!」と慌てることがなくなった。

もう一つ見えてきたのは、「固定費」の重さだった。家賃、光熱費、スマホ代、保険料。これらは袋分けの対象外で、毎月自動的に引き落とされる。でも改めて計算してみると、固定費だけで給料のかなりの割合を占めていた。残りで食費や生活費をやりくりしなきゃいけないから、そりゃあ余裕がないわけだ。

それに気づいてから、固定費の見直しもするようになった。使っていないサブスクサービスを解約したり、スマホのプランを変更したり。月1,000円でも固定費が減れば、それが毎月の余裕につながる。袋分け管理をしていなかったら、こういう細かい固定費にまで目が向かなかったと思う。

そして何より、「貯金ができるようになった」ことが大きな変化だった。以前の私は、貯金なんて夢のまた夢だった。毎月生活するだけで精一杯で、余ったら貯金しようと思っていたけど、余ることなんてなかった。でも袋分けで「貯金袋」を作って、最初に1万円を確保するようにしてから、確実に貯金が増えていった。

半年で6万円。そんなに大きな額じゃないかもしれないけど、私にとっては大きな達成感だった。これまで「お金を貯められない自分」がコンプレックスだったけど、そうじゃなかった。やり方を知らなかっただけだった。

さらに続けていくうちに、お金に対する考え方自体が変わってきた。以前の私は、お金を「漠然と不安なもの」として捉えていた。足りない、消える、コントロールできない。でも今は、お金を「道具」として見られるようになった。人生を豊かにするための道具。その道具を上手に使うためには、どこにいくらあるかを把握する必要がある。袋分けは、そのための仕組みなんだと理解した。

友人にもこの方法を勧めてみた。あのとき、私に袋分け管理を教えてくれた友人とは別の、お金に悩んでいた同僚に。最初は「面倒くさそう」と言っていた彼女だったけど、試しにやってみたら意外とハマったらしい。「買い物するとき、前みたいにドキドキしなくなった」と言っていた。

そうなんだ、買い物のドキドキ。あの「これ買って大丈夫かな」という不安。袋分け管理をする前は、それが当たり前だと思っていた。でも今思えば、あのストレスって結構大きかった。買い物という日常的な行為が、毎回小さなストレスを生んでいた。それがなくなっただけで、生活の質がすごく上がった気がする。

一年経ったころには、貯金が12万円を超えていた。そして私は、その一部を使って小旅行に行くことにした。以前だったら、「貯金を使うなんてもったいない」と思っただろう。でも今は違う。貯金袋から3万円を「旅行費」として移動させて、堂々と使った。なぜなら、その3万円は「余ったお金」じゃなくて、「計画的に貯めたお金」だから。

旅行から帰ってきて、また日常が始まる。またスーパーに行って、アプリを開いて、残高を確認する。この繰り返しが、今の私にはとても心地いい。

まとめ

袋分け管理を始めて一年以上が経った今、私の生活はあのころとはまったく違う。お金がどこに消えたかわからない、

レシートを撮り続けて見えてきた“本当の節約ポイント”の話

レシートを撮り続けて見えてきた"本当の節約ポイント"の話

触れたきっかけと思ったこと

去年の春先、引っ越しで新しいアパートに移ったばかりの頃だった。家賃が前の部屋より2万円も上がってしまって、これはちょっと生活費を見直さないとヤバいなと思っていた時期のことだ。それまで「節約しなきゃ」と思いつつ、家計簿なんて三日坊主で終わっていたし、そもそも何にいくら使っているのか把握できていなかった。

ある晩、帰宅途中のコンビニで何気なくカゴに入れた商品を見て、ふと「今日これで何円使ったっけ」と思い返してみた。朝のコーヒー、昼のコンビニ弁当、仕事帰りのドラッグストア。全然思い出せない。財布の中のレシートをぐちゃぐちゃに突っ込んで、気づいたら捨てている。そんな生活を何年も続けていた。

友人とランチをした時、偶然その話になった。「最近レシート撮るだけでいいやつあるじゃん、あれ便利だよ」と軽く教えてもらったのがきっかけだった。スマホでパシャっと撮るだけで記録できるなら、ズボラな自分でも続けられるかもしれない。そう思って、その日のうちにいくつかアプリをダウンロードしてみた。

正直、最初は半信半疑だった。レシート撮るだけで何が変わるんだろう、という気持ちが強かった。でも「無料だし、とりあえず1ヶ月だけやってみるか」という軽い気持ちでスタートした。まさかその後、自分の買い物の癖や無駄遣いのパターンがこんなにはっきり見えてくるとは、この時は全く想像していなかった。

最初に戸惑った体験

撮影を始めた最初の1週間は、思った以上に大変だった。というより、自分がいかにレシートを適当に扱っていたかを思い知らされた。

まず、コンビニで買い物をした直後、レジを離れた瞬間にレシートをぐしゃっと財布に突っ込む癖がついていた。急いでいる時なんて、そのまま店を出てしまう。帰宅してから「あ、あのレシート撮ってない」と気づいて、財布の中を探すんだけど、他のレシートとぐちゃぐちゃに混ざって、どれがどれだか分からなくなっている。しかも、財布の奥で折れ曲がって、文字がかすれてしまっているものもあった。

スーパーのレシートなんて特に長くて、折り畳まれた状態で渡されるから、まっすぐ伸ばして撮影するのが意外と面倒だった。テーブルの上に広げて、四隅を押さえながら撮影する。照明の角度が悪いと文字が光で飛んでしまって、何度も撮り直し。あるいは影が映り込んで真っ暗になってしまったり。「こんなに手間かかるなら、手入力した方が早いんじゃないか」と思ったこともあった。

それから、飲食店でもらう手書きの領収書。これが本当に厄介だった。手書きの文字が読み取れなかったり、感熱紙が時間経過で薄くなっていたり。あるカフェでもらったレシートは、バッグの中で水筒の水滴がついてしまって、金額のところだけ滲んでしまった。撮影しようとしたときには、もう何が書いてあるのか判別不能だった。

一番困ったのは、ドラッグストアで買い物をした時だ。ポイントカードのキャンペーン情報やらクーポン券やらで、レシートがとにかく長い。70センチくらいあったんじゃないだろうか。床に広げて撮影したら、愛猫がレシートの上に乗ってきて、シャッターチャンスを逃した。笑えない状況だった。

最初の2週間くらいは、撮影し忘れることも多かった。夜寝る前に「あ、今日の昼に買ったパン屋のレシート撮ってない」と思い出して、慌てて財布をひっくり返す。でも、もう捨ててしまっていたり、どこかに紛れ込んでいたり。そうなると、もう記録できない。記録が途切れ途切れになって、「これじゃ意味ないよな」と思って、何度も挫折しかけた。

試行錯誤しながら気づいたこと

それでも、なんとか1ヶ月続けてみた。途中で何度も「もういいかな」と思ったけれど、ここでやめたらまた今までと同じだ、という妙な意地があった。

そして1ヶ月が経った頃、アプリに蓄積されたデータを眺めていて、ある驚きの発見があった。コンビニでの支出が圧倒的に多かったのだ。金額で見ると、月に3万円近くコンビニで使っていた。1日平均1000円。朝のコーヒーとパン、昼の弁当、仕事帰りのお菓子や飲み物。一回一回は数百円なのに、積み重なるとこんな金額になっていたのか、と愕然とした。

もっと驚いたのは、買っている曜日に偏りがあったことだ。月曜日と金曜日にコンビニでの買い物が集中していた。よく考えてみると、月曜日は週初めで疲れていて、お弁当を作る気力がない。金曜日は週末前でテンションが上がって、ついついデザートやお酒のおつまみを買ってしまう。自分でも気づいていなかった行動パターンが、データではっきり見えてきた。

さらに、レシートを細かく見ていくと、同じ商品を何度も買っていることにも気づいた。特定のカップ麺、特定のチョコレート菓子。家に帰って棚を見ると、案の定、同じカップ麺が4個もストックされていた。買ったことを忘れて、また買ってしまっていたのだ。これも無駄遣いの一つだった。

また、ドラッグストアでの買い物も意外な発見があった。本当に必要なものだけを買っているつもりだったのに、レシートを見返すと、セール品につられて買っている商品が結構あった。「30%オフ」に惹かれて買ったシャンプーの詰め替えが、実は普段使っている銘柄より割高だったことも判明した。セールだからお得、という思い込みが、実は損をしていることもある。

スーパーでの買い物では、夕方6時以降に行くことが多かった。仕事帰りの時間帯だ。でも、その時間帯は空腹で判断力が鈍っていて、余計なものをカゴに入れてしまっていた。レシートを見ると、お菓子やお惣菜の購入頻度が高い。お腹が空いている状態で買い物に行くのは、節約の大敵だと実感した。

こうやって2ヶ月、3ヶ月とレシートを撮り続けていくうちに、自分の消費行動の「癖」みたいなものが浮き彫りになってきた。それは、単なる家計簿では絶対に見えてこなかったものだった。金額の合計だけじゃなくて、「いつ」「何を」「どんな状況で」買っているのか。その積み重ねが、自分の無駄遣いの正体だった。

自分なりに工夫したポイント

データを眺めているうちに、ただ記録するだけじゃもったいないと思い始めた。せっかく撮影しているんだから、もっと活用できる方法があるんじゃないか。そう考えて、いくつか自分なりのルールを作ってみた。

まず、レシートをもらったら「その場で撮影」を徹底することにした。会計を済ませて店を出る前、レジ前の台やベンチに一度立ち止まって、その場でスマホを取り出して撮影する。これだけで、撮影忘れが激減した。最初は店員さんの目が気になったけれど、慣れてくると気にならなくなった。むしろ、レシートをその場で確認する習慣がついて、会計ミスにも気づけるようになった。

次に、撮影するときに「今日は何のために買ったのか」を一言メモするようにした。アプリにはメモ機能があったので、それを活用した。「月曜日で疲れてた」「セールにつられた」「ストレス買い」など、自分の気持ちを正直に書いた。これが後で見返したときに、かなり役立った。同じような状況で無駄遣いをしていることが、パターンとして見えてきたからだ。

それから、週に1回、日曜日の夜に「振り返りタイム」を設けることにした。その週に撮影したレシートを全部見返して、「これは必要だった」「これは無駄だった」と自分なりに評価する。最初は面倒だったけれど、10分もあれば終わる作業だった。この振り返りをすることで、翌週の買い物がかなり変わった。「今週はコンビニで使いすぎたから、来週はお弁当を作ろう」といった具体的な目標が立てられるようになった。

コンビニ対策としては、「コンビニでは飲み物しか買わない」というマイルールを作った。どうしてもコンビニに寄りたくなったら、飲み物だけにする。お弁当やお菓子はスーパーで買う。これだけで、コンビニでの支出が半分以下になった。

スーパーに行く時間帯も工夫した。空腹時を避けて、休日の昼食後に行くようにした。お腹が満たされている状態だと、不思議と余計なものを買わなくなる。それから、買い物リストを事前に作って、それ以外は買わないと決めた。レシートの記録を見返すと、リストを作った日とそうでない日では、支出額が明らかに違っていた。

ドラッグストアでは、セールの誘惑に負けないように、「今使っているものがなくなってから買う」を徹底した。ストック癖があったので、これが一番難しかった。でも、レシートを見返して「また同じものを買ってる」と自覚することで、少しずつ改善できた。

実際の場面でどう役立ったか

この習慣が特に役立ったのは、夏に行った3泊4日の北海道旅行だった。旅行中もレシートを撮り続けたのだ。

旅行って、どうしても財布の紐が緩みがちになる。「旅行だから」という言い訳で、普段なら買わないようなものをつい買ってしまう。お土産屋さんで見かけた可愛い雑貨、観光地の高めのカフェ、空港の免税店。気づいたら予算オーバーしていた、なんて経験が今までに何度もあった。

でも、旅行中もレシートを撮影することで、リアルタイムで「今いくら使ったか」が把握できた。1日目の夜、ホテルでその日のレシートを見返したら、すでに予算の半分近くを使っていることに気づいた。観光地の食事代が思ったより高かった。このままでは最終日に資金が足りなくなる。

そこで、2日目からは少し工夫をした。朝食はホテルのビュッフェでしっかり食べて、昼食は地元のスーパーで買ったお弁当にする。浮いた分を、本当に行きたかったお寿司屋さんのディナーに回す。お土産も、空港の免税店ではなく、地元のスーパーで北海道限定のお菓子を買う。こうすることで、満足度を下げずに、予算内に収めることができた。

帰宅後、旅行中のレシートを全部並べて眺めてみた。4日間で使った金額の内訳が一目瞭然だった。食費、交通費、お土産代、雑費。それぞれの比率を見て、「次の旅行では交通費をもう少し抑えて、食費にお金をかけよう」といった反省点が明確になった。これは、次の旅行計画を立てるときに、すごく参考になった。

日常生活でも、色々な場面で役立った。ある月、光熱費の請求が予想より高かった。同時期のレシートを見返してみると、コンビニでの買い物が増えていた。実は、その月は残業続きで疲れていて、自炊をサボってコンビニに頼りっぱなしだったのだ。光熱費だけ見ていたら気づかなかったけれど、レシートと照らし合わせることで、生活リズムの乱れと支出の関係が見えてきた。

また、友人との飲み会が続いた月があった。財布からどんどんお金が消えていく感覚があったけれど、具体的にいくら使ったかは分からなかった。でも、レシートを撮っていたおかげで、その月の交際費が普段の3倍になっていることが判明した。翌月は飲み会を控えめにして、家で友人を招いてホームパーティーにした。支出は半分以下で、むしろ楽しい時間を過ごせた。

季節の変わり目、衣替えの時期にも役立った。去年の秋に何を買ったか、レシートの記録を遡って確認できた。そうすると、「去年もこんな感じのニットを買ってたな」と気づいて、似たようなものを買わずに済んだ。クローゼットを開けて確認したら、確かに似たような色のニットがあった。レシートが、ある種の購買履歴データベースになっていた。

続けてみて変化したこと

レシートを撮り続けて、もうすぐ1年になる。この習慣を続けて、自分の中で明らかに変わったことがいくつかある。

まず、買い物をする前に「これ、本当に必要かな」と一瞬立ち止まるようになった。レジに並ぶ前に、カゴの中身をもう一度確認する。「これ、後でレシート撮ったときに後悔しないかな」と自問する。この一瞬の間が、衝動買いを防いでくれる。

実際の節約効果も大きかった。最初の月と比べて、月の支出が平均で2万円ほど減った。特にコンビニとドラッグストアでの無駄遣いが減った。年間で考えると24万円。これは大きい。浮いたお金で、ずっと欲しかったカメラを買うことができた。我慢して節約したというより、無駄を省いたら自然と貯まっていた、という感覚だ。

食生活も変わった。コンビニ弁当を減らして自炊を増やしたことで、栄養バランスが良くなった。体重も2キロほど減った。節約のつもりで始めたことが、健康面でもプラスになった。レシートを見返すと、野菜や果物を買う頻度が増えていることが分かって、ちょっと嬉しくなった。

意外だったのは、買い物そのものが楽しくなったことだ。以前は、何となく店に入って、何となく買い物をしていた。でも、レシートを意識するようになってからは、「この商品を選んだ理由」を自分で説明できるようになった。値段だけじゃなくて、品質や必要性を考えて選ぶ。そうすると、買い物に納得感が生まれる。レシートを撮るときも、「いい買い物だった」と思えることが増えた。

周りの人にも影響があった。同僚にこの習慣の話をしたら、「私もやってみる」と言って始めた人が何人かいた。数ヶ月後、その同僚から「おかげで無駄遣いが減った」と感謝された。自分の体験が誰かの役に立ったことが、純粋に嬉しかった。

それから、お金に対する漠然とした不安が減った。以前は、給料日前になると「今月、残りいくらだっけ」と心配になることが多かった。でも、レシートで支出を把握できるようになってからは、常に残高の目安が分かる。計画的にお金を使えるようになったことで、精神的にも楽になった。

季節ごとの支出パターンも見えてきた。夏はエアコン代と飲み物代が増える。冬は暖房費と鍋の材料費が増える。こういったパターンが分かると、事前に対策が立てられる。「今月は電気代が上がるから、外食を控えよう」といった調整ができる。

面白かったのは、自分の心理状態と支出の関係が見えてきたことだ。仕事でストレスが溜まっている時期は、コンビニスイーツやお酒の購入が増える。逆に、充実している時期は無駄遣いが減る。レシートが、ある意味で自分の心のバロメーターになっていた。「最近レシートが増えてるな」と思ったら、「ああ、ストレス溜まってるのかも」と自覚できる。そうすると、買い物以外のストレス解消法を考えるきっかけにもなった。

まとめ

レシートを撮り続けるという、たったそれだけのことが、こんなにも自分の生活を変えるとは思わなかった。

一番大きな発見は、「節約って我慢することじゃない」ということだった。無駄を知って、本当に必要なものにお金を使う。そのための第一歩が、自分の支出を「見える化」することだった。レシートは、ただの紙切れじゃなくて、自分の行動を映す鏡だった。

最初は面倒だったレシート撮影も、今では完全に習慣になった。歯を磨くのと同じくらい、当たり前の行動になっている。特別なことじゃない、日常の一部だ。

この1年で、貯金も増えたし、無駄遣いも減った。でも、それ以上に価値があったのは、自分の消費行動を客観的に見られるようになったことだ。なぜこれを買ったのか、本当に必要だったのか。そういったことを考える癖がついた。

もし、昔の自分と同じように「節約したいけど、何から始めればいいか分からない」と思っている人がいたら、レシートを撮ることから始めてみることをお勧めしたい。特別なアプリも、難しい知識も要らない。ただ、買い物をしたらレシートを撮る。それを続けるだけで、必ず何か見えてくるものがある。

完璧にやろうとしなくていい。撮り忘れることもあるし、途中で嫌になることもある。私もそうだった。でも、完璧じゃなくても、続けることに意味がある。1ヶ月、2ヶ月と続けていくうちに、少しずつ自分の消費のパターンが見えてくる。

レシートという小さな記録が、生活を大きく変えるきっかけになる。これは間違いない。私自身がそれを体験したから、自信を持って言える。今日買い物をしたら、レシートを捨てずに、一度じっくり眺めてみてほしい。そこには、自分でも気づいていなかった発見が、きっと隠れている。