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Googleカレンダーで予定管理が苦痛じゃなくなった私の小さな変化

触れたきっかけと思ったこと

手帳を開くたび、ため息が出ていた。

真っ白なページが何週間も続いていたり、逆に予定を詰め込みすぎて見返すのが億劫になったり。予定を書き込んだつもりが書いてなくて約束を忘れたこともある。何より、予定を管理すること自体が義務のように感じられて、手帳を開くだけで心が重くなっていた。

「きちんとした人は手帳を使いこなしている」という思い込みがあって、私もちゃんとしなきゃと何度も手帳を買い替えた。月間カレンダーがいいのか、週間バーチカルがいいのか。それとも1日1ページタイプなのか。毎年、年始になると文房具店で悩んで、今年こそは続けられる手帳を選ぼうと必死だった。

でも結局、どれを選んでも同じだった。最初の1ヶ月はきれいに使えるのに、2月に入るころには白紙のページが増えていく。予定を書くのを忘れて、スマホのメモアプリに適当に記録したり、付箋に書いて貼ったり。情報があちこちに散らばって、結局どこに何を書いたのか分からなくなる。

そんなとき、同僚の香織さんとランチをしていて、ふと予定の話になった。

「来週の会議、木曜だっけ?」と私が聞くと、香織さんはさっとスマホを取り出して「火曜の14時だよ。もう招待送ってるはずだけど」と答えた。私が手帳をカバンからごそごそ探している間に、彼女はもう次の話題に移っていた。

「私、Googleカレンダーに全部入れてるから楽なんだよね」

その言葉が妙に引っかかった。楽、という言葉。予定管理が楽だと感じている人がいるという事実が、新鮮だった。私にとって予定管理はずっと「やらなければいけない苦行」だったから。

香織さんは特別几帳面な性格というわけでもない。むしろ大雑把なところもある人だ。そんな彼女が「楽」だと言い切るなら、何か違うアプローチがあるのかもしれない。そう思って、試しに使ってみることにした。

最初は正直、またどうせ続かないだろうと思っていた。手帳もダメだったのに、デジタルツールが続くわけがない。でも、苦痛から逃れられるなら、試してみる価値はあるかもしれない。そんな軽い気持ちだった。

最初に戸惑った体験

アプリを開いた瞬間、思ったよりシンプルな画面に少し拍子抜けした。

何か特別な機能があるのかと期待していたけれど、見えるのはただのカレンダー。日付が並んでいるだけ。これのどこが「楽」なんだろうと、正直疑問だった。

とりあえず明日の予定を入れてみることにした。タップして、時間を選んで、予定のタイトルを入れる。ここまでは分かる。でも入力欄がいくつもあって、何を入れればいいのか迷った。場所?説明?通知?ゲスト?

結局、タイトルだけ入れて保存した。「歯医者 14:00」とだけ。これで本当に使えるのか不安だった。

次の日、歯医者の予定の1時間前に、突然スマホが鳴った。通知が来ていた。「歯医者 14:00」という文字。あ、そうか、自動で通知してくれるんだ。設定した覚えはなかったけれど、デフォルトで1時間前に通知が来るようになっていたらしい。

これは少し便利かもしれない、と思った。手帳だと、自分で時計を見て予定を確認しなければいけない。でもこれなら、向こうから教えてくれる。忘れっぽい私には合っているかもしれない。

でも同時に、戸惑いもあった。

予定を入れるとき、何時間も前から準備が必要なものと、ぎりぎりでいいものがある。歯医者は1時間前の通知でよかったけれど、例えば友達との約束で電車で1時間かかる場所なら、もっと前に通知がほしい。どうやって調整すればいいんだろう。

それに、予定を入れる場所がスマホの中だけというのも、なんとなく不安だった。手帳なら物理的に存在していて、開けば必ず予定が見える。でもスマホだと、アプリを開かないと見えない。本当にこれで大丈夫なのか、という漠然とした不安があった。

さらに困ったのは、過去の手帳に書いていた予定をどうするかということだった。手帳には、予定だけじゃなくて、その日あったことや感じたこともメモしていた。あのカフェがよかったとか、この本を読んだとか。そういう記録はGoogleカレンダーには向いていないんじゃないか。

最初の1週間は、手帳とGoogleカレンダーの両方を使っていた。予定は両方に書いて、メモは手帳だけに書く。でもそれだと結局二度手間で、余計に面倒だった。どちらかに統一したいけれど、どちらを選べばいいのか決められなかった。

ある日、友達と会う約束を手帳にだけ書いて、Googleカレンダーには入れ忘れた。当然通知も来ず、約束の時間を30分過ぎてから気づいた。友達からの「もう着いたよ?」というメッセージを見て、血の気が引いた。

これは中途半端に使っているからだ、とそのとき気づいた。どちらも使おうとすると、結局どちらも中途半端になる。本気で試すなら、一度Googleカレンダーだけに絞って使ってみないと意味がない。

そう決めて、次の日から手帳は引き出しにしまった。予定は全部、Googleカレンダーに入れることにした。不安はあったけれど、とりあえずやってみることにした。

試行錯誤しながら気づいたこと

Googleカレンダーだけを使い始めて、最初に困ったのは「色」だった。

すべての予定が同じ青色で表示されていて、カレンダーを見ても何が何だか分かりにくかった。仕事の会議も、病院の予定も、友達との約束も、全部同じ色。重要度も緊急度も区別がつかない。

ある日、カレンダーを眺めていて、予定をタップしたら編集画面が開いた。そこで「カレンダー」という項目があることに気づいた。選択肢を見ると、いくつかカレンダーが作れるようになっているらしい。

試しに「仕事」というカレンダーを新しく作ってみた。すると、そのカレンダーは緑色で表示された。なるほど、カレンダーを複数作って使い分けるのか、と理解した。

それから「プライベート」「家族」「病院・役所」というカレンダーも作った。仕事の予定は緑、プライベートは青、家族はオレンジ、病院や役所関係は赤。色分けしたら、カレンダーを見たときにぱっと分かるようになった。

でもしばらく使っていると、また別の問題が出てきた。

予定のタイトルをどう書くかで迷ったのだ。「会議」とだけ書いても、何の会議か後で見返したときに分からない。「◯◯プロジェクト定例会議 △△さんと進捗確認 資料A持参」と詳しく書くと長すぎて、カレンダー上で全文が表示されない。

試行錯誤の末、タイトルは短く本質だけにして、詳細は「説明」欄に書くことにした。タイトルは「◯◯定例」とだけ書いて、説明欄に「進捗確認。資料A持参。△△さんと次回スケジュール調整」と書く。こうすれば、カレンダーを見たときは簡潔で、詳細を知りたいときはタップすれば見られる。

通知のタイミングも工夫した。

デフォルトの1時間前通知だと、遠い場所への外出に間に合わないことがあった。逆に、自宅でのオンライン会議なら1時間も前に通知が来ても早すぎる。

それで、予定ごとに通知時間を変えることにした。外出を伴う予定は2時間前、近場なら1時間前、オンラインなら30分前。さらに、絶対に忘れたくない重要な予定には、通知を2つ設定した。前日の夜と当日の朝、みたいに。

この使い方を始めてから、予定を忘れることがほぼなくなった。

もう一つ気づいたのは、予定と予定の間の「空白時間」が見えるようになったことだった。

手帳を使っていたときは、予定だけを書いていた。10時に会議、14時に打ち合わせ、みたいに。でもGoogleカレンダーは、予定を時間軸上にブロックとして表示する。だから、10時から11時まで会議、その後11時から14時までは何もない、というのが視覚的に分かる。

この空白時間が見えることで、「この間に何ができるか」を考えるようになった。3時間も空いているなら、資料作成ができる。30分しかないなら、メールチェックだけにしよう、とか。時間の使い方が、前よりも現実的になった気がした。

手帳に予定を書いていたときは、予定だけを見て「今日は忙しい」とか「今日は暇だ」とか思っていた。でも実際は、予定と予定の間の時間の使い方で、一日の充実度は変わる。それが視覚化されたことで、時間に対する意識が変わった。

それと、過去の予定が自動で記録されていくのも、思った以上に良かった。

手帳だと、予定が終わったらそれっきりだった。振り返ろうと思っても、どこに何を書いたか探すのが面倒で、結局見返さない。でもGoogleカレンダーは、過去の予定も全部残っている。

ふとした瞬間に「あの打ち合わせ、いつだったっけ?」と思ったとき、すぐに検索できる。しかも、予定に場所やメモを書いておけば、それも一緒に見返せる。あのとき誰と会って何を話したか、自然に記録されていく感覚があった。

自分なりに工夫したポイント

使い続けるうちに、自分なりのルールができていった。

まず、予定には必ず「場所」を入れるようにした。オンライン会議なら「Zoom」とか「Teams」と書く。対面なら具体的な住所やビル名を入れる。こうしておくと、予定をタップしたときにGoogleマップとの連携が働いて、そのままナビが使える。これが本当に便利だった。

初めて行く場所の打ち合わせで、予定に住所を入れておいたら、出発時間にGoogleカレンダーが「そろそろ出発する時間です」と通知してくれた。しかも「現在地から◯◯分かかります」と移動時間まで表示された。交通状況まで加味してくれているらしく、いつもより早めに出た方がいいと教えてくれた。

それから、定期的な予定は「繰り返し」機能を使うようにした。

毎週月曜の朝会、毎月第一金曜の定例会議、みたいな予定は、一つ一つ入力していたら面倒だ。でも繰り返し設定をしておけば、一度の入力で自動的に予定が入る。最初にこの機能を知ったとき、なんでもっと早く使わなかったんだろうと思った。

ただし、繰り返し予定には注意も必要だった。一度設定すると、キャンセルや変更があったときに、その一回だけを変更するのか、それ以降全部を変更するのか、選ばなければいけない。最初は間違えて全部変更してしまい、慌てて元に戻したこともあった。

もう一つ工夫したのは、「予定じゃないこと」もカレンダーに入れたことだった。

例えば「この日は集中して資料作成したい」という日は、午前中まるごと「資料作成」という予定を入れてしまう。誰かとの約束じゃないから、本来は予定じゃない。でもカレンダーにブロックしておくと、その時間に別の予定を入れにくくなる。

これをやり始めてから、「いつの間にか予定が詰まって自分の時間がない」という状況が減った。自分のための時間も、一つの予定として確保するようになった。

色の使い方も、最終的に自分なりのルールを決めた。仕事は緑、プライベートは青、家族は赤、自分時間は黄色。黄色の予定は、読書とか散歩とか、誰とも約束していない自由時間。この黄色のブロックが週に何個あるかで、自分の余裕度が測れるようになった。

あと、予定のタイトルに絵文字を使い始めた。最初は抵抗があったけれど、試しに使ってみたら分かりやすかった。「🏥健康診断」「📞電話会議」「✈️出張」みたいに。カレンダーを眺めたとき、文字を読まなくても何の予定かパッと分かる。

それと、大事な予定の前日には「準備」という予定を入れるようにした。例えば、木曜にプレゼンがあるなら、水曜の夕方に「プレゼン準備」という30分の予定を作る。これがあるだけで、前日に慌てることが減った。予定そのものだけじゃなくて、その予定のための準備時間も予定として確保する。この考え方は、自分には合っていた。

通知も、単に時間だけじゃなくて、内容に合わせて工夫した。例えば持ち物が必要な予定なら、通知のタイミングで「印鑑持った?」と自分にリマインドできるように、説明欄に書いておく。通知が来たときに予定をタップすれば、持ち物リストが見られる。

Googleカレンダーは単なる予定表じゃなくて、自分専用のアシスタントみたいに使えると気づいた。予定を入れるだけじゃなくて、その予定にまつわる情報を全部まとめておける場所。そう考えたら、使い方の幅が広がった。

実際の場面でどう役立ったか

本当に助かったのは、母の入院が決まったときだった。

突然のことで、頭が真っ白になった。病院の予約、入院の手続き、仕事の調整、家のこと。やらなければいけないことが一気に押し寄せてきて、何から手をつければいいのか分からなくなった。

そんなとき、とりあえず思いつくことを全部Googleカレンダーに入れた。「入院説明 10/15 14:00 ◯◯病院」「洗濯物取りに行く 毎日18:00」「主治医と面談 10/20 10:00」「仕事・△△プロジェクト進捗報告 10/18 急ぎ」。

予定だけじゃなくて、やるべきタスクも時間を決めて予定として入れた。とにかく全部カレンダーに入れて、頭の中を空っぽにした。そうしたら、不思議と落ち着いた。

カレンダーを見れば、今日何をすればいいか分かる。明日は何があるかも分かる。一つ一つの予定に通知が来るから、忘れることもない。頭で覚えておかなくていいというのが、こんなに楽だとは思わなかった。

仕事でも、大きなプロジェクトを任されたときに役立った。

複数のチームと連携する案件で、会議や締切がたくさんあった。以前だったら、メモを取っても情報が散らばって、何が何だか分からなくなっていたと思う。

でもGoogleカレンダーに全部入れたら、全体像が見えた。どの週が特に忙しいか、どの日に余裕があるか。締切の前にどれくらい準備期間があるか。視覚的に把握できた。

しかも、チームメンバーにカレンダーの予定を共有できた。会議の予定を作るときに、メンバーを「ゲスト」として招待すると、相手のカレンダーにも予定が入る。全員が同じ情報を見られるから、認識のズレが減った。

「来週の会議、火曜だっけ水曜だっけ?」みたいなやり取りがなくなった。みんなカレンダーを見ればいいから。この効率の良さは、一人で使っているとき以上に実感した。

プライベートでも、友達との旅行計画を立てるときに使った。旅行の予定を作って、友達をゲストに招待する。「1日目 10:00 ◯◯駅集合」「1日目 12:00 ランチ △△レストラン」「1日目 15:00 美術館」みたいに、詳細なスケジュールを入れて共有した。

場所の情報も入れておいたから、当日は迷わなかった。予定をタップすればGoogleマップが開いて、そこまでの道順が分かる。友達も「これ便利だね」と言ってくれて、嬉しかった。

それから、習慣化したいことにも使えると気づいた。

毎日ジョギングしたいと思っても、なかなか続かなかった。でも「ジョギング 毎日6:00」という繰り返し予定を作ったら、毎朝通知が来る。これが意外と効果的だった。

予定として入っていると、やらなければいけない気持ちになる。しかも、実際にやったかどうかを後で見返せる。予定通りにできた日は達成感があるし、できなかった日は「じゃあいつやろうか」と予定を移動させる。

ジョギングに限らず、「毎週末、部屋の掃除」とか「月に一度、家計簿つける」とか、定期的にやりたいことを予定として入れるようになった。予定に入れないと忘れてしまうことも、カレンダーが思い出させてくれる。

一番良かったのは、心の余裕ができたことだった。

以前は常に「何か忘れてないかな」という不安があった。頭の中で予定を反芻して、大丈夫かなと何度も確認していた。でも全部カレンダーに入れるようになってから、その不安がなくなった。

忘れていても、カレンダーが教えてくれる。だから、今やっていることに集中できる。頭のメモリが他のことに使えるようになった感覚があった。

続けてみて変化したこと

半年ほど使い続けて、自分の時間の使い方が変わっていることに気づいた。

以前は、目の前の予定をこなすだけで精一杯だった。今日これ、明日あれ、と追われるように過ごしていた。でもGoogleカレンダーで全体を見られるようになってから、一週間単位、一ヶ月単位で予定を考えるようになった。

来月のこの週は予定が詰まっているから、今のうちに準備しておこう。再来週は余裕がありそうだから、この時期に新しいことに挑戦してみよう。そんなふうに、先を見て動けるようになった。

色分けしたカレンダーを眺めていると、自分が何に時間を使っているかも見えてきた。

ある月、カレンダーが緑色ばかりだった。仕事の予定で埋め尽くされている。青色のプライベートの予定がほとんどない。これを見て、バランスが悪いなと感じた。

それから意識的に、青色の予定を増やすようにした。友達とランチする、映画を見る、一人でカフェに行く。小さな予定でもいいから、プライベートの時間を確保する。カレンダーに色のバランスが欲しいと思うようになった。

黄色の「自分時間」も、定期的に入れるようにした。週に一度は、何も予定のない自由な時間を作る。その時間は何をしてもいいし、何もしなくてもいい。ただ、その時間を守ることだけを決めた。

こうして予定を視覚化することで、自分の生活のバランスを客観的に見られるようになった。忙しすぎるときは予定を減らそうと思えるし、暇すぎるときは何か新しいことを始めようと思える。

人間関係にも変化があった。

友達と約束するとき、以前は「じゃあまた連絡するね」と言って、結局連絡しないまま数ヶ月経つことがあった。でも今は、その場でカレンダーを開いて「じゃあ来月のこの日は?」と具体的な日程を決められる。

しかも予定を共有できるから、相手も予定を確認できる。ドタキャンや忘れることが減って、約束が確実に実行されるようになった。そうすると、関係も深まる気がした。

家族との予定も共有するようにした。夫と同じカレンダーを見られるようにして、お互いの予定が分かるようにした。「今週の土曜、空いてる?」「カレンダー見て」というやり取りが当たり前になった。

最初、夫は「監視されてる気分にならない?」と言っていた。でも使ってみたら、便利だと納得してくれた。お互いの予定が分かるから、調整しやすい。「この日は帰りが遅いから夕飯いらない」とか、いちいち口で言わなくても予定を見れば分かる。

何より、予定管理そのものが苦痛じゃなくなった。

手帳を使っていたときは、予定を書くことが義務だった。書かなきゃいけない、ちゃんと管理しなきゃいけない、という強迫観念があった。でもGoogleカレンダーは、そういう感覚がない。

予定を入れるのは一瞬だし、通知が来るから安心だし、過去の記録も自動で残る。何も頑張らなくても、自然に予定が管理できている感覚がある。

それに、スマホがあればどこでも見られるし、入力できる。電車の中でも、カフェでも、ふと思い出したときにその場で予定を入れられる。わざわざ手帳を取り出す必要がない。

この手軽さが、続けられる理由だと思った。

予定管理は特別なことじゃなくて、生活の一部になった。朝起きて、今日の予定を確認する。移動中に来週の予定を見る。新しい予定が入ったらその場で登録する。呼吸するように、自然にやっている。

そして気づいたのは、予定を管理できると、心に余裕ができるということだった。

やるべきことが明確になって、優先順位がつけられる。何を今やって、何を後回しにしていいか、判断できる。全部を頭の中で覚えておかなくていいから、目の前のことに集中できる。

以前は常に何かに追われている感じがあったけれど、今は自分で時間をコントロールしている感覚がある。予定に振り回されるんじゃなくて、予定を使いこなしている感じ。この感覚の違いは大きかった。

まとめ

今、Googleカレンダーは私の生活に欠かせないものになっている。

最初は「また新しいツールか」と半信半疑だった。手帳でもダメだったのに、デジタルにしたからって何が変わるんだろう、と思っていた。でも実際に使い続けてみて、問題はツールじゃなかったと気づいた。

予定管理が苦痛だったのは、自分に合った方法を見つけていなかったからだった。手帳が悪いわけじゃない。ただ、私には合っていなかっただけ。

Googleカレンダーが私に合っていたのは、いくつか理由がある。通知が自動で来ること。スマホがあればどこでも使えること。過去の記録が自動で残ること。予定を共有できること。視覚的に時間の使い方が分かること。

でも一番大きいのは、予定を管理することが「義務」から「サポート」に変わったことだと思う。

やらなきゃいけないことじゃなくて、自分を助けてくれるもの。忘れないように、焦らないように、余裕を持って過ごせるように。そばにいてくれるアシスタントみたいな存在。

色分けしたり、通知時間を工夫したり、自分の使い方を見つける過程も楽しかった。最初は戸惑ったけれど、試行錯誤しながら自分なりのルールを作っていく。その過程で、自分の生活のリズムや大切にしたいことが見えてきた。

予定管理は、単に予定を忘れないためのものじゃなかった。自分の時間をどう使いたいか、何を大切にしたいか、それを考えるためのツールだった。

カレンダーを見ながら、「来週はもう少し余裕が欲しいな」とか「今月はプライベートの時間が少なかったな」とか、自分の生活を振り返るようになった。そして、じゃあどうしようかと考えて、予定を調整する。

今、カレンダーを開くのが苦痛じゃない。むしろ、開くのが楽しみになっている。今週はどんな一週間になるだろう、来月はどんな予定が入るだろう、と考えるのがワクワクする。

予定がたくさん入っている日も、真っ白で何もない日も、どちらもいい。大事なのは、自分でそれを選んでいるという感覚があること。予定に追われるんじゃなくて、予定をデザインしている感じ。

Googleカレンダーを使い始めて、私の毎日は確実に変わった。劇的な変化じゃないけれど、小さな安心感と余裕が積み重なって、生活が少しだけ楽になった。

予定管理が苦痛だった私が、今では予定を立てることを楽しんでいる。この変化は、自分でも驚いている。そして、もっと早く出会いたかったと、少しだけ思っている。

動画編集なんてしたことのなかった私が、気づいたら毎週のように映像をつくるようになっていた話

触れたきっかけと思ったこと

友人の結婚式の二次会で流す映像を頼まれたのが始まりだった。「スマホで撮った写真と動画をいい感じにまとめてほしい」と軽く頼まれたものの、私は今まで動画編集なんてしたことがなかった。パソコンにインストールするような本格的なソフトは高額だし、操作も難しそうで敷居が高い。かといって、大切な友人の晴れ舞台で使う映像を適当なもので済ませるわけにもいかない。

スマホで何かいいアプリがないかと探していたとき、妹が「私これ使ってるよ」と教えてくれたのが、無料で使える動画編集のアプリだった。妹は趣味でダンスをしていて、練習動画をよくSNSに投稿している。その動画がいつも見やすくて、テロップやエフェクトもついていて「どうやって作ってるんだろう」と思っていたのだけれど、まさかスマホアプリだけで完結していたとは驚きだった。

最初は「無料だし、たぶん機能も限られているんだろうな」と正直あまり期待していなかった。これまでも無料の写真加工アプリなどを使って、透かしのロゴが入ったり、保存するのに課金が必要だったりという経験を何度もしていたから。でも妹が実際に作った動画を見せてもらうと、本当にクオリティが高くて、これが無料でできるのかと信じられない気持ちになった。BGMもちゃんと入っているし、場面転換もスムーズで、とても素人が作ったとは思えない仕上がりだった。

「まあ、とりあえずダウンロードだけしてみるか」という軽い気持ちでインストールしてみた。結婚式まであと三週間。時間はあまりなかったけれど、何もしないよりはマシだろうと考えていた。このときはまだ、自分がこんなにも動画編集にハマることになるとは思ってもいなかった。

最初に戸惑った体験

アプリを開いて最初に困ったのは、あまりにも機能が多すぎることだった。無料アプリだから機能が少ないだろうと思っていたのに、画面にはたくさんのメニューが並んでいて、何から手をつければいいのか全くわからなかった。「新しいプロジェクト」というボタンを押して、とりあえず友人から預かっていた写真と動画を読み込んでみた。

タイムラインに素材が並んだものの、そこからが問題だった。素材をタップすると編集メニューが出てくるのだけれど、「トランジション」「アニメーション」「エフェクト」「フィルター」など、専門用語のようなものがずらりと並んでいる。動画編集の知識がゼロの私には、それぞれが何を意味するのかさっぱりわからなかった。試しに「エフェクト」を押してみると、さらに何十種類ものエフェクトが表示されて、もう頭が混乱してしまった。

最初の一時間は、ただ適当にいろいろな機能を触っては「あ、これは違う」と戻る作業の繰り返しだった。写真を切り替えるときにふわっとした効果を入れたいのに、どこをどう操作すればいいのかわからない。音楽を入れようとしたら、動画の音声と重なって変な感じになってしまった。テロップを入れたいのに、テキストの大きさや位置を調整する方法がわからず、画面の端っこに小さな文字が表示されるだけで、全然思い通りにならなかった。

妹に「わからないことがあったら聞いて」と言われていたけれど、何がわからないのかすらわからない状態で、どう質問していいかもわからなかった。結局その日は二時間ほど格闘して、たった十秒程度の映像を作っただけで終わってしまった。しかもその十秒も、素材をただ並べただけのもので、とても人に見せられるようなクオリティではなかった。

このとき初めて、「動画編集って簡単そうに見えて、実は奥が深いんだな」と実感した。妹が作っていた動画も、きっと何度も試行錯誤して作り上げたものなんだろう。無料だからといって甘く見ていた自分を少し反省した。でも同時に、これだけ機能があるということは、使いこなせればかなりいいものが作れるはずだという期待も湧いてきた。

試行錯誤しながら気づいたこと

翌日、気持ちを切り替えてもう一度挑戦してみることにした。前日の失敗を踏まえて、今度は一つ一つの機能をじっくり確認しながら進めることにした。まずはシンプルに、写真を順番に並べて、それぞれの表示時間を調整するところから始めた。素材をタップして長押しすると、表示時間を伸ばしたり縮めたりできることに気づいた。これだけでも、写真の切り替わるリズムが全然違って見えることに驚いた。

次に挑戦したのが、写真と写真の間の切り替え効果だった。前日は「トランジション」という言葉の意味がわからなくて避けていたのだけれど、実際に触ってみると、これが場面転換の効果のことだとわかった。何十種類もあるトランジションを一つずつ試してみると、スライドするもの、フェードするもの、回転するものなど、それぞれ全く雰囲気が違った。結婚式の映像には派手すぎるものは合わないだろうと考え、シンプルなフェードやディゾルブといった効果を中心に選んでいった。

音楽を入れる作業も、前日よりはスムーズにできた。アプリ内に用意されている音源がたくさんあって、ジャンル別に分類されていることに気づいた。結婚式向けの優しいピアノ曲やアコースティックギターの曲を試しに当ててみると、それだけで映像の雰囲気がぐっと良くなった。ただ、音楽の長さと映像の長さが合わなくて、音楽が途中で切れてしまう問題が発生した。

ここで悩んだのだけれど、いろいろ調べてみると、音楽の長さに合わせて映像の長さを調整する方法と、音楽自体をカットして映像の長さに合わせる方法の両方があることがわかった。私は後者を選んで、音楽の盛り上がる部分をうまく使えるように、曲の前半と後半を組み合わせてみた。これが意外とうまくいって、自然な流れができた。

テロップについても、少しずつコツがわかってきた。テキストを入れるときは、背景の色によって文字が見えにくくなることがあるので、縁取りや影をつける機能を使うといい。フォントの種類も豊富で、結婚式らしい上品なものから、ポップで楽しいものまで選べた。ただ、あまり凝りすぎると逆に読みにくくなるので、シンプルなデザインを心がけた。

この段階で気づいたのは、動画編集には「引き算」の美学があるということだった。最初はあれもこれもと盛り込みたくなるのだけれど、実際に見てみると、情報が多すぎて逆にわかりにくくなってしまう。本当に必要な要素だけを残して、余計なものは削る。この判断ができるようになってから、作品のクオリティが一気に上がった気がした。

自分なりに工夫したポイント

結婚式の映像づくりで一番悩んだのが、ストーリーの構成だった。ただ写真を時系列に並べるだけでは面白くないし、かといって凝りすぎても見ている人が疲れてしまう。友人カップルの出会いから結婚に至るまでのストーリーを、どう映像で表現するか。何日も考えて、最終的に「章立て」の構成にすることにした。

「出会い編」「交際編」「プロポーズ編」「これから編」という四つの章に分けて、それぞれの章の最初にタイトル画面を入れることにした。タイトル画面には、テキストアニメーションという機能を使って、文字がふわっと現れる演出を加えた。この章立て構成のおかげで、全体の流れがわかりやすくなったし、メリハリもついた。

もう一つ工夫したのが、音楽の使い分けだった。最初は一曲を通して使うつもりだったのだけれど、それだと単調になってしまう。そこで、章ごとに雰囲気の違う曲を使うことにした。出会い編は軽やかなピアノ曲、交際編は明るいアコースティック、プロポーズ編は感動的なストリングス、そして最後のこれから編は希望に満ちたアップテンポな曲。それぞれの曲の切り替わりも、場面転換とうまく合わせることで、自然な流れを作ることができた。

写真の見せ方にもこだわった。ただ静止画を表示するだけではなく、ゆっくりとズームインしたりズームアウトしたりする動きをつけることで、動画らしさが出ることに気づいた。この機能は「アニメーション」のメニューにあって、様々な動きのパターンが用意されていた。写真の中で特に見せたい部分に視線を誘導するような動きをつけると、よりドラマチックな印象になった。

色味の調整も重要だった。友人から預かった写真は、撮影した時期や場所がバラバラで、色合いが統一されていなかった。明るすぎるものもあれば、暗めのものもある。これをそのまま並べると、映像全体のクオリティが下がってしまう。そこで、フィルター機能を使って全体的に統一感のある色味に調整した。結婚式という華やかなシーンに合わせて、少し明るめで温かみのあるトーンに統一することで、プロが作ったような仕上がりになった気がした。

実際の場面でどう役立ったか(旅行・日常など)

結婚式の二次会で映像を流したとき、予想以上の反応があった。会場のみんなが真剣に見てくれて、感動的な場面では拍手も起こった。新郎新婦の二人も涙を流して喜んでくれて、「まるでプロが作ったみたい」と言ってもらえた。このときの達成感は今でも忘れられない。

この経験がきっかけで、自分の日常でも動画を作るようになった。最初は家族旅行の記録から始めた。両親と妹と四人で行った沖縄旅行。今までは写真を撮るだけで満足していたのだけれど、動画でまとめてみたらどうだろうと思った。海の映像、食事の様子、観光地での写真、そういったものを組み合わせて、三分程度の旅行記録映像を作ってみた。

旅の思い出を映像にすることで、その場の空気感まで残せることに気づいた。波の音、街の喧騒、家族の笑い声。静止画では伝わらない臨場感が、動画には確実にある。編集しながら旅を振り返ることで、その時の感情まで鮮明に思い出せた。完成した映像を家族で見たとき、母が「これ、すごくいいね。毎年作ってほしい」と言ってくれた。

その後、友人の誕生日サプライズ用の映像を頼まれることもあった。友人グループのメンバーから、それぞれお祝いメッセージの動画を集めて、一本にまとめる作業だった。人数が多かったので編集は大変だったけれど、メッセージの順番を工夫したり、間に思い出の写真を挟んだりして、ストーリー性のある構成にした。誕生日当日、サプライズで見せたときの友人の驚いた顔と嬉しそうな表情は、何時間もかけて編集した甲斐があったと思えるものだった。

日常的にも使うようになった。ペットの猫の成長記録を月ごとにまとめたり、料理を作る過程を早送り動画にしてみたり。SNSに投稿すると、友達から「いつもの写真投稿より見やすい」「動画のクオリティ高いね」といったコメントがもらえるようになった。特に料理動画は反応がよくて、レシピを聞かれることも増えた。

仕事でも役立つ場面があった。会社の部署で新人歓迎会を企画したとき、チームの紹介動画を作ることになった。メンバー一人一人の写真と簡単なプロフィール、そして歓迎メッセージを組み合わせた短い映像。これを入社初日の新人に見せたところ、「温かい雰囲気が伝わってきて嬉しかった」と言ってもらえた。上司からも「次回のプレゼン資料も、動画を取り入れてみないか」と提案され、新しい仕事のチャンスにもつながった。

続けてみて変化したこと

動画編集を続けていくうちに、自分の中で大きな変化が起きていることに気づいた。まず、日常の風景を見る目が変わった。以前は何気なく通り過ぎていた景色も、「これ、動画にしたら面白いかも」と考えるようになった。夕暮れ時の空、雨上がりの水たまり、カフェの窓から見える街並み。そういった何気ない瞬間に、映像的な美しさを見出せるようになった。

撮影の仕方も意識するようになった。以前は適当にシャッターを切っていたけれど、今は「後で編集することを前提に」撮るようになった。同じ場所を複数のアングルから撮ったり、動画と静止画を組み合わせて撮ったり。少し長めに動画を回しておいて、後から必要な部分だけを切り取る。こういった撮影技術も、編集を通して自然と身についていった。

音楽の聴き方も変わった。映像に合う曲はどういうものか、この曲のどの部分を使えば効果的か、そんなことを考えながら音楽を聴くようになった。カフェで流れているBGMを聞いて、「これ、旅行動画に合いそうだな」と思ったり、ドラマのサウンドトラックを聞いて、「このアレンジを参考にしてみよう」と考えたり。音楽と映像の関係性について、以前よりもずっと深く考えるようになった。

周りの人との関わりも増えた。動画を作っていることを知った友人たちから、いろいろな相談や依頼が来るようになった。「子供の運動会の映像をまとめてほしい」「結婚記念日に夫へのサプライズ動画を作りたい」「ペットの思い出動画を作りたい」。一つ一つの依頼に応えることで、誰かの大切な思い出づくりに関われることが嬉しかった。

自分の中に、新しい表現手段ができたことも大きな変化だった。以前は言葉で伝えることが苦手で、感謝の気持ちや大切に思っている気持ちをうまく表現できないことが多かった。でも、動画という形なら、自分の想いを伝えられる気がした。母の日に感謝の映像を作ったとき、面と向かっては恥ずかしくて言えない言葉も、映像という形なら素直に表現できた。母は何度も繰り返し見てくれて、「こんなに嬉しいプレゼントはない」と言ってくれた。

技術的にも確実に成長していることを実感できた。最初は一本の動画を作るのに何時間もかかっていたけれど、今では効率よく編集できるようになった。どの機能をどう使えば自分のイメージに近づけられるか、経験を重ねることで直感的にわかるようになってきた。新しいテクニックも、オンラインのチュートリアル動画などを見ながら少しずつ習得している。

最近では、単に編集技術だけでなく、ストーリーテリングの重要性も理解できるようになってきた。どんなにきれいな映像でも、どんなに高度な編集技術を使っても、そこに伝えたいメッセージや感情がなければ、見る人の心には響かない。逆に、シンプルな編集でも、ストーリーがしっかりしていれば人を感動させられる。これは動画編集に限らず、人生のいろいろな場面で応用できる考え方だと思った。

まとめ

友人の結婚式映像作りから始まった動画編集の旅は、予想もしなかった方向に私の日常を変えていった。最初は「無料のアプリでどこまでできるんだろう」という半信半疑な気持ちだったけれど、実際に使い込んでみると、その可能性の広さに驚かされ続けた。機能の豊富さに最初は戸惑ったものの、一つ一つ丁寧に向き合うことで、自分なりの使い方が見えてきた。

動画編集を通して気づいたのは、大切なのは高価な機材や難しいソフトではなく、何を伝えたいかという想いと、それを形にしようとする工夫だということ。スマホ一つあれば、誰かを感動させる映像は作れる。技術的な完璧さよりも、そこに込められた気持ちのほうが、見る人の心に届く。

今では、何か特別な出来事があるたびに「これを映像に残したい」と自然に考えるようになった。旅行や誕生日といったイベントだけでなく、何気ない日常の一コマも、後から振り返ったときに大切な思い出になる。そういった瞬間を映像として残せることは、人生を豊かにしてくれる素敵なツールだと思う。

動画編集は、思っていたよりずっと奥が深くて、でも思っていたよりずっと身近なものだった。専門的な知識がなくても、少しずつ学びながら楽しめる。失敗しても何度でもやり直せるし、試行錯誤すること自体が面白い。これからも、日常の中で心に残った瞬間を映像に残していきたいし、大切な人たちの記念日には、想いを込めた映像を贈っていきたい。

気づけば、動画編集は私の生活の一部になっていた。毎週末、何かしら編集作業をしている自分がいる。それは義務ではなく、純粋に楽しいからやっている。新しい表現方法を見つける喜び、誰かに喜んでもらえる嬉しさ、自分の成長を実感できる達成感。動画編集は、そのすべてを与えてくれた。あの日、結婚式の映像制作を引き受けて本当によかったと、心から思っている。

メルカリ初出品のドタバタ体験談:眠っていたバッグが旅立つまで

触れたきっかけと思ったこと

クローゼットの奥に眠っていたバッグを引っ張り出したのは、引っ越しの準備をしていた時だった。3年前に買ったけれど、結局2、3回しか使わなかったトートバッグ。当時は一目惚れして購入したものの、自分の生活スタイルに合わなかったのか、いつの間にか使わなくなっていた。

捨てるにはもったいない。でもこのまま持っていても使わない。そんな葛藤を抱えながら、ふと思い出したのが友人の言葉だった。「メルカリで売ればいいじゃん」と、彼女は当たり前のように言っていた。その友人は頻繁に不用品を出品しているらしく、「結構いい値段で売れるよ」なんて話していたのを思い出した。

正直なところ、私はフリマアプリというものに対して少し腰が引けていた。なんとなく面倒くさそうだし、知らない人とやり取りするのも不安だった。写真を撮って、説明文を書いて、値段を決めて...想像するだけで手間がかかりそうだ。それに、もし売れたとしても梱包や発送の手続きが複雑そうで、失敗したらどうしようという不安もあった。

でも、このバッグは定価で15,000円もしたものだ。ほとんど使っていないから状態も良好だし、誰か必要としている人に使ってもらえたら嬉しいという気持ちもあった。それに、引っ越しを機に物を減らしたいという思いも強かった。荷物が少なければ少ないほど、引っ越し費用も安くなるし、新しい部屋もすっきりする。

結局、「ダメ元でやってみるか」という軽い気持ちでアプリをダウンロードした。週末の午後、特に予定もなかったので、挑戦するには良いタイミングだと思った。画面を開いてみると、思った以上にシンプルな作りで、なんとなく「これなら自分にもできるかも」という気持ちになった。とはいえ、実際に出品する段階になると、予想もしていなかった壁がいくつも立ちはだかることになるのだが、その時の私はまだそれを知らなかった。

最初に戸惑った体験

出品ボタンを押したところまでは良かったのだが、最初の関門は写真撮影だった。スマホで適当に撮ればいいだろうと軽く考えていたのが大間違いだった。

まず、どこで撮ればいいのか分からない。床に置いて撮ってみたら、背景に生活感が出すぎてしまった。掃除機のコードが写り込んでいたり、カーペットのシミが目立ったり。これじゃあ売れるものも売れないだろうと思って撮り直し。今度はテーブルの上に置いてみたが、照明の関係で影ができて暗い印象になってしまった。

白い壁を背景にしてみたり、ベッドの上に置いてみたり、何度も場所を変えて撮影した。気づけば30枚以上撮っていた。でも、どの写真を見ても「なんか違う」という感じがする。他の人の出品写真を見てみると、みんな綺麗に撮っているのに、自分の写真は素人感が満載だった。

写真だけで1時間近く悩んだ後、ようやく「まあこれならいいか」という妥協点を見つけた。自然光の入る窓際で、白いシーツを背景にして撮影したものが一番マシに見えた。でも本当にこれで大丈夫なのか、不安は残ったままだった。

次に困ったのが商品説明の文章だった。何を書けばいいのか、どこまで詳しく書けばいいのか、全く分からない。「トートバッグです」だけじゃ素っ気なさすぎるし、かといって長々と書くのも大変だ。

他の人の出品を参考にしようと思って見てみたら、ブランド名、サイズ、色、素材、購入時期、使用頻度、傷や汚れの有無など、かなり細かく書いている人が多かった。「こんなに書かなきゃいけないのか...」と思いながら、バッグを手に取ってメジャーで測り始めた。

ところが、サイズを測るのもまた難しい。縦、横、マチの幅...どこからどこまでを測ればいいのか迷った。持ち手の長さも測った方がいいのかな、と思って測ってみたり。素材については、タグを見てもよく分からないカタカナが並んでいて、それをそのまま書き写した。

説明文を書いていて一番悩んだのが、傷や汚れについてだった。よく見ると、角の部分にほんの少しスレがあった。これって書くべきなのか、それとも気にしなくていいレベルなのか。正直に書いて売れにくくなるのも嫌だし、でも書かないで後からクレームが来るのも怖い。結局、「角に若干のスレがありますが、全体的に良好な状態です」と正直に書くことにした。

最後に悩んだのが値段設定だった。これが一番難しかった。高すぎたら売れないし、安すぎたら損した気分になる。同じようなバッグを検索してみたら、価格帯がバラバラで全く参考にならなかった。3,000円で出している人もいれば、8,000円で出している人もいる。状態や使用年数によって違うんだろうけど、自分のバッグが相場的にどのくらいなのか判断がつかなかった。

試行錯誤しながら気づいたこと

悩んだ末に、7,000円で出品することにした。定価の半額より少し下くらいなら、まあ妥当かなという感覚だった。でも、出品ボタンを押した瞬間から、不安で仕方なかった。本当にこれで合っているのか、誰か見てくれるのか、そもそも売れるのか。

出品してから数時間、スマホを何度も確認した。閲覧数というのが表示されていて、少しずつ数字が増えていくのが見えた。誰かが見てくれている、ということだけは分かったが、「いいね」もつかないし、もちろん購入もされない。

その日の夜、友人に「メルカリ初めて出品してみたんだけど、全然反応ない」とメッセージを送った。すると彼女から「写真見せて」と返信が来た。出品ページのスクリーンショットを送ると、「写真暗くない?あと説明文が堅苦しいかも」というアドバイスをもらった。

言われてみれば、確かに写真は全体的に暗めだった。それに説明文も、必要な情報を詰め込もうとしすぎて、事務的な印象になっていた。友人曰く、「もっと普通に、使ってみた感想とか、どういうシーンで使ってたかとか書いた方がイメージしやすいよ」とのこと。

翌日、思い切って写真を撮り直した。今度は午前中の明るい時間に、ベランダに出て撮影した。自然光の下で撮ると、色もハッキリ見えるし、全体的に明るい印象になった。バッグの中も撮影して、収納力が分かるようにした。

説明文も書き直した。「通勤用に購入しましたが、私には少し大きすぎて使いこなせませんでした。A4サイズの書類が余裕で入るので、お仕事用や学校用に便利だと思います」というように、実際の使用経験を交えた文章にした。堅苦しさは減ったけど、必要な情報はちゃんと入っているはず。

値段も少し下げて、6,500円にしてみた。きりが悪い数字だけど、7,000円よりは買いやすい印象になるかなと思った。

編集して再出品した後、明らかに反応が変わった。数時間後には「いいね」が3つついた。閲覧数も前より増えるペースが速くなった気がする。でもまだ購入はされない。

そんな状態が2日ほど続いた頃、初めてコメントが来た。「購入を検討しているのですが、お値下げは可能でしょうか?」という内容だった。

正直、どう返信すればいいのか分からなかった。値下げに応じるべきなのか、断っても大丈夫なのか。友人に相談すると、「いくらなら売ってもいいか考えて、それを伝えればいい。無理に応じる必要はないよ」と言われた。

送料や手数料を考えると、あまり下げすぎても手元に残る金額が少なくなってしまう。計算してみて、6,000円なら許容範囲だと思った。「6,000円でしたらお値下げ可能です。ご検討ください」と返信した。

自分なりに工夫したポイント

値下げ交渉をしてきた人からは結局返信がなく、購入されなかった。少しがっかりしたけれど、これも勉強だと思うことにした。そこからまた数日が経ち、閲覧数は増えるものの売れる気配はなかった。

ある晩、何気なく他の人の出品を見ていて、ハッシュタグを使っている人が多いことに気づいた。商品説明の最後に「#トートバッグ #通勤バッグ #A4サイズ」みたいな感じで書いている。これって検索されやすくなるのかな、と思って自分の出品にも追加してみた。

それから、出品時間も意識するようになった。夜の時間帯に出品したり更新したりすると、比較的見てもらえることが分かった。みんなが家でスマホを見ている時間なんだろう。

写真も、何度か差し替えた。最初に載せていた写真よりも、バッグの使用イメージが湧きやすい角度のものに変えたり、中身の収納部分が見える写真を1枚目に持ってきたり。小さな変更だけど、こういう細かい工夫が大事なのかもしれないと思うようになった。

説明文にも少しずつ手を加えた。「雨の日も気にせず使える素材です」という情報を追加したり、「ポケットが3つあって、スマホや定期入れを分けて入れられます」という具体的な使い勝手を書いたり。自分が買う立場だったら知りたいことを想像しながら書いた。

それでも1週間が過ぎても売れなかった。「いいね」は10個以上ついているのに、購入には至らない。もしかして値段がやっぱり高いのかな、と迷った。でも、これ以上下げると手数料と送料を引いたら、ほとんど手元に残らなくなってしまう。

悩んだ末に、期間限定で値下げしてみることにした。「週末限定5,500円」というように、説明文の最初に大きく書いた。期間を区切ることで、「今買わないと」という気持ちになってもらえるかもしれないと思った。

金曜日の夜に値段を変更した。土曜日の朝、スマホを見ると通知が来ていた。「購入されました」という表示を見た時は、思わず「えっ!」と声が出た。本当に売れた。誰かが買ってくれた。

嬉しい気持ちと同時に、次は発送しなければならないという緊張が襲ってきた。梱包ってどうすればいいんだろう。コンビニから送れるって聞いたけど、具体的にどうするのか分からない。

実際の場面でどう役立ったか

購入された喜びもつかの間、今度は梱包という新たな課題に直面した。説明には「らくらくメルカリ便」を使うことにしていたが、正直どんな梱包をすればいいのか全く分かっていなかった。

家にあった紙袋に入れて送ればいいかな、と最初は考えた。でもネットで調べてみると、雨に濡れたら大変なことになると書いてあった。ビニール袋に入れてから紙袋に入れるべきらしい。それに、バッグが潰れないように何か詰め物をした方がいいという情報も見つけた。

急いで100円ショップに行って、大きめのビニール袋と緩衝材(プチプチ)を買ってきた。家に帰って、まずバッグをビニール袋に入れた。その後、バッグの形が崩れないように、中に新聞紙を丸めて詰めた。緩衝材で全体を包んで、さらに紙袋に入れた。

でも紙袋だけだとやっぱり不安だったので、透明なビニール袋でもう一度全体を覆った。二重三重の梱包になってしまったけれど、初めての発送だし、慎重すぎるくらいでちょうどいいだろうと自分に言い聞かせた。

梱包が終わったのが夜の9時過ぎ。でもその日のうちに発送したかったので、近くのコンビニに持っていった。レジで「メルカリの発送をお願いします」と言うと、店員さんが慣れた様子で対応してくれた。二次元コードを見せて、機械から出てきた伝票を貼り付けて、荷物を預ける。思っていたより簡単だった。

家に帰ってから、購入者にメッセージを送った。「本日発送いたしました。お手元に届くまで今しばらくお待ちください」という定型的な内容だったけれど、自分なりに丁寧な言葉を選んだつもりだった。

翌日、配送状況を確認すると、もう配達中になっていた。早い。翌々日には「配達完了」の表示が出た。あとは購入者が受け取って、評価をしてくれるのを待つだけだ。

でも、評価がなかなか来なかった。1日経っても、2日経っても、何も連絡がない。もしかして何か問題があったのかな、商品に満足してもらえなかったのかな、と不安になった。説明文に書き漏らしていたことがあったのだろうか。梱包が雑だったのだろうか。

3日目の夜、ようやく通知が来た。「評価されました」という表示。恐る恐る開いてみると、「良い」評価で、コメントには「丁寧に梱包していただき、ありがとうございました。大切に使わせていただきます」と書かれていた。

ホッとした。本当に良かった。思わず画面を見ながらニヤニヤしてしまった。自分が出品したものが、誰かの手に渡って、これから使ってもらえる。そう思うと、ただ捨てたりリサイクルショップに持っていったりするより、ずっと良かったと感じた。

こちらも評価をしなければならない。「スムーズなお取引をありがとうございました」と書いて、「良い」評価を送った。これで初めての出品から発送、取引完了までの一連の流れが終わった。

売上金を見ると、手数料と送料を引いて、約4,000円が手元に残った。定価の15,000円から考えると少なく感じるかもしれないけれど、使わずにずっと置いておくだけだったものが、誰かに使ってもらえて、しかもお金にもなった。この経験は、金額以上の価値があったと思う。

続けてみて変化したこと

最初の出品が無事に終わってから、不思議と気持ちが軽くなった。「自分にもできた」という小さな成功体験が、自信につながったのかもしれない。それからクローゼットを見る目が変わった。

引っ越しの準備を進めながら、「これも誰か使ってくれる人がいるかもしれない」と思うようになった。着なくなった服、読まなくなった本、使っていない食器。今まで「いつか使うかも」と思って取っておいたものたちが、実は誰かにとっては必要なものかもしれない。

2回目の出品は、最初よりもスムーズだった。写真の撮り方も分かってきたし、説明文も何を書けばいいか理解できた。値段設定も、前回の経験から相場感が少し掴めていた。

ただ、2回目だからといって全てが順調だったわけではない。今度は購入者とのやり取りで少し戸惑うことがあった。商品について細かく質問をしてくる人がいて、どこまで答えればいいのか迷った。サイズについて聞かれたので測り直したり、色味について聞かれたので写真を追加で撮って送ったり。

でも、そういうやり取りも悪くないと思えた。真剣に購入を検討してくれているということだし、質問に丁寧に答えることで、お互いに納得した取引ができる。前回の経験があったから、焦らず対応できた。

3回目、4回目と出品を重ねるうちに、コツのようなものが分かってきた。どんな時間帯に出品すると見てもらいやすいか、どんな言葉を使うと反応が良いか、どのくらいの値段設定が適切か。小さな気づきの積み重ねだった。

引っ越し前に、結局10点ほどの物を出品した。全部が売れたわけではなかったけれど、7割くらいは買い手が見つかった。売上金の合計は3万円を超えた。この金額で引っ越しの費用の一部を賄えたし、何より荷物が大幅に減ったことが嬉しかった。

出品作業をしていて気づいたのは、物を手放す時の気持ちが変わったことだった。以前は「捨てる」という行為に罪悪感があった。まだ使えるものを捨てるのは勿体ない、でも自分は使わない。そのジレンマがあって、結局ずっと持ち続けてしまっていた。

でも、出品するという選択肢を知ってから、「手放す=捨てる」ではなくなった。次に使ってくれる人に譲る、という感覚になった。購入者からのメッセージで「探していたものでした」「大切に使います」という言葉をもらうと、手放して良かったと心から思えた。

引っ越しが終わって新しい部屋で暮らし始めてからも、時々出品を続けている。以前ほど頻繁ではないけれど、「もう使わないな」と思ったものがあれば、捨てる前に出品を検討するようになった。

最近では、買い物をする時の意識も変わってきた。「これ、もし使わなくなったら売れるかな」と考えるようになった。すぐに流行が変わるようなものより、長く使える定番のものを選ぶようになったし、状態を綺麗に保とうという意識も生まれた。いつか手放す時のことまで考えて物を買うというのは、最初は予想もしていなかった変化だった。

友人には「メルカリ沼にハマったね」と笑われたけれど、確かにそうかもしれない。でもこれは悪い意味での沼ではなく、むしろ自分の生活が整理されて、物との付き合い方が健全になった感じがする。

まとめ

クローゼットの奥で眠っていたバッグを出品しようと思ったあの日から、数ヶ月が経った。最初は写真の撮り方も分からず、説明文に何を書けばいいか迷い、値段設定に悩み、梱包の仕方に戸惑った。一つ一つが初めてのことで、不安だらけだった。

でも、試行錯誤しながら経験を重ねていくうちに、少しずつコツが分かってきた。完璧にできるようになったわけではないし、今でも迷うことはある。それでも、最初に感じていた「面倒くさそう」「難しそう」という印象は、実際にやってみることで随分と変わった。

一番大きな変化は、物との向き合い方が変わったことだと思う。使わないものを「いつか使うかも」と溜め込むのではなく、必要としている誰かに譲るという選択肢を持てるようになった。手放すことへの罪悪感が減り、部屋も心も軽くなった。

購入者とのやり取りも、最初は緊張したけれど、今では楽しみの一つになっている。「探していました」「ありがとうございます」というメッセージをもらうと、単なる売買以上の温かさを感じる。画面の向こうに、物を大切に使ってくれる人がいると思うと、丁寧に梱包しようという気持ちにもなる。

金銭的なメリットも確かにある。使わない物が現金に変わるのは嬉しいし、そのお金で新しく必要な物を買ったり、貯金に回したりできる。でも、それ以上に「自分にもできた」という小さな達成感や、物を循環させている実感の方が、私にとっては価値があった。

初出品のあのドタバタは、今思い返すと笑える思い出になっている。30枚以上撮った写真、何度も書き直した説明文、深夜のコンビニで慌てて発送した日。全てが新鮮で、全てが学びだった。

これからも、自分のペースで続けていこうと思う。無理に出品数を増やす必要はないし、売れなかったら売れないでいい。ただ、使わなくなったものがあった時に、「誰かに使ってもらえるかもしれない」という選択肢を持っている。それだけで、暮らしが少し豊かになった気がする。

あのバッグは今、どこかで誰かに使われているのだろうか。通勤カバンとして毎日活躍しているのか、それとも週末のお出かけに使われているのか。私の手を離れて、新しい持ち主のもとで第二の人生を歩んでいる。そう思うと、手放して本当に良かったと思える。

物との付き合い方、買い方、手放し方。この一連の経験を通して、私の生活は確実に変わった。それは、クローゼットの奥のバッグから始まった、小さくて大きな変化だった。

触れたきっかけと思ったこと

「もう無理、絶対に遅刻する」。目覚まし時計を見て飛び起きる朝が、私にとっては日常だった。アラームをスヌーズして二度寝、三度寝。気づけば家を出る30分前。着替えて、メイクして、朝ごはんは食べる暇もなく、コーヒーだけをマグカップに注いで慌てて飲み干す。靴下が片方見つからなくて引き出しをひっくり返したり、会社に着ていく服が決まらなくてクローゼットの前で途方に暮れたり。そんな朝を何年も繰り返していた。

会社に着く頃には、すでにぐったりしている。走って駅まで行くから額には汗。化粧も崩れている。何より、朝からこんなにバタバタしていると、一日のスタートがもう最悪な気分なのだ。同僚からは「いつも朝ギリギリだよね」と苦笑いされ、上司からは「もう少し余裕を持って出勤できないか」と遠回しに注意されたこともある。

自分でも何とかしなきゃと思っていた。早起きすればいいんだとわかってはいる。でも、夜型人間の私にとって、朝早く起きることは本当に苦痛で。目覚ましを何個セットしても、結局起きられない。「明日こそは早く起きよう」と毎晩誓うのに、翌朝になると「あと5分だけ」が積み重なって結局いつもの時間。完全に悪循環だった。

そんなある日、同じ部署の先輩が何気なく言った一言が転機になった。「私、朝弱いから夜のうちに全部準備しちゃうんだよね。そうすると朝が本当に楽で」。その先輩は私よりも早い時間に出勤しているのに、いつも余裕のある顔をしている。朝からしっかりメイクをして、髪型もきちんとセットされていて、なんならコンビニで買ったらしいサンドイッチを自席で食べる余裕すらある。

「夜のうちに準備って、具体的に何をするんですか」と聞くと、先輩は「着る服を決めて、バッグの中身を全部セットして、朝ごはんの準備もできる範囲でやっておくの。5分もあればできるよ」と教えてくれた。その時の私は正直、半信半疑だった。たった5分の準備で、あの地獄のような朝が変わるなんて信じられなかった。でも、このままじゃダメだという焦りもあった。先輩の言葉が妙に心に残って、その日の帰り道、ずっとそのことを考えていた。

家に帰って、いつものようにソファに倒れ込んでスマホをだらだら見ていた時、ふと先輩の言葉を思い出した。5分だけなら、今からでもできるかもしれない。そう思って、重い腰を上げてみることにした。これが、私の生活を変える小さな一歩になるとは、その時はまだ思ってもいなかった。

最初に戸惑った体験

その日の夜、私は初めて「前夜の準備」というものに挑戦してみた。まず何から始めればいいのかわからなくて、とりあえずクローゼットの前に立った。明日着る服を決める。それだけのことなのに、意外と難しい。いつもは朝、時間がない中で適当に引っ張り出して着ているから、夜の段階で「明日の自分」を想像して服を選ぶという行為に慣れていなかった。

天気予報を確認して、明日は晴れるらしい。気温は今日と同じくらい。オフィスでの予定は特にないから、いつも通りのカジュアルなオフィスカジュアルでいいだろう。そう考えて、白いブラウスとグレーのパンツを選んだ。でも、これを椅子の背もたれにかけておくだけでいいのだろうか。なんとなく見栄えが悪い気がして、ハンガーに一緒にかけてクローゼットの前にぶら下げることにした。

次にバッグの準備。普段使っているトートバッグの中身を確認すると、レシートやら使い終わった化粧品のサンプルやら、よくわからないゴミがたくさん入っていた。これを全部出して整理するところから始めなければいけない。財布、定期入れ、スマホの充電器、ハンカチ、ティッシュ、リップクリーム。必要なものを一つずつ確認しながらバッグに入れていく。社員証も入れておかないと。ペンケースも。手帳も。

ここまでやって、時計を見たら既に15分以上経っていた。5分で終わるって先輩は言ってたのに、全然終わらない。私のやり方が間違っているのだろうか。それとも、慣れてないから時間がかかっているだけなのか。少し焦りを感じながらも、続けることにした。

朝ごはんの準備。冷蔵庫を開けると、納豆とヨーグルトと賞味期限ギリギリの食パンしかない。そもそも私は普段、朝ごはんをまともに食べていない。コーヒーだけとか、コンビニでおにぎりを買うとか、そんな生活だった。前夜に準備するといっても、準備するものが何もない。とりあえず食パンを冷凍庫から出して、トースターの横に置いておくことにした。コーヒーカップもセットしておく。これくらいしかできることがなかった。

全部終えて、時計を見たら25分も経っていた。5分どころじゃない。なんだか疲れてしまって、ベッドに倒れ込んだ。本当にこれで朝が楽になるんだろうか。逆に夜の時間が削られて、もっと疲れるんじゃないか。そんな疑念が湧いてきた。でも、ここまでやったんだから、明日の朝を迎えてみないとわからない。そう思い直して、いつもより少し早めに布団に入った。

翌朝。目覚ましが鳴って、いつもと同じように「あと5分」と思いながらスヌーズボタンを押した。でも、なぜか心に余裕があった。服は決まっている。バッグの準備もできている。その事実が、半分寝ぼけた頭の中でぼんやりと安心感を与えてくれた。結局二度寝してしまったけれど、起きてからの動きが明らかに違った。

クローゼットの前で悩む時間がない。昨日用意しておいた服をそのまま着ればいい。バッグの中身を確認する必要もない。化粧をして、トーストを焼いて、コーヒーを淹れる。その一連の動作が、いつもよりスムーズに進んだ。時計を見ると、まだ5分も余裕がある。この5分が、私にとっては革命的だった。慌てて家を出ることもなく、駅までゆっくり歩くことができた。

でも、この日だけで完璧にできたわけじゃなかった。続けてみると、いろんな問題が見えてきた。

試行錯誤しながら気づいたこと

前夜の準備を続けてみて、最初の一週間は本当に大変だった。毎晩25分くらいかかってしまって、先輩が言っていた「5分」という数字には全然届かない。しかも、準備したものが翌朝になって「やっぱり違う服がいい」と思うこともあった。せっかく前の晩に白いブラウスを用意したのに、朝起きたら気分が変わって黒いニットが着たくなる。そうなると、前夜の準備の意味がなくなってしまう。

三日目の夜、私は自分のやり方を見直してみることにした。なぜこんなに時間がかかるのか。何が無駄なのか。冷静に考えてみると、毎晩バッグの中身を全部出して入れ直す必要はないと気づいた。財布や定期入れやハンカチは毎日使うものだから、バッグに入れっぱなしでいい。前夜に確認すべきは、「明日必要な追加のもの」だけだ。資料が必要な会議があるとか、返却しなきゃいけない本があるとか、そういう特別なものだけをチェックすればいい。

これに気づいてから、バッグの準備時間が大幅に短縮された。毎晩全部出して入れ直すのをやめて、スマホで翌日の予定を確認して、必要なものがあればバッグに追加する。それだけ。これなら1分もかからない。

服選びについても、考え方を変えた。最初の頃は「明日の気分」を予測しようとして失敗していた。でも、よく考えたら、朝の気分なんて予測できるわけがない。だから、アプローチを変えることにした。夜の段階で服を選ぶんじゃなくて、「明日着られる服の選択肢」を2〜3パターン用意しておくのだ。

例えば、ブラウス系、ニット系、カジュアル系の3つのハンガーを用意する。それぞれに、その日の気温や天気に合わせた服をセットしておく。朝起きたら、その3つの中から気分で選べばいい。全部をゼロから考えるのと、3つの選択肢から選ぶのでは、かかる時間が全然違う。これなら朝の「やっぱり違う服がいい」問題も解決できた。

朝ごはんの準備も、最初はうまくいかなかった。食パンを出しておくだけじゃ、あまり意味がない。どうせトーストするなら、ジャムとバターも一緒に出しておかないと、結局冷蔵庫を開けることになる。コーヒーも、豆から挽いているから、前夜にフィルターにセットしておけば、朝はスイッチを押すだけで済む。

でも、そもそも私は料理が得意じゃないし、朝からしっかり食べる習慣もなかった。だから、「朝ごはんの準備」に関しては、完璧を目指さないことにした。前の晩にヨーグルトを冷蔵庫の取り出しやすい場所に移動させておく。バナナを一本、カウンターに出しておく。それだけでも、朝の動きが変わった。冷蔵庫の中を探し回る時間がなくなるだけで、こんなに楽になるなんて思わなかった。

一番大きな気づきは、「完璧を目指さない」ということだった。前夜に全部完璧に準備しようとすると、逆にストレスになる。そうじゃなくて、朝の「選択」と「探す」という行為を減らすだけで十分なのだ。服を選ぶ時間、バッグの中身を確認する時間、朝ごはんの材料を探す時間。この3つの「時間泥棒」を前夜に潰しておけば、朝の5分、10分が生まれる。

この気づきがあってから、前夜の準備時間は本当に5分くらいになった。慣れてくると、歯磨きをしながらでもできるようになった。特別なことをするんじゃない。ちょっとした先回りをするだけ。それだけで、朝がこんなに変わるなんて、やってみる前には想像もできなかった。

自分なりに工夫したポイント

前夜の準備を続けているうちに、自分なりのルールや工夫が自然と生まれてきた。最初は先輩の真似から始めたけれど、やっぱり人それぞれ生活スタイルが違うから、自分に合ったやり方を見つけることが大事だと実感した。

まず私が取り入れたのは、「前夜準備のチェックリスト」を作ることだった。スマホのメモアプリに、簡単なチェックリストを作成した。項目は4つだけ。「明日の予定確認」「服の準備(2〜3パターン)」「バッグの確認」「朝ごはんセット」。このチェックリストを、寝る前のルーティンに組み込んだ。歯を磨いて、スキンケアをして、チェックリストを確認する。この流れが習慣になると、考えなくても体が動くようになった。

服の準備については、さらに工夫を重ねた。クローゼットの一番手前に「明日候補ゾーン」を作って、そこに翌日着られる服だけをかけるようにした。週末に一週間分の服をある程度考えておいて、このゾーンに集約しておく。そうすると、平日の夜はこのゾーンから選ぶだけで済む。クローゼット全体から毎日選ぶのは大変だけど、5〜6着の中から選ぶのは楽だった。

天気予報アプリも活用した。夜寝る前に翌日の天気と気温を必ず確認する。雨が降りそうなら折り畳み傘をバッグに入れておく。気温が低そうなら上に羽織るカーディガンを用意しておく。当たり前のことだけど、これを前夜にやっておくだけで、朝の「傘どこだっけ」「寒いかも、何か羽織るもの探さなきゃ」という慌てがなくなった。

バッグの準備では、「明日バッグ」という概念を取り入れた。普段使いのトートバッグとは別に、小さめのトートバッグを用意して、翌日特別に必要なものはこの「明日バッグ」に入れておく。例えば、返却する図書館の本とか、クリーニングに出す服とか、友達に渡すものとか。玄関にこのバッグを置いておけば、朝「あ、あれ持っていかなきゃ」と思い出して部屋中を探し回ることがなくなった。

朝ごはんの準備は、自分のレベルに合わせて無理のない範囲で工夫した。料理が得意な人なら前夜におかずを作り置きできるんだろうけど、私にはそれは無理。だから、「開けるだけ」「出すだけ」で食べられるものを意識的に買うようにした。ヨーグルト、バナナ、グラノーラ、チーズ、ゆで卵(コンビニで買ったもの)。これらを前夜に一か所にまとめて置いておく。朝はそこから好きなものを選んで食べる。それだけでも、コーヒーだけの朝よりずっと良かった。

コーヒーについては、タイマー機能付きのコーヒーメーカーを買った。前夜にセットしておけば、朝起きた時にはもうコーヒーが淹れたてで待っている。この香りで目が覚めるのも気持ちよかったし、何より朝の「コーヒー淹れなきゃ」というタスクが一つ消えたのが大きかった。

もう一つ、意外と効果的だったのが「朝の動線」を意識することだった。前夜に準備するだけじゃなくて、それをどこに置いておくかも重要だ。例えば、服はベッドの近くに置いておく方が、クローゼットに入れておくより楽。バッグは玄関に置いておけば、出かける直前に「バッグどこだっけ」と探さなくて済む。朝ごはんセットはキッチンカウンターの一番目立つ場所。

こうした小さな工夫の積み重ねが、朝の動きをスムーズにしてくれた。大げさな準備じゃない。ちょっとした配置の工夫とか、ちょっとした先回りとか。それだけで、朝の自分が楽になる。前夜の5分が、翌朝の20分、30分を生み出してくれる。このコスパの良さに気づいてからは、前夜の準備が面倒だと感じることはなくなった。

日常や生活でどう変わったか

前夜5分の準備を始めてから、朝の時間に余裕が生まれたことで、私の生活は想像以上に変わった。一番大きな変化は、朝の気分が全く違うということだった。以前は朝起きた瞬間から「やばい、時間がない」という焦りでスタートしていた。でも今は、目覚ましが鳴っても「大丈夫、準備はできてる」という安心感がある。この心の余裕が、一日のスタートを穏やかなものにしてくれた。

朝ごはんをゆっくり食べられるようになったのも大きな変化だった。以前はコーヒーを立ったまま流し込むか、駅のコンビニでおにぎりを買って電車の中で食べるかという生活だった。でも今は、テーブルに座って、トーストとヨーグルトとコーヒーを味わいながら食べる時間がある。たった10分、15分の違いなんだけど、この時間があるだけで一日の始まりが全然違う。

会社に到着する時の状態も変わった。以前は走って駅に向かって、階段を駆け上がって、ギリギリで電車に飛び乗っていたから、会社に着く頃には汗だくで息も上がっていた。化粧も崩れている。髪も乱れている。デスクに着いてから、トイレで化粧直しをするのが日課だった。でも今は、余裕を持って家を出られるから、歩いて駅に向かえる。電車の中でも座れることが増えて、スマホで今日の予定を確認したり、ニュースを読んだりする余裕ができた。

同僚からの反応も変わった。「最近、余裕あるね」「なんか落ち着いてる」と言われるようになった。以前は「いつもギリギリの人」というキャラが定着していたから、朝から余裕のある顔をしている私を見て、みんな少し驚いていた。上司からも「最近いい感じだね」と声をかけられた時は、素直に嬉しかった。

遅刻の心配がなくなったことで、睡眠の質も変わった。以前は寝る前に「明日絶対起きなきゃ」というプレッシャーがあって、それが逆に眠りを浅くしていた。目覚ましを5個も6個もセットして、それでも不安で何度も夜中に目が覚めていた。でも、前夜の準備ができていると「最悪、ちょっと遅く起きても大丈夫」という心の余裕が生まれて、ぐっすり眠れるようになった。

朝の余裕が、仕事のパフォーマンスにも影響した。以前は朝からバタバタしていたから、午前中はずっと頭がぼんやりしていた。メールの返信も遅いし、ミスも多かった。でも今は、朝から頭がすっきりしている。朝ごはんをちゃんと食べているから、午前中もエネルギーが続く。仕事の効率が上がって、残業も減った。

意外だったのは、夜の時間の使い方も変わったことだった。以前は夜、だらだらとスマホを見て過ごして、気づいたら深夜という日々だった。でも、前夜の準備を習慣にしてから、夜の時間に少し意識が向くようになった。寝る前の5分を使うということは、逆算して考えると、ある程度の時間に寝る準備を始めないといけない。そうすると、自然と夜のダラダラ時間が減って、早く寝るようになった。結果的に睡眠時間も増えて、朝も起きやすくなるという好循環が生まれた。

週末の過ごし方も変わった。以前は平日の疲れを引きずって、土日はほとんど寝て過ごしていた。でも、朝のストレスが減って日々の疲れが軽減されたことで、週末も早起きして活動的に過ごせるようになった。朝から散歩に出かけたり、カフェでゆっくり朝ごはんを食べたり。そういう時間が、人生を豊かにしてくれている気がした。

友人との約束も守れるようになった。以前は朝が弱くて、休日の朝の約束はほとんど遅刻していた。友達からは「また遅刻するんでしょ」と冗談半分に言われることもあって、それが地味にストレスだった。でも今は、前夜に準備をする習慣が休日も続いているから、約束の時間に余裕を持って到着できる。友達からも「時間守るようになったね」と驚かれて、それがまた嬉しかった。

続けてみて見えてきたこと

前夜5分の準備を始めてから、気づいたら半年が経っていた。最初は意識的に頑張らないとできなかったことが、今では完全に習慣になっている。歯を磨くのと同じレベルで、考えなくても体が動く。寝る前に翌日の服を見て、バッグを確認して、朝ごはんをセットする。それが当たり前になった。

続けているうちに見えてきたのは、この習慣がただ「朝が楽になる」だけじゃないということだった。もっと深いところで、自分の生活全体が変わっていく感覚があった。

一番大きな気づきは、「先回りの思考」が身についたということだった。前夜に翌朝のことを考える習慣がつくと、もっと広い範囲で「未来の自分」のために今できることを考えるようになった。例えば、週末に来週の予定を確認して、必要な準備を少しずつ進めるようになった。会議の資料を前日に確認しておくとか、提出書類の期限を余裕を持ってチェックするとか。小さなことだけど、こうした先回りが、仕事でも私生活でも余裕を生み出してくれた。

「選択疲れ」という言葉があることを知ったのも、この習慣を続けていた時期だった。人間は一日に何万回も選択をしていて、それが疲れの原因になるらしい。朝の「何を着るか」「何を食べるか」「何を持っていくか」という小さな選択の積み重ねが、実は脳を疲れさせている。前夜に準備をすることで、朝の選択を減らせる。その分、脳のエネルギーを仕事や大事なことに使える。理屈で理解するというより、体感として「確かにそうだな」と実感した。

この習慣を通して、自分の「弱点」とうまく付き合う方法も学んだ。私は朝が弱い。これは変えられない性質だと思っていた。でも、朝が弱いなら、弱い朝の自分を助ける仕組みを作ればいい。夜の元気な自分が、朝の弱い自分を助ける。そういう発想の転換ができたことが、すごく大きかった。自分の弱さを責めるんじゃなくて、弱さを前提に工夫する。これは人生の色々な場面で使える考え方だと思った。

家族や友人にもこの習慣を勧めてみたけれど、反応は様々だった。すぐに取り入れて「本当に朝が楽になった」と喜んでくれる人もいれば、「面倒くさい」と続かない人もいた。これも学びだった。どんなに良い習慣でも、万人に合うわけじゃない。その人の生活スタイルや価値観に合っているかどうかが大事。私にとってはこの「前夜5分の準備」が完璧にハマったけれど、他の人には別の方法が合うのかもしれない。

続けていく中で、完璧主義の罠にも気づいた。最初の頃は、毎日完璧に準備しないといけないと思っていた。でも、たまには疲れていて準備できない日もある。飲み会で遅く帰った日とか、体調が悪い日とか。そういう時は無理に準備しなくてもいい。次の日の朝はちょっとバタバタするかもしれないけど、それはそれでいい。完璧を求めすぎると続かない。70点、80点を続けることの方が、100点を目指して挫折するよりずっといい。

この習慣を通して、「小さな変化の積み重ね」の力も実感した。最初の一日、二日では大した変化は感じなかった。でも、一週間、一ヶ月、三ヶ月と続けていくうちに、気づいたら生活全体が変わっていた。朝のストレスが減り、睡眠の質が上がり、仕事のパフォーマンスが向上し、人間関係も良くなった。たった5分の習慣が、こんなにも人生を変えるなんて、始める前には想像もできなかった。

まとめ

「前夜5分の準備」を始める前の私は、毎朝を戦場のように過ごしていた。目覚ましに怒られるように起きて、時間に追われながら支度をして、走って駅に向かう。そんな朝が当たり前だと思っていた。朝が弱い自分はダメな人間だと、どこかで責めていた。

でも、先輩の何気ない一言がきっかけで始めた小さな習慣が、私の朝を、そして人生を変えてくれた。最初はうまくいかなかった。時間もかかったし、続けられるか不安だった。でも、試行錯誤しながら自分に合ったやり方を見つけて、少しずつ形にしていった。

今では、夜寝る前に翌日の準備をすることが、歯を磨くのと同じくらい自然な習慣になっている。服を選んで、バッグを確認して、朝ごはんをセットする。それだけのことなのに、翌朝の自分が本当に楽になる。朝起きた時の安心感、ゆっくり朝ごはんを食べられる幸せ、余裕を持って家を出られる気持ち良さ。これらは、半年前の私には想像もできなかった日常だった。

この習慣から学んだことは、朝の準備の仕方だけじゃない。自分の弱さとうまく付き合う方法、先回りして考える思考、小さな変化を積み重ねる大切さ。そういう、人生全体に通じる気づきがたくさんあった。

もし、昔の私と同じように朝のバタバタに悩んでいる人がいたら、一度試してみてほしい。最初から完璧を目指さなくていい。まずは服を前日に決めてみるだけでもいい。バッグの中身を確認するだけでもいい。小さな一歩が、きっと何かを変えてくれる。

私にとって、この「前夜5分の準備」は単なる時短テクニックじゃなくて、自分を大切にする方法の一つになった。夜の元気な自分が、朝の弱い自分を助けてあげる。未来の自分のために、今できることをしてあげる。それは、自分への優しさなんだと思う。

朝のストレスが減っただけで、こんなにも毎日が軽やかになるなんて。始めてよかったと心から思っている。これからもこの習慣を続けながら、もっと自分らしい朝を、もっと心地よい毎日を作っていきたい。

Googleマップのお気に入り機能を使い始めて、外出がスムーズになった体験

使いはじめたきっかけ

転職して新しい職場に勤め始めた頃、取引先への訪問が月に5〜6回発生するようになった。それまでは決まった場所にしか行かない生活だったので、外出のたびにGoogleマップで検索して場所を確認していた。

ある日、同じカフェに3回目の訪問をするとき、また一から店名を入力して検索している自分に気づいた。前回も前々回も同じ操作をしていた。検索履歴から探せば早いが、他の検索も多いため埋もれてしまう。このやり方は明らかに無駄だと感じた。

そのとき同僚が「Googleマップに保存しておけば一発で出るよ」と教えてくれた。お気に入り機能の存在は知っていたが、どう使えばいいのか具体的なイメージがなかった。ただ、毎回同じ検索をする手間を省けるなら試してみる価値はあると思い、その日のうちに設定を始めた。

当時の私の外出パターンは、取引先3社、よく行くカフェ2軒、ジムが1軒、たまに行く書店が2軒という状況だった。これらを毎回検索するのは確かに面倒で、特に急いでいるときは店名のスペルを間違えて再検索することもあった。

実際にやってみた流れ

まずスマートフォンでGoogleマップのアプリを開いた。最初に保存しようと思ったのは、週に1回通っているジムだった。検索バーに店名を入力して場所を表示させた。

画面下部に店名と住所が表示され、その横に「保存」というボタンがあった。このボタンをタップすると、いくつかの選択肢が出てきた。「お気に入り」「行きたい場所」「スター付きの場所」という3つの既定リストと、「新しいリスト」という項目があった。

最初はどれを選べばいいのか迷った。それぞれの違いがよく分からなかったため、とりあえず「お気に入り」を選んでタップした。すると画面に「お気に入りに保存しました」という通知が短く表示され、保存ボタンのアイコンが塗りつぶされた状態に変わった。

次に、保存した場所がどこから見られるのか確認した。画面下部の「保存済み」タブをタップすると、先ほど保存したジムが「お気に入り」のセクションに表示されていた。タップすればすぐに地図上で場所が表示され、ルート検索もできる。これは確かに便利だと感じた。

続けて、よく行くカフェも同じ手順で保存した。店名を検索し、保存ボタンから「お気に入り」を選択する。この時点で2件が保存済みになった。

取引先についても同様に保存しようとしたが、ここで少し考えた。取引先は3社あり、今後増える可能性もある。すべてを「お気に入り」に入れると、プライベートで行く場所と混ざって分かりにくくなるのではないかと思った。

そこで「新しいリスト」という項目を試してみた。タップすると、リスト名を入力する画面が表示された。「仕事関係」と入力して作成ボタンを押した。すると、先ほど検索していた取引先がそのリストに保存された。

残りの取引先2社も、同じ手順で検索してから保存ボタンをタップし、今度は「仕事関係」のリストを選んで保存した。これで3社すべてが同じリストにまとまった。

書店についても新しいリストを作るか迷ったが、頻度が低いため「行きたい場所」に保存することにした。この段階で、お気に入りにカフェとジム、仕事関係に取引先3社、行きたい場所に書店2軒という振り分けができた。

保存済みタブを開くと、それぞれのリストが縦に並んで表示され、タップすればリスト内の場所一覧が見られた。地図上で一括表示する機能もあり、リスト名の横にある地図アイコンをタップすると、そのリストに含まれる場所すべてにピンが立った。

ここまでの設定に要した時間は15分ほどだった。操作自体は単純で、一度流れを理解すれば迷うことはなかった。

途中でつまずいた点

使い始めて数日後、最初の問題に気づいた。取引先の1社が別のビルに移転することになり、新しい住所を保存し直す必要が出た。古い場所を削除して新しい場所を保存すればいいと思ったが、削除の方法がすぐに分からなかった。

保存済みタブからその場所を開き、画面をあちこち見たが削除ボタンが見当たらない。保存ボタンをもう一度タップすると、チェックマークが外れて保存が解除された。これで削除できたと思い、新しい住所を検索して保存し直した。

しかし後日、リストを確認すると古い住所がまだ残っていた。どうやら複数のリストに保存していた場合、片方を解除してももう片方には残る仕組みらしい。私はその取引先を「お気に入り」と「仕事関係」の両方に保存していたため、片方しか解除できていなかった。

結局、保存済みタブからリストを開き、場所の名前を長押しすると削除オプションが表示されることを発見した。この方法で古い住所を完全に削除できた。ただ、この操作に気づくまでに何度か試行錯誤が必要だった。

別の問題も発生した。カフェを5軒ほど保存した頃、お気に入りリストが雑多になってきた。仕事帰りに寄るカフェと、休日に行くカフェが混在していて、外出先で開いたときにどれを選べばいいか一瞬迷うようになった。

さらに、スター付きの場所というリストの使い道がよく分からなかった。最初に保存するとき、お気に入りとスター付きの違いが判断できず、なんとなくお気に入りばかり使っていた。後から調べると、スター付きは以前からある機能で、お気に入りはその後に追加された分類らしい。機能的な違いはほとんどないが、2つあることで逆に混乱した。

もう一つ困ったのは、保存した場所の順番だった。リスト内で場所が保存した順に並ぶため、よく使う場所が下の方に埋もれてしまうことがあった。並び替えの機能を探したが、スマートフォンアプリからは見つけられなかった。

自分なりに工夫した部分

まず、リストの整理方法を見直した。お気に入りには本当によく行く場所だけを残し、頻度の低い場所は別のリストに移した。具体的には、週1回以上行く場所だけをお気に入りに入れ、それ以外は用途別のリストに分けた。

新しく作ったリストは「カフェ作業用」「休日の外食」「買い物」の3つだった。カフェ作業用には仕事や勉強ができる静かなカフェを入れ、休日の外食には友人と行くような飲食店を保存した。買い物には、たまにしか行かないが場所を覚えにくい専門店をまとめた。

こうすることで、お気に入りには本当に頻繁に行く3〜4箇所だけが残り、目的に応じてリストを切り替えて探せるようになった。外出先で「今日は作業できる場所を探したい」と思ったら、カフェ作業用のリストを開けばいい。

次に、リスト名を工夫した。最初は「仕事関係」という名前にしていたが、これだと取引先なのか仕事で使うカフェなのか曖昧だった。「取引先」と明確な名前に変更した。変更はリストを開いて編集ボタンから行えた。

スター付きの場所は、一時的に保存する場所として使うことにした。たとえば旅行先で気になった店や、誰かに勧められてとりあえず記録しておきたい場所など、後で分類を考える場所の一時置き場にした。月に一度、スター付きの場所を見直して適切なリストに振り分けるか削除するかを決めた。

並び替えができない問題については、パソコンのブラウザからGoogleマップを開くと解決できることが分かった。ブラウザ版では、リスト内の場所をドラッグして順番を変えられた。よく行く順に並べ替えてから保存すれば、スマートフォンでもその順番が反映された。

ただ、毎回パソコンで操作するのは面倒なので、保存するときに場所の名前を工夫することにした。たとえば「A取引先」「B取引先」のように、頭に記号や番号を付けると自動的にある程度の順番で並んだ。重要度の高い場所には「1_」「2_」と番号を振った。

保存する際のもう一つの工夫は、メモ機能の活用だった。場所を保存するとき、メモを追加できることに気づいた。取引先には担当者名や最寄り駅からの所要時間を書き込んだ。カフェには電源の有無やWi-Fi状況、混雑する時間帯などを記録した。

このメモは、後から見返したときに非常に役立った。「ここは14時以降が空いている」とメモしておけば、訪問時間を決めるときの判断材料になった。メモの追加は、保存済みの場所を開いて鉛筆アイコンをタップすれば編集画面が出た。

実感した変化

最も大きな変化は、外出前の準備時間が短くなったことだった。以前は出かける直前にスマートフォンで場所を検索し、ルートを確認してから出発していた。急いでいるときは店名を正確に思い出せず、何度か検索し直すこともあった。

お気に入り機能を使い始めてからは、保存済みタブを開いて場所を選ぶだけで済む。検索の手間が省け、出発までの時間が平均で2〜3分は短縮された。朝の忙しい時間帯では、この数分の違いが大きかった。

移動中の確認もスムーズになった。電車の中で次の目的地を確認するとき、以前は検索履歴を遡るか、もう一度検索していた。今は保存済みから開くだけなので、確認が一瞬で終わる。複数の用事を連続してこなす日は、この効率化が特に実感できた。

取引先への訪問が重なる日の動きも変わった。午前中に1社、午後に別の1社を訪問する予定があるとき、以前は紙のメモに住所を書いて持ち歩いていた。今は仕事関係リストを開けば全ての取引先が一覧で見られ、地図上でまとめて表示もできる。どの順番で回るのが効率的か、地図を見ながら判断できるようになった。

予定外の行動にも対応しやすくなった。仕事が早く終わって時間ができたとき、カフェ作業用リストを開いて今いる場所から近い店を探せる。リスト内の場所は地図上に一度に表示されるため、現在地から最も近い選択肢がすぐに分かった。

週末の外出でも変化があった。友人と会う約束をしたとき、「この辺でいい店ない?」と聞かれることがある。以前は記憶を頼りに店名を挙げていたが、今は休日の外食リストを見せながら提案できる。保存してある場所なら自分も行ったことがあるか、少なくとも情報を確認済みなので安心して勧められる。

意外だったのは、新しい場所を開拓する頻度が上がったことだった。気になる店を見つけたらすぐにスター付きで保存しておけるため、「後で調べよう」と思って忘れることが減った。月末にスター付きリストを見直す習慣をつけたことで、定期的に新しい場所を訪れるきっかけができた。

時間の使い方にも影響があった。以前は外出先で次の予定までの空き時間ができたとき、どこで時間を潰すか考えるのに時間がかかっていた。今は保存済みの場所から選べるので、迷う時間が減り、実際に過ごせる時間が増えた。

メモ機能を活用し始めてからは、訪問の質も上がった。カフェに「電源が窓側のみ」とメモしてあれば、最初から窓側の席を狙える。取引先に「入口が裏通り側」と書いておけば、迷わず到着できる。小さな情報だが、現地で困る時間が確実に減った。

リストを人に共有する機能も使ってみた。同僚に取引先リストを共有したところ、新人の営業担当が訪問先を覚えるのに役立ったと言われた。友人との旅行前には、候補地をリストにまとめて共有し、意見を集めてから行き先を決めた。この使い方は当初想定していなかったが、意外と便利だった。

まとめ

Googleマップのお気に入り機能を使い始めたのは、単純に検索の手間を省きたかったからだった。実際に使ってみると、操作は思っていたより簡単で、場所を検索して保存ボタンを押すだけで登録できた。

最初はリストの使い分けや削除方法で戸惑ったが、自分なりにルールを決めて整理することで使いやすくなった。頻度の高い場所はお気に入り、用途別に分けたい場所は専用リストを作り、一時保存にはスター付きを使うという方法に落ち着いた。

メモ機能や並び替えなど、細かい工夫を重ねることで、単なる場所の記録以上の価値が生まれた。外出前の準備時間が短くなり、移動中の確認がスムーズになり、予定外の時間も有効に使えるようになった。

特に複数の場所を訪れる日や、初めての場所に行くときの安心感が大きく変わった。必要な情報がすぐに取り出せる状態を作っておくことで、外出そのものが以前より気楽になった。小さな変化の積み重ねだが、日常生活への影響は確かにあった。

Vrewで"話すのが苦手な私"がナレーション動画を作れた日|声に自信がなかったのに続けられた理由

触れたきっかけと思ったこと

「動画投稿してみたいな」って思ったのは、去年の秋のことだった。仕事でプレゼンをする機会が増えて、資料作りにはそれなりに自信がついてきたんだけど、いざ人前で話すとなると、もう本当に声が震えてダメだった。会議のたびに「もっと上手に伝えられたら」って悔しくて、何か練習方法はないかなって探していたんだ。

そんなとき、YouTubeで見つけた解説動画がすごく分かりやすくて。画面に図が映っていて、落ち着いたナレーションが流れていて、顔出しもしていない。「これなら私にもできるかも」って思った。人前で話すのは苦手だけど、文章なら伝えたいことをちゃんと整理できる。動画編集の練習にもなるし、自分のペースでナレーション練習もできるんじゃないかって。

でも問題があった。私の声、本当に自信がないんだ。録音した自分の声を聞くと、なんだか頼りなくて、抑揚もなくて、「こんな声で説明されても説得力ないよな」って落ち込んでしまう。学生時代、音読で当てられるのが一番嫌いだった。声が小さいってよく言われたし、録音した声を聞き返すたびに「変な声」って思ってしまう癖がついていた。

それでも何か始めたくて、動画編集ソフトを調べ始めた。最初は有名なソフトを試したんだけど、機能が多すぎて何から手をつけていいか分からない。字幕を入れるのも一苦労で、タイミングを合わせるのに何時間もかかってしまった。「これ、私には無理かも」って諦めかけていたとき、たまたまSNSで「Vrew」っていうアプリの投稿を見つけたんだ。

AIが自動で字幕をつけてくれるとか、音声合成でナレーションも作れるとか書いてあった。正直、最初は「そんな都合のいい話あるの?」って半信半疑だった。でも無料で使えるって書いてあったから、「ダメ元で試してみるか」って軽い気持ちでダウンロードしてみた。起動してみると、思っていたよりシンプルな画面で、なんとなく使えそうな予感がした。これが私とVrewの出会いだった。

最初に戸惑った体験

実際に使い始めてみると、最初から戸惑いの連続だった。まず何を作ればいいのか分からない。「動画を作る」って漠然と思っていたけど、具体的なテーマも決めていなかったし、どういう流れで作業すればいいのかも全然イメージできていなかった。

とりあえず、自分が詳しい分野で簡単な解説動画を作ってみようと思った。私は趣味で観葉植物を育てているから、「初心者向けのモンステラの育て方」みたいなテーマならなんとかなるかなって。スマホで撮った植物の写真をいくつか用意して、説明文も書いてみた。文章にするのは得意だから、ここまではスムーズだった。

問題はここからだった。Vrewを開いて、まず「新しいビデオで始める」を選んだんだけど、そこから先の選択肢が多すぎて混乱した。「音声ファイルから作る」「動画ファイルから作る」「テキストから作る」って、どれを選べばいいの? 私は写真と文章があるだけで、音声も動画もないんだけど...って途方に暮れた。

結局、いろいろクリックしてみて「テキストから作る」を選んだ。そうすると空白の画面が出てきて、そこに文章を入力できるらしい。さっき書いた説明文をコピペして、「これで進められるのかな」って不安ながら次へ進んだ。すると、音声合成の選択画面が出てきた。ここで初めて「あ、自分で声を録音しなくても、AIの音声で読み上げてくれるんだ」って理解した。

音声の種類がたくさんあって驚いた。男性の声、女性の声、トーンも速度も選べる。試しに一つ選んで再生してみたら、確かに人工的な感じはあるんだけど、思っていたよりずっと自然だった。「ロボットっぽい声だったらどうしよう」って心配していたけど、普通に聞ける品質で安心した。

でも、ここで新たな問題が発生した。写真を入れる方法が分からない。テキストが音声になって、字幕も自動で表示されているのは嬉しいんだけど、画面が真っ黒のまま。これじゃ解説動画にならない。マニュアルを読んでも、専門用語が多くて頭に入ってこない。「タイムライン」「クリップ」「レイヤー」って言われても、動画編集初心者の私にはピンとこなかった。

結局、YouTubeでVrewの使い方を解説している動画を探して見た。そうしたら、画面右側に画像を追加するボタンがあって、そこから写真を挿入できるって分かった。「なんだ、ここか」って拍子抜けしたけど、初心者にはそういう基本的なことすら分からないんだよね。

なんとか写真を配置して、テキストと音声と画像が揃った。再生してみると、一応動画っぽくなっている。でも、なんか物足りない。切り替わりが急すぎるし、音声のスピードも微妙にずれている気がする。BGMも入れたいけど、どこから入れるの? フォントも変えたいけど、設定はどこ? やりたいことは山ほどあるのに、一つ一つ調べながら進めるから、最初の5分の動画を作るのに丸一日かかってしまった。

完成した動画を見て、正直「う〜ん...」って感じだった。内容は悪くないと思うんだけど、なんだか素人っぽさが拭えない。友達に見せる勇気もなくて、結局パソコンの中に保存したまま誰にも公開しなかった。それでも「一応形にはなったんだから、悪くないか」って自分を慰めていた。

試行錯誤しながら気づいたこと

一本目の動画を作り終えて、しばらく放置していた。「やっぱり私には向いてないのかな」って諦めかけていたんだけど、数週間後、また挑戦してみたくなった。一度作ったことがあるから、二本目はもう少しスムーズにできるんじゃないかって期待もあった。

今度は料理のレシピ動画を作ってみることにした。得意な煮物の作り方を、写真と文章で説明する形式。前回の反省を活かして、今度はもう少し丁寧に作業を進めてみた。そして、ここでいくつか重要な気づきがあったんだ。

まず気づいたのは、文章の書き方で動画の印象がまったく変わるということ。最初は説明書みたいな硬い文章を書いていたんだけど、それをAI音声で読み上げると、すごく無機質に聞こえてしまう。「大根は2センチの厚さに切ります」じゃなくて、「大根は、だいたい2センチくらいの厚さに切ってください」って、語りかけるような文章にすると、同じAI音声でも温かみが出る気がした。

それから、文章を短く区切ることも大事だって分かった。一文が長いと、音声も途切れずに続いてしまって、聞いている方が疲れる。句読点を意識的に増やして、「ここで一息」っていうタイミングを作ると、ずっと聞きやすくなった。Vrewは句読点のところで自動的に間を作ってくれるから、文章の書き方次第で音声のリズムをコントロールできるんだって気づいた。

AI音声の選び方も工夫してみた。最初はなんとなく選んでいたんだけど、内容によって合う声が違うんだよね。料理のレシピみたいな親しみやすい内容なら、少し明るめのトーンの女性の声がいい。逆に、ビジネス系の説明なら、落ち着いた男性の声のほうが説得力がある気がする。声の速度も、標準より少しゆっくりめに設定すると、初心者向けの解説には向いている。

画像の配置にも気を配るようになった。ただ写真を並べるだけじゃなくて、説明している内容に合わせて、見せたい部分がしっかり映るようにトリミングする。「ここでこの角度の写真があれば分かりやすいのに」って気づくと、次からは撮影の段階で意識するようになった。動画を作ることで、逆に撮影スキルも上がっていくのが面白かった。

でも、一番大きな気づきは、「完璧を目指さなくていい」ってことだった。最初は「プロみたいな動画を作らなきゃ」ってプレッシャーを感じていたんだけど、そもそも私は趣味で始めたんだし、練習のために作っているんだから、少しくらい下手でもいいじゃんって思えるようになった。実際、YouTubeには素人が作った動画もたくさんあって、それでも役に立っていたり、温かいコメントがついていたりする。

三本目、四本目と作っていくうちに、だんだん作業のスピードも上がってきた。最初は丸一日かかっていたのが、数時間でできるようになった。Vrewの操作にも慣れてきて、「あ、この機能便利」って発見することも増えた。たとえば、字幕の位置を自由に変えられるとか、画像にズーム効果をつけられるとか、BGMの音量を細かく調整できるとか。使い込むほどに、自分なりの表現の幅が広がっていくのが楽しくなってきた。

自分なりに工夫したポイント

何本か動画を作るうちに、「もっとこうしたい」っていう欲が出てきた。ただ情報を伝えるだけじゃなくて、見ている人が飽きない工夫とか、分かりやすさを追求したくなったんだ。そこで、自分なりにいろいろ試してみることにした。

まず力を入れたのは、オープニングの作り込み。最初の5秒で「この動画、見る価値あるな」って思ってもらえないと、すぐに離脱されてしまう。だから、冒頭には必ず「今日は○○について説明します」っていう明確な宣言を入れるようにした。そして、そこに合わせてタイトル画像も作った。Vrewの中でテキストを大きく表示させて、色を変えたり、アニメーションをつけたりして、ちょっとした演出を加えた。

ナレーションの「間」も意識するようになった。AI音声は自動で読み上げてくれるけど、説明の区切りで少し長めの間を入れると、視聴者が理解する時間を作れる。Vrewでは、テキストの行間を空けることで、その部分の無音時間を調整できる。たとえば、重要なポイントを言った後に、一行空白を入れてから次の文章を続けると、自然な「ため」ができる。

BGMの使い方も工夫した。最初はずっと同じBGMを流していたんだけど、それだと単調になってしまう。だから、シーンによって音楽を変えてみた。導入部分は明るめの音楽、説明部分は落ち着いた音楽、まとめは少しテンポの速い音楽、みたいに。Vrewには音楽素材もいくつか入っているし、フリー素材サイトからダウンロードしたものも使えるから、選択肢はたくさんあった。

効果音も積極的に取り入れるようになった。画面が切り替わるときに「シュッ」っていう音を入れたり、重要なポイントで「ピコーン」って音を入れたり。ほんの小さな音なんだけど、これがあるだけで動画のテンポが良くなるし、見ている人の注意を引ける。Vrewの素材ライブラリにも効果音があるから、それを活用した。

字幕の見せ方にもこだわった。ただ画面下に文字を表示するだけじゃなくて、強調したい言葉だけ色を変えたり、サイズを大きくしたり。Vrewは字幕を一つ一つ編集できるから、キーワードだけ黄色にするとか、数字を赤くするとか、細かい調整ができる。これをやると、視覚的に情報が入りやすくなるんだよね。

画像の見せ方も進化させた。静止画をただ表示するだけじゃなくて、少しずつズームインさせたり、スライドで動かしたり。Vrewにはアニメーション機能があるから、写真に動きをつけることができる。これだけで、動画のクオリティがグッと上がった気がする。

あと、自分の声をどうするか悩んだ時期もあった。AI音声に慣れてきて、「やっぱり自分の声で録音したほうが、温かみが出るかな」って思ったこともある。試しに、一部だけ自分の声で録音してみたんだけど、やっぱり聞き返すと恥ずかしくて。声の抑揚も上手くつけられないし、噛んだりするし。「まだ私には早いな」って思って、引き続きAI音声を使うことにした。

でも、AI音声だからこそできる工夫もある。たとえば、同じ内容を違う声で録音してみて、どちらが合うか比較できる。自分の声だとそうはいかないけど、AIなら何度でも声を変えられる。男性の声と女性の声、明るいトーンと落ち着いたトーン、いろんなパターンを試して、一番しっくりくるものを選べるのは大きなメリットだった。

こうやって工夫を重ねていくうちに、自分の中で「これが私のスタイル」っていうのが見えてきた。派手な演出はしないけど、情報は整理されていて分かりやすい。親しみやすいトーンで、でも内容はしっかりしている。そういう動画を目指すようになった。

日常や生活でどう変わったか

動画作りを続けるうちに、思いがけない変化が日常生活にも現れ始めた。最初は単なる趣味のつもりだったのに、気づけば物事の見方や考え方まで変わっていたんだ。

まず、情報を整理する力がついた。動画を作るには、伝えたいことを明確にして、順序立てて説明する必要がある。「これを伝えるには、まず何を説明して、次にどう展開するか」って考える癖がついた。仕事でプレゼン資料を作るときも、以前よりずっとスムーズに構成が組めるようになった。上司からも「最近、資料が分かりやすくなったね」って褒められて、嬉しかった。

話し方も変わった。自分の声で録音はしていないけど、AI音声用の文章を書くときに、「どういう話し方が聞きやすいか」を常に意識するようになった。それが普段の会話にも影響して、以前より区切りを意識して話すようになった気がする。会議で説明するときも、一文を短くして、要点を明確にすることを心がけるようになった。相手の反応も前より良くなった気がする。

観察力も上がった。動画用の写真を撮るようになってから、「どの角度から撮ったら分かりやすいか」「どの瞬間を切り取るべきか」を考えるようになった。それが普段の生活でも活きていて、たとえば旅行先で写真を撮るときも、構図やタイミングを意識するようになった。友達からも「最近、写真上手くなったね」って言われた。

時間の使い方も変わった。以前は休日、なんとなくSNSを見て時間を潰すことが多かったんだけど、今は「次はどんな動画を作ろうかな」って考えたり、素材を撮りに出かけたりすることが増えた。趣味に時間を使っているという実感があって、充実感がある。

自信もついた。これが一番大きな変化かもしれない。「私、話すの苦手だし」って、ずっとコンプレックスだったんだけど、動画という形で自分の考えを表現できるようになって、「私にもできることがあるんだ」って思えるようになった。声は苦手だけど、文章と画像で伝える方法があるじゃんって。自分に合った表現方法を見つけられたことが、すごく嬉しかった。

周りの反応も変わった。最初は誰にも見せていなかった動画だけど、何本か作った後、勇気を出して親しい友達に共有してみたんだ。「すごいね、分かりやすい!」って言ってもらえて、めちゃくちゃ嬉しかった。「私も作ってみたい」って興味を持ってくれた友達もいて、Vrewを紹介したりもした。

仕事でも活用するようになった。社内で簡単なマニュアルを作る機会があって、「動画にしたら分かりやすいんじゃないか」って提案してみたら、採用された。業務の手順を画面キャプチャと説明文で動画にして、Vrewで字幕とナレーションをつけたら、すごく分かりやすいマニュアルができた。新人研修でも使ってもらえることになって、「これ作ったの私なんです」って誇らしい気持ちになった。

家族との関係も少し変わった。実家の母に、料理のレシピ動画を送ったら、すごく喜んでくれた。「お母さん、これ作ってみたよ」って写真を送ってくれたときは、本当に嬉しかった。離れて暮らしているから、なかなか直接教えることはできないけど、動画ならいつでも見返せるし、分かりやすいって。「今度は○○の作り方も教えて」ってリクエストももらった。

新しいコミュニティにも参加するようになった。動画編集や情報発信に興味がある人たちのオンラインコミュニティを見つけて、参加してみた。そこでは、みんな自分のペースで創作を楽しんでいて、互いの作品を見せ合ったり、アドバイスし合ったりしている。「顔出しなし、声出しなしでも、こうやって表現できるんですよ」って自分の経験をシェアしたら、同じように悩んでいる人から感謝のメッセージをもらえた。

続けてみて見えてきたこと

半年ほど続けてみて、いろんなことが見えてきた。最初は「動画を作る」こと自体が目的だったけど、今は「何を伝えるか」「誰のために作るか」を考えるようになった。

一番実感しているのは、「完璧じゃなくても価値がある」ということ。プロのクリエイターみたいな洗練された動画は作れないけど、それでも誰かの役に立てることがある。むしろ、素人っぽさが親しみやすさにつながることもある。「この人も初心者なんだな、私にもできそう」って思ってもらえたら、それはそれで意味があるんじゃないかって。

それから、「声に自信がない」っていうコンプレックスが、実はそんなに大きな問題じゃなかったんだって気づいた。確かに、自分の声で話せたらもっと表現の幅は広がるかもしれない。でも、AI音声を使っても、伝えたいことは伝えられる。むしろ、声のコンプレックスから解放されて、内容に集中できるようになった。「何を話すか」のほうが「どう話すか」より大事なんだって、今なら分かる。

継続することの大切さも実感した。最初の一本目は本当に下手だった。見返すと恥ずかしくなるくらい。でも、諦めずに二本目、三本目と作り続けたから、少しずつ上達できた。もし一本目で「やっぱり無理」って諦めていたら、今の自分はなかった。下手でもいいから続けること、それが成長につながるんだって実感した。

ツールの選択も大事だって分かった。もし最初に使った動画編集ソフトが複雑すぎるものだったら、きっと挫折していた。Vrewは初心者にも使いやすくて、字幕やナレーションの自動生成機能があるから、ハードルが低かった。「自分に合ったツールを見つけること」が、継続するための鍵だと思う。

表現方法は一つじゃないってことも学んだ。世の中には、顔出しして話すYouTuberもいれば、顔も声も出さずに文字だけで伝えるクリエイターもいる。どれが正解とか、どれが優れているとかじゃない。自分に合った方法で、伝えたいことを伝えられればいい。私は声が苦手だから、テキストと画像とAI音声で表現する。それが私のスタイル。

失敗も経験の一部だって思えるようになった。編集ミスで変な動画ができたこともあるし、説明が分かりにくくて友達に指摘されたこともある。でも、そういう失敗から学ぶことのほうが多かった。「次はこうしよう」って改善点が見えるから、失敗も成長のチャンスなんだって。

自分の可能性も広がった気がする。半年前の私は、「話すのが苦手だから、プレゼンも苦手、動画も無理」って決めつけていた。でも、実際にやってみたら、自分なりの方法で表現できた。「苦手」を理由に挑戦しないのは、もったいないことだったんだなって。他にも、「私には無理」って思い込んでいることがあるかもしれない。挑戦してみる価値はあるんじゃないかって思えるようになった。

今では、週末に一本は動画を作るのが習慣になっている。テーマを考えるのも楽しいし、構成を練るのも楽しい。編集作業は時間がかかるけど、没頭できる時間が心地いい。完成した動画を見返して、「今回はここが上手くいった」「次はここを改善しよう」って考えるのも楽しい。

最近は、もっと多くの人に見てもらいたいって思うようになった。YouTubeに投稿することも考えている。再生回数とか登録者数とか、そういう数字を追いかけるつもりはないけど、「この情報、誰かの役に立つかもしれない」って思えるものができたら、シェアしたい。自分と同じように、「声に自信がないけど、何か発信したい」って思っている人の背中を押せたら、嬉しい。

まとめ

「話すのが苦手な私でも、動画が作れた」。半年前の自分に言っても、きっと信じてもらえないと思う。でも、本当にできたんだ。Vrewというツールと出会って、試行錯誤しながら続けてきたことで、自分なりの表現方法を見つけられた。

声に自信がないことは、今でも変わらない。録音した自分の声を聞くと、やっぱり「うーん...」って思ってしまう。でも、それでいいんだって思えるようになった。AI音声を使えば、内容に集中できる。伝えたいことをしっかり伝えられれば、自分の声じゃなくてもいい。そう思えるようになったことが、私にとって大きな変化だった。

動画を作る過程で学んだことは、動画制作のスキルだけじゃない。情報を整理する力、計画を立てる力、最後までやり遂げる力。それに、「完璧じゃなくても始めていい」「自分に合った方法を見つければいい」っていう考え方。これは、動画作り以外のいろんなことにも応用できる。

今、私は週末に動画を作るのが楽しみになっている。新しいテーマを考えるとき、撮影するとき、編集するとき、それぞれの工程に楽しさがある。完成した動画を誰かに見てもらって、「分かりやすかった」「参考になった」って言ってもらえると、本当に嬉しい。

もし、この記事を読んでいるあなたが、「動画作りに興味はあるけど、声に自信がない」って悩んでいるなら、伝えたい。大丈夫、あなたにもできる。私にできたんだから。Vrewみたいな便利なツールもあるし、自分の声じゃなくても表現する方法はある。完璧を目指さなくていい。下手でもいいから、まず一本作ってみること。そこから見える景色が、きっとある。

私はこれからも、自分のペースで動画を作り続けると思う。いつかYouTubeにも投稿してみたいし、もっといろんなテーマに挑戦してみたい。声は相変わらず苦手だけど、それでもできることはたくさんある。そう信じて、これからも楽しみながら続けていきたい。

声に自信がなくたって、伝えたいことがあれば大丈夫。あなたにも、きっとあなたなりの表現方法が見つかるはず。私がそうだったように。

スマホ家計簿をつけ始めて気づいた"本当に無駄だった支出"の正体

触れたきっかけと思ったこと

「今月もまた貯金できなかった…」そんな言葉を何度呟いたことだろう。毎月それなりに給料をもらっているはずなのに、気づけば財布は空っぽ。クレジットカードの明細を見るたびに「こんなに使ったっけ?」と首を傾げる日々が続いていた。

30代に入って、周りの友人たちが貯金や投資の話をするようになった。「将来のことを考えると、ちゃんとお金を管理しないとね」なんて会話を聞くたび、内心では焦っていた。私だってちゃんとしたいと思っている。でも、何から始めればいいのか分からなかった。

そんなある日、同僚の美咲が「私、スマホの家計簿アプリ使い始めたんだけど、めっちゃいいよ」と教えてくれた。彼女は以前、私と同じように「お金がない」と愚痴をこぼしていた人だった。それがここ最近、なんだか余裕がありそうに見えた。ランチのときも「今月は結構節約できてる」なんて嬉しそうに話していた。

正直、最初は半信半疑だった。家計簿なんて何度も挫折してきた。学生時代に買った可愛いノート型の家計簿は、最初の一週間だけ記入して放置。社会人になってからExcelで管理しようとしたこともあったけど、パソコンを開くのが面倒で三日坊主。「スマホアプリだって、結局同じでしょ」という思いがあった。

でも、美咲の変わりようが気になって、その日の帰り道にアプリストアで「家計簿」と検索してみた。驚いたことに、たくさんのアプリがあった。レビューを読みながら、評価の高いものをいくつかダウンロードした。「まあ、無料だし、試すだけ試してみるか」という軽い気持ちだった。

最初に開いたアプリは、とにかくシンプルだった。収入と支出を入力するだけ。カテゴリーも「食費」「交通費」「娯楽費」などが用意されていて、自分で考える必要がない。「これなら続けられるかも」と思った。その日の夕飯で買ったコンビニ弁当の598円を入力してみた。たったそれだけのことなのに、なんだか新しいことを始めた感じがして、少しワクワクした。

「とりあえず一ヶ月だけでも続けてみよう」そう決めて、私の家計簿生活が始まった。このとき、まさか自分のお金の使い方がこんなにも歪んでいたことに気づくとは思ってもみなかった。

最初に戸惑った体験

アプリを使い始めて最初の週は、とにかく全てが新鮮だった。コンビニでペットボトルのお茶を買っても「150円、飲み物代」と入力する。駅の券売機でチャージしても記録する。会社帰りにドラッグストアで化粧水を買っても、すぐにスマホを取り出して入力した。

でも、三日目くらいから違和感が生まれてきた。入力すること自体は苦痛じゃない。問題は、記録した数字を見たときの「もやもや感」だった。

例えば、ある日の昼休み。いつものように同僚たちとランチに行った。私はパスタランチセットで1200円。これを「食費」として入力した。でも、このランチって本当に「食費」だろうか? 美味しいものを食べたいという欲求もあったけど、それ以上に「一人でお弁当を食べるのが寂しい」「同僚との時間が大事」という気持ちがあった。じゃあこれは「交際費」? それとも「娯楽費」?

そんなことを考えていると、カテゴリー分けに迷う支出が山ほどあることに気づいた。帰り道に寄ったコンビニで買った雑誌とガム。雑誌は「書籍費」でいいとして、ガムは? なんとなく口寂しくて買っただけだから「娯楽費」? でも、たかが100円ちょっとのガムをそんな真面目に分類する必要ある?

一番困ったのは、週末にショッピングモールで買い物をしたときだった。服と靴、それから生活雑貨をまとめて買って、合計で18,000円くらい使った。レジで決済したときは「まあ、必要なものだし」と思っていた。でも、アプリに入力しようとして手が止まった。

この18,000円を、どうやって分類すればいいんだろう? 服は「被服費」、靴も「被服費」、生活雑貨は「日用品費」。でも、レシートを見返すと、服と一緒に買った可愛いヘアアクセサリーがあった。これは本当に必要だったのか? 靴は確かに必要だった。前のスニーカーがボロボロだったから。でも、試着したときに店員さんに「お似合いですよ」と言われて、予定より5,000円高いものを選んでしまった。生活雑貨のコーナーで手に取ったアロマキャンドルは、完全に衝動買いだった。

結局、その日は全部まとめて「被服費・雑貨」として入力したけど、なんだかモヤモヤした。このモヤモヤの正体が何なのか、そのときはまだ分からなかった。

さらに困ったのは、クレジットカードの扱いだった。普段からカードで支払うことが多い私は、「今日は現金を使ってないから支出ゼロ」みたいな錯覚に陥っていた。でも、アプリに入力すると、カード払いでもちゃんと支出として記録される。当たり前のことなのに、数字で見るとドキッとした。

一週間が経って、アプリの「週間レポート」機能を見てみた。そこには「今週の支出:32,450円」と表示されていた。一週間で3万円以上? 思わず声が出た。「え、そんなに使ってたの?」

内訳を見ると、食費が15,000円近くあった。一人暮らしで、一週間で15,000円。単純計算すると一ヶ月で6万円。「いや、ありえない」と思ったけど、数字は嘘をつかない。コンビニでの買い物、会社近くのカフェでのランチ、仕事帰りのスーパーでの買い物。全部記録していたから間違いない。

そのときふと思った。「私、今まで何も分かってなかったんだ」と。毎月給料日前になると「お金がない」と嘆いていたけど、お金がないんじゃなくて、使ってしまっていただけだった。どこに消えたか分からなかったお金は、実はちゃんと記録に残っていた。ただ私が見ようとしていなかっただけ。

その夜、ベッドに入ってからもアプリの数字が頭から離れなかった。なんだか、自分の生活が数字で裁かれているような、不思議な居心地の悪さがあった。

試行錯誤しながら気づいたこと

二週目に入って、私はあることに気づき始めた。単に支出を記録するだけでは意味がない。大事なのは「なぜそのお金を使ったのか」を理解することだった。

ある朝、会社に向かう途中、駅ナカのカフェでコーヒーを買った。いつもの習慣だった。アプリを開いて「450円、飲み物代」と入力しようとして、ふと疑問が湧いた。「このコーヒー、本当に必要だったのかな?」

考えてみれば、会社にはコーヒーメーカーがある。無料で飲める。味は確かにカフェのほうが美味しいけど、450円分の価値があるだろうか? 週5日買えば2,250円。一ヶ月で9,000円。一年で108,000円。計算して驚いた。10万円以上も、朝のコーヒーに使っていたのか。

でも、ただ金額が大きいから無駄だとは思わなかった。私にとって朝のカフェでのコーヒーは、一日のスイッチを入れる時間だった。好きな音楽を聴きながら、温かいコーヒーを飲んで、心を落ち着ける。それは私にとって価値がある時間だった。

じゃあ、何が「無駄」なんだろう?

答えは意外なところにあった。ある日の昼休み、同僚たちとランチに行くことになった。本当は前日の夕飯の残りでお弁当を作っていた。朝、ちゃんとお弁当箱に詰めて会社に持ってきていた。でも、「今日はイタリアンに行こうよ」と誘われて、なんとなく「うん、行く行く」と答えてしまった。

ランチで1,500円を支払って、午後に自分のデスクでお弁当箱を見たとき、胸が痛んだ。結局そのお弁当は夜に家で食べたけど、作った意味がなかった。いや、お弁当代の1,500円が無駄になったというより、「断れなかった自分」に対してモヤモヤした。

その日から、私は支出を記録するときに、心の中で自問するようになった。「これは本当に自分が欲しくて買ったもの? それとも、なんとなく買っただけ?」

すると、驚くほどたくさんの「なんとなく支出」が見つかった。

帰り道のコンビニで買うお菓子。別にお腹が空いているわけじゃない。でも、コンビニに寄るのが習慣になっていて、手ぶらで出るのが落ち着かなくて、なんとなくレジに持っていく。

ネットショッピングでポチる服。本当に欲しかったわけじゃない。でも、「5,000円以上で送料無料」と書いてあったから、送料を払うのがもったいなくて、別に必要じゃないものまでカートに入れる。

サブスクリプションサービス。動画配信サービスが三つも入っていた。「いつか見るかも」と思って契約したけど、実際に使っているのは一つだけ。でも解約するのが面倒で、毎月自動で引き落とされていた。

そして気づいた。本当に無駄な支出というのは、金額の大小じゃなかった。「自分の意思で選んでいない支出」が無駄だったんだ。

例えば、朝のカフェのコーヒーは450円する。でも、私はそれを意識的に選んでいる。朝の時間を豊かにするために、自分の意思でお金を使っている。だから無駄じゃない。一方で、コンビニでなんとなく買う150円のお菓子は、何も考えずに買っている。習慣で買っている。だからこそ無駄だった。

もう一つ気づいたことがある。私は「損をしたくない」という気持ちが強すぎて、かえって無駄な支出をしていた。ポイントが貯まるから、送料無料になるから、セールだからと、必要でもないものを買う。結果的に、使わないものが部屋に溜まっていく。

ある週末、クローゼットを整理していて愕然とした。タグがついたままの服が何枚もあった。「これ、安かったんだよね」と思い出せるものばかり。でも、安くても着なければ、それは無駄金だった。むしろ、高くても何度も着る服のほうが、よっぽど価値がある。

こうして、私は「支出の本質」に向き合うようになった。アプリに記録するのは数字だけど、その数字の裏には、自分の価値観や習慣、心の弱さが透けて見えた。

自分なりに工夫したポイント

気づきを得てから、私は家計簿の使い方を工夫し始めた。ただ記録するだけでなく、自分なりのルールを作っていった。

最初に決めたのは「買う前に記録する」というルールだった。変な話だけど、これが効果的だった。例えば、ネットショッピングでカートに商品を入れたら、まず家計簿アプリを開いて、その金額を入力してみる。購入ボタンを押す前に、今月の支出総額に加算して表示させる。

そうすると、不思議なことに「本当に買いたいか」が見えてくる。「あ、これを買うと今月の食費が予算オーバーするな」と気づいたとき、冷静になれる。別に予算を厳密に守ろうとしているわけじゃない。ただ、「見える化」することで、自分の判断材料が増える。

次に工夫したのは、カテゴリーの再編成だった。アプリに最初から用意されている「食費」「交際費」「娯楽費」といったカテゴリーだけでは、私の実感と合わなかった。だから、自分で新しいカテゴリーを作った。

「心の栄養費」というカテゴリーを作った。ここには、朝のカフェのコーヒー、好きな作家の新刊、友達との食事などを入れた。これらは金額だけ見れば削れる支出かもしれない。でも、私の心を豊かにしてくれるものだから、「無駄」ではない。このカテゴリーは、罪悪感なくお金を使っていいエリアとして設定した。

逆に「なんとなく支出」というカテゴリーも作った。コンビニでのついで買い、衝動買いした服、使っていないサブスクなど。ここに分類される支出は、月末に見返して、本当に必要だったか考える。このカテゴリーだけは、次の月に減らす努力をする。

面白かったのは、「未来への投資」というカテゴリーも作ったこと。資格取得のための教材、スキルアップのためのオンライン講座、健康のためのジム代など。これらは支出だけど、将来の自分への投資だと考えて、別枠にした。このカテゴリーが増えることは、むしろ喜ばしいことだと捉えた。

もう一つの工夫は、「感情メモ」を残すことだった。支出を記録するとき、金額とカテゴリーだけでなく、そのとき何を感じていたかを一言メモする。「疲れていた」「寂しかった」「嬉しかった」など。

これが予想以上に役立った。月末に振り返ると、自分の消費パターンが見えてくる。「疲れていた」と書いた日は、コンビニでの無駄買いが多い。「寂しかった」と書いた日は、ネットショッピングで不要なものを買っている。感情と支出が連動していることに気づいた。

そこで、ストレスが溜まっている日は、買い物ではなく、他の方法で発散するようにした。散歩に行く、友達に電話する、お風呂にゆっくり浸かる。お金を使わなくても、気持ちを切り替える方法はたくさんあった。

週に一度、土曜日の朝に「家計簿タイム」を作ったのも良かった。コーヒーを淹れて、一週間の支出を振り返る。数字を眺めながら、「今週は外食が多かったな」「でも、久しぶりに友達と会えて楽しかった」と、評価するのではなく、ただ観察する。

大事にしたのは、自分を責めないこと。使いすぎた週があっても「ダメだな、私」とは思わない。「今週はこういう週だったんだな」と受け止める。家計簿は反省文ではなく、自分を知るためのツールだと考えた。

友達との会話も変わった。以前は「お金がない」と愚痴をこぼしていたけど、今は「今月はこれにお金を使ってるんだよね」と具体的に話せるようになった。すると、友達も「分かる! 私もそう」と共感してくれたり、「私はこうしてるよ」とアドバイスをくれたりした。

日常や生活でどう変わったか

家計簿をつけ始めて三ヶ月が経った頃、自分の日常が少しずつ変化していることに気づいた。劇的な変化ではない。でも、確実に何かが違っていた。

まず、買い物の仕方が変わった。以前はスーパーに行くとき、特に計画を立てずに「なんとなく」店内を回っていた。そして、目についたものをカゴに入れていた。結果、家に帰ると似たような食材がダブっていたり、使い切れずに腐らせてしまったりしていた。

今は、買い物に行く前にスマホのメモアプリに必要なものをリストアップする。そして、スーパーではそのリストだけを見て買う。最初は窮屈に感じたけど、慣れてくると逆に楽だった。悩む時間が減って、買い物がスムーズになった。そして何より、食品ロスが激減した。

面白い変化は、コンビニとの付き合い方だった。以前は毎日のように寄っていたコンビニに、週に1〜2回しか行かなくなった。別に「行かない」と決めたわけじゃない。ただ、必要がないときは寄らなくなった。

そして気づいたのは、コンビニに寄らないと時間に余裕ができるということだった。帰り道に寄らなければ、その分早く家に着く。10分、15分の違いだけど、その時間で洗濯物を畳んだり、明日の準備をしたり、好きな音楽を聴いたりできる。お金だけでなく、時間も節約していたんだと実感した。

職場でのランチも変化した。以前は「みんなが行くから」という理由で外食することが多かったけど、今は「今日は本当に外で食べたいか」を自問するようになった。そして、お弁当を持ってきている日は、「今日はお弁当なんだ」と断れるようになった。

不思議なことに、断っても人間関係は悪くならなかった。むしろ、「そうなんだ、偉いね」と言われることが多かった。自分が思っているほど、他人は気にしていないんだと分かった。

服を買うときの心境も大きく変わった。以前はセールやバーゲンがあると、「安いから」という理由で買っていた。クローゼットには着ない服が溢れていた。今は、「本当に気に入ったものだけ」を買うようになった。多少高くても、「これは長く着る」と思えるものを選ぶ。

結果的に、服の購入頻度は減ったけど、満足度は上がった。クローゼットを開けたとき、「着る服がない」と思わなくなった。全部、お気に入りの服だから。毎朝の服選びが楽しくなった。

友達との関係も少し変わった。以前は誘われれば何でも「行く行く!」と答えていた。断るのが苦手だった。でも、家計簿をつけることで、自分の優先順位が見えてきた。

本当に会いたい友達との食事には、惜しまずお金を使う。でも、義理で参加していた飲み会は、「今月は予定が詰まっててさ」と断れるようになった。そうすると、残った時間で本当に大切な人と深い時間を過ごせるようになった。

休日の過ごし方も変わった。以前は「なんとなく」ショッピングモールに行って、「なんとなく」ウィンドウショッピングをして、「なんとなく」何か買う、という過ごし方が多かった。でも今は、「今日は何をしたいか」を朝に決める。読書をする日、友達に会う日、家でゆっくりする日。意識的に選ぶようになった。

お金を使わない休日も増えた。図書館で本を借りて読んだり、近所を散歩したり、家で映画を観たり。「お金を使わない=つまらない」ではないことに気づいた。むしろ、お金を使わない日のほうが、ゆっくり時間が流れる感覚があった。

そして、何より大きな変化は、「お金がない」と言わなくなったことだった。以前は口癖のように言っていた。でも今は、自分のお金の流れが見えているから、「お金がない」んじゃなくて「今月はこれに使った」と言える。被害者意識がなくなった。

続けてみて見えてきたこと

半年が過ぎた頃、私はアプリの「半年レポート」機能を開いてみた。そこには、過去半年間の支出の推移がグラフで表示されていた。

最初の月は支出が27万円だった。二ヶ月目は23万円。三ヶ月目は21万円。そして今月は19万円。着実に減っている。でも、それよりも私が驚いたのは、支出の内訳の変化だった。

最初の月は「食費」が最も大きな割合を占めていた。次に「被服費」「娯楽費」と続く。でも、半年後の今月を見ると、「心の栄養費」というカテゴリーが上位に来ていた。「未来への投資」も増えている。一方で、「なんとなく支出」は半分以下に減っていた。

金額が減ったことも嬉しかったけど、それ以上に「自分の意思で使っている割合」が増えたことが嬉しかった。以前は、自分でもよく分からないうちにお金が消えていた。今は、一つ一つの支出に納得している。

面白い発見もあった。数字を眺めていて気づいたのは、「幸福度と支出額は比例しない」ということだった。例えば、最も支出が多かった最初の月は、実はあまり幸せを感じていなかった。買い物をしても、すぐに「これじゃない」感に襲われて、また別のものを買う。満たされない気持ちのまま、ただ支出が増えていた。

一方で、支出が減った今のほうが、日々の満足度は高い。朝のコーヒー、友達との食事、好きな本。一つ一つに意味があって、味わって楽しめている。「少なく持って、豊かに生きる」という言葉の意味が、ようやく分かった気がした。

ある日、最初に家計簿アプリを勧めてくれた同僚の美咲とランチをした。「ねえ、家計簿続いてる?」と聞かれて、「うん、毎日つけてるよ」と答えた。すると彼女は嬉しそうに笑って、「良かった! 私、あのとき無理やり勧めちゃったから、続かなかったらどうしようって思ってたんだ」と言った。

「全然、無理やりじゃなかったよ。むしろ、教えてくれて本当にありがとう」と伝えた。そして、この半年で気づいたことを話した。本当に無駄だった支出の正体は、金額の大きさじゃなくて、「自分の意思がない支出」だったこと。習慣や義理、見栄や不安から生まれる支出が、実は一番の無駄だったこと。

美咲は頷きながら聞いていた。「分かる。私も最初、同じことに気づいた。お金の使い方って、生き方そのものなんだよね」と言った。その言葉に、深く共感した。

家計簿をつけることで、私は自分自身と向き合うことになった。どんなときにストレスを感じるのか、何に幸せを感じるのか、何を大切にしているのか。支出の記録を通じて、自分の価値観が見えてきた。

そして気づいたのは、お金の管理は「我慢」ではないということ。本当に大切なものには、むしろ積極的にお金を使う。でも、そうでないものには使わない。その選択ができるようになることが、本当の意味での「お金の管理」なんだと理解した。

今でも完璧ではない。衝動買いをしてしまう日もあるし、「なんとなく支出」がゼロになったわけでもない。でも、それでもいいと思っている。大事なのは、完璧になることじゃなくて、自分の行動に気づいていること。そして、少しずつでも自分の意思で選択できるようになること。

最近、後輩から「お金の管理、どうやってますか?」と相談された。以前の私だったら、「いや、私も全然できてないよ」と答えていただろう。でも今は違う。「スマホの家計簿アプリ、使ってみたら?」と自信を持って勧められる。そして、「数字を記録するだけじゃなくて、自分と向き合うつもりでやってみて」と伝えた。

まとめ

あれから一年が経った今、家計簿をつけることは完全に習慣になった。朝、歯を磨くのと同じくらい自然に、支出を記録している。そして、週末の「家計簿タイム」は、私にとって大切な自分との対話の時間になった。

貯金額も確実に増えた。最初の目標だった「毎月貯金する」は達成できている。でも、それよりも大きな収穫があった。それは、「自分の人生を自分で選んでいる」という実感だ。

以前の私は、お金に振り回されていた。「お金がないから」「セールだから」「みんなが買ってるから」。そんな理由で、自分の意思とは関係なく、ただ流されて生きていた。

今は違う。一つ一つの支出に、自分の意思がある。これは必要だから買う。これは心を豊かにしてくれるから買う。これは未来のために投資する。そういう選択ができるようになった。

そして分かったのは、本当に無駄だった支出の正体は、「自分を見失っていた証拠」だったということ。なんとなく買ってしまうのは、自分が何を望んでいるのか分からなくなっているから。習慣で買ってしまうのは、立ち止まって考える余裕を失っているから。見栄で買ってしまうのは、自分に自信が持てていないから。

家計簿という小さなツールが、私にそのことを教えてくれた。数字は冷たく見えるけど、実は自分の心の動きを映す鏡だった。

これからも、私は家計簿をつけ続けると思う。完璧にやろうとは思わない。でも、自分と向き合う時間として、大切にしていきたい。そして、もし誰かが「お金がなくて困ってる」と言っていたら、そっとこの話をしてあげたいと思う。

「一度、記録してみたら? きっと、見えてくるものがあるから」と。

ポイント管理アプリで"失効ゼロ"になった日、私がまずやったこと

触れたきっかけと思ったこと

あれは確か、去年の9月だったと思う。いつものようにドラッグストアでレジを済ませて、レシートをもらった瞬間だった。店員さんが申し訳なさそうに「お客様、先月末で1,500ポイント失効しておりまして…」と言ったんだ。

え、1,500ポイント?私、頭が真っ白になった。1,500円分だよ。そんなに貯まってたなんて知らなかった。というか、完全に忘れてた。

家に帰ってから、財布の中のポイントカードを全部出してみた。ドラッグストア、家電量販店、スーパー、コンビニ、カフェ、書店、美容院…数えたら12枚もあった。スマホアプリで管理してるポイントも含めたら、軽く20種類は超えてる。楽天ポイント、dポイント、Tポイント、Pontaポイント、それから各店舗独自のポイントプログラム。もう何がなんだか分からなくなっていた。

正直、ポイントカードって「あったらラッキー」くらいにしか思ってなかった。レジで「ポイントカードはお持ちですか?」って聞かれたら出すけど、貯まったポイントがいくらあるのか、いつまで有効なのかなんて、ほとんど気にしたことがなかった。

でも、1,500ポイントを失ったことで、妙に悔しくなってきたんだ。考えてみれば、あれは私が頑張って働いて稼いだお金で買い物をして、コツコツ貯めたポイントなわけで。それを何もせずに消滅させてしまうなんて、もったいない以外の何物でもない。

そんなとき、友人のユキが「私、ポイント管理アプリ使ってるよ。失効日教えてくれるから超便利」とサラッと言ったんだ。ポイント管理アプリ?そんなものがあるのか。私はスマホで早速検索してみた。すると、いくつか出てきた。レビューを読みながら、「これなら私でも使えそうかな」と思えるアプリをダウンロードした。それが、私とポイント管理アプリとの出会いだった。

ダウンロードした瞬間は、正直「本当にこれで変わるのかな」と半信半疑だった。今まで何度もダイエットアプリとか家計簿アプリとかダウンロードして、結局三日坊主で終わってきた私だ。でも、1,500ポイントを失った悔しさが、背中を押してくれた。

最初に戸惑った体験

アプリを開いて、まず目に入ったのは「ポイントを登録しよう!」という明るいメッセージだった。よし、やるぞと意気込んで、財布から全部のポイントカードを出して、登録を始めた。

ところが、これが思った以上に大変だった。まず、カード番号を入力する欄があるんだけど、どこに書いてあるのか分からないカードがいくつもあった。バーコードの下の数字なのか、裏面の小さく印字された番号なのか。カードによって全然違うんだよね。

それから、ポイント残高を入力する画面になったんだけど、そもそも今何ポイント貯まってるのか分からない。カードの裏面を見ても書いてないし、レシートももう捨てちゃってる。仕方なく、各店舗のウェブサイトにアクセスして、会員ログインして、残高を確認して…という作業を繰り返した。

ここで最初の壁にぶつかった。ドラッグストアのポイントカード、ログインIDとパスワードが分からない。「パスワードをお忘れの方はこちら」をクリックして、メールアドレスを入力したら「このメールアドレスは登録されていません」と表示された。え、じゃあどのメールアドレスで登録したんだっけ?昔使ってた古いアドレスかもしれない。でももうそのメールアカウント、使ってないんだよな。

結局、そのドラッグストアのポイントは諦めて、次回買い物したときに店員さんに聞くことにした。こんな調子で、全部のポイントを登録するのに、実に3日もかかってしまった。正直、途中で「もういいや」って投げ出しそうになったことも何度もあった。

やっと全部登録し終わったと思ったら、今度は「有効期限」の入力でつまずいた。アプリには「ポイント失効日を入力してください」という項目があるんだけど、そもそもポイントの有効期限がいつなのか分からないカードだらけ。

家電量販店のポイントは「最終利用日から1年間」と書いてある。最終利用日っていつだっけ?レシート見ないと分からない。でも、レシートなんてもう残ってない。スーパーのポイントは「年度末まで有効」って書いてあるけど、年度末って3月末のこと?それとも12月末?

カフェのポイントカードに至っては、どこにも有効期限が書いてない。ということは無期限なの?それとも店員さんに聞かないと分からない系?もう、分からないことだらけで、頭がパンクしそうだった。

さらに厄介だったのが、ポイントの種類が複雑なやつ。楽天ポイントには「通常ポイント」と「期間限定ポイント」があって、期間限定ポイントの方が先に失効する。しかも、キャンペーンごとに失効日が違う。アプリに一つ一つ登録していくのが、本当に面倒くさかった。

「こんなに複雑なら、もうポイントなんて貯めなくていいや」と思った瞬間もあった。でも、そこでまた頭に浮かんだのが、あの失った1,500ポイントのこと。ここで諦めたら、また同じことを繰り返すだけだ。私は歯を食いしばって、一つ一つ、丁寧に登録していった。

試行錯誤しながら気づいたこと

なんとか主要なポイントを登録し終わって、アプリのホーム画面を見たとき、ちょっとした衝撃を受けた。画面には「失効まで残り7日」という赤い警告マークがついたポイントが3つも表示されていたんだ。

一つは書店のポイント。580ポイントも貯まってたのに、あと1週間で消えるところだった。もう一つはコンビニのポイント。これは320ポイント。そして三つ目が、美容院のポイントで、これが一番大きくて2,000ポイントも貯まっていた。

合計すると、2,900ポイント。もしこのアプリを使い始めていなかったら、私はこの2,900円分を、何も知らないまま失っていたことになる。背筋が寒くなった。

すぐに行動した。書店のポイントは、ずっと欲しかった料理本を買うのに使った。コンビニのポイントは、いつも買ってるコーヒーとお菓子で消費。美容院のポイントは、次回予約のときにトリートメントを追加することにした。

この経験で、大きなことに気づいた。ポイントって、「貯める」ことばかり意識してたけど、大事なのは「使う」ことなんだって。どんなにたくさん貯めても、失効しちゃったら意味がない。それよりも、失効前にきちんと使い切ることの方が、よっぽど重要なんだ。

アプリを使い始めて1ヶ月くらい経った頃、もう一つ重要なことに気づいた。それは、「自分が本当によく使う店」と「たまにしか行かない店」のポイントを、ちゃんと分けて考えるべきだということ。

私の場合、週に2〜3回は行くドラッグストアとスーパーのポイントは、放っておいてもどんどん貯まるし、買い物のたびに有効期限も延びていく。だから、そこまで神経質に管理しなくても大丈夫だった。

でも、2〜3ヶ月に一度しか行かない家電量販店とか、半年に一回の美容院とか、そういう「たまにしか使わない店」のポイントは、油断するとすぐ失効してしまう。だから、アプリで失効日の通知を「30日前」に設定して、早めに気づけるようにした。

さらに気づいたのは、ポイントの「還元率」よりも「使いやすさ」の方が大事だということ。以前の私は、「還元率1%」とか「ポイント5倍デー」とかいう言葉に釣られて、あちこちの店でポイントカードを作っていた。でも、結果的にポイントが分散しすぎて、どこのポイントも中途半端にしか貯まらず、失効ばかり繰り返していた。

アプリで全体を見渡せるようになって分かったのは、還元率が少し低くても、自分がよく使う店のポイントに集中した方が、結果的にお得だということ。私は思い切って、ほとんど行かない店のポイントカードを整理することにした。財布から5枚、アプリからも3つのポイントプログラムを削除した。すると、管理がグッと楽になった。

自分なりに工夫したポイント

アプリを使い続けるうちに、自分なりのルールというか、コツみたいなものが見えてきた。

まず一つ目は、「失効日の30日前通知」に加えて、「失効日の7日前通知」も設定したこと。30日前の通知で「そろそろ使わなきゃ」と意識できるんだけど、忙しいとつい忘れてしまう。だから、7日前にもう一度通知が来るように設定した。これで、ほぼ確実にポイント失効を防げるようになった。

二つ目は、「ポイント使用予定日」を自分でメモするようにしたこと。アプリにはメモ機能がついてたから、それを活用した。例えば、書店のポイントなら「来月発売の○○の本を買う」とか、ドラッグストアなら「シャンプーがなくなったら使う」とか。こうやって具体的な使い道を決めておくと、失効前にちゃんと使うことができる。

三つ目の工夫は、「ポイント棚卸しデー」を月に一回作ったこと。毎月1日に、アプリを開いて全てのポイント残高と失効日をチェックする。この習慣をつけたら、ポイント管理が本当に楽になった。最初は面倒に感じたけど、慣れてくると10分もあれば終わる作業だ。

それから、買い物の仕方も工夫するようになった。以前は、安い店を探して色んな店をハシゴしていたけど、今は「ポイントが貯まりやすい店」を優先するようになった。例えば、同じ商品が10円高くても、ポイントが5倍つく日なら、結果的にそっちの方がお得になる。アプリで計算できるから、損しない選択ができるようになった。

あと、面白い発見だったのが、「ポイント交換」の活用。私が使っていたあるポイントは、他社のポイントに交換できることを知った。たまにしか行かない店で中途半端に貯まっていた800ポイントを、よく使う共通ポイントに交換したら、すごく便利だった。ポイントを一箇所に集約できると、管理も楽だし、失効のリスクも減る。

それと、家族とのポイント共有も試してみた。夫とは別々にポイントを貯めていたんだけど、同じスーパーのポイントなら合算できることが分かって、私のカードに統一した。そうしたら、貯まるスピードが倍になって、より大きな買い物にポイントを使えるようになった。

最後に、これは小さなことだけど、レシートをもらったらすぐに確認する習慣をつけた。レシートには、今回貯まったポイント数と現在の残高、そして次回失効予定のポイント数が印字されていることが多い。それをその場で見て、必要ならアプリに記録する。これだけで、かなり精度の高い管理ができるようになった。

日常や生活でどう変わったか

ポイント管理アプリを使い始めて半年くらい経った頃、ふと気づいたことがある。財布の中が、すごくスッキリしていたんだ。

以前はパンパンに膨らんでいた財布。その原因の大半が、使うかどうかも分からないポイントカードの束だった。でも今は、本当によく使う3枚のカードだけになった。他のポイントは全部スマホアプリに集約したから、財布を開くたびにストレスを感じることがなくなった。

買い物の仕方も変わった。以前は、レジで「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれて、財布の中をゴソゴソ探して、「あ、家に忘れました」とか言って諦めることが多かった。でも今は、スマホのアプリをサッと開くだけ。スマートだし、ポイントを取りこぼすこともなくなった。

それから、無駄な買い物が減った。これは予想外の変化だった。以前は、「ポイント5倍デー」とか「ポイント還元率アップキャンペーン」みたいな言葉につられて、必要でもないものまで買っていた。でも、アプリでポイント全体を管理するようになって、「今、本当に必要なのか」を冷静に考えられるようになったんだ。

例えば、ドラッグストアで「今日はポイント10倍!」というポップを見ても、「でも今、うちには同じシャンプーの在庫がまだある。次に買うのは来月でいい」と判断できるようになった。ポイントに振り回されるんじゃなくて、ポイントを上手に使いこなしている感覚。これが気持ちいい。

夫との会話も変わった。以前は、「また無駄遣いして」とか「ポイントカードばっかり増やして」と小言を言われることが多かったんだけど、今は「今月、ポイントで5,000円分も得したよ」とか「来月失効するポイントがあるから、週末に家電見に行こう」とか、前向きな会話ができるようになった。

実際、ポイント管理アプリを使い始めてから、年間でどれくらい得したか計算してみたんだ。そうしたら、失効を防げたポイントだけで約4万円分。それに加えて、ポイントを計画的に使えるようになったことで、実質的な節約効果はもっと大きいと思う。

友達にも勧めるようになった。最初にポイント管理アプリのことを教えてくれたユキはもちろん、他の友達にも「これ、本当に便利だよ」って話すようになった。みんな最初は「面倒くさそう」とか「設定が大変そう」って言うんだけど、私の失効ゼロの話をすると、興味を持ってくれる。

特に、同じように子育てしている友達のアヤは、すぐにアプリをダウンロードしてくれた。彼女も私と同じで、忙しくてポイント管理なんてしてる暇がないタイプだったんだけど、「これなら私にもできそう」って言ってくれた。後日、「2,000ポイント失効する前に気づけた!ありがとう!」ってLINEが来たときは、すごく嬉しかった。

続けてみて見えてきたこと

アプリを使い始めて1年が経った今、改めて振り返ってみると、ポイント管理って単なる「節約術」じゃないなって思う。

確かに、失効を防いで、お得に買い物できるようになった。それは事実だし、嬉しい変化だった。でも、それ以上に大きかったのは、「自分のお金の使い方」を客観的に見られるようになったことだと思う。

ポイントって、自分がどこで、何に、いくら使っているかの記録なんだよね。アプリを見ていると、「あ、私、最近ドラッグストアばっかり行ってるな」とか「この3ヶ月、書店に全然行ってないな」とか、そういうことが見えてくる。

そうすると、「最近、仕事が忙しくて本を読む時間がないな。週末は本屋に行ってみようかな」とか、「ドラッグストアで日用品ばかり買ってる。もう少し自分のための買い物もしたいな」とか、生活を見直すきっかけになった。

それから、「もったいない精神」との付き合い方も変わった。以前の私は、ポイントを失効させることを恐れるあまり、必要でもないものまで買って、結果的に無駄遣いをしていた。でも今は、「ポイントはあくまで手段であって、目的じゃない」と割り切れるようになった。

例えば、失効間近のポイントが500ポイントあったとする。でも、その店で今、欲しいものが何もない。以前なら、「もったいないから何か買わなきゃ」って無理に使っていた。でも今は、「500円分損するけど、それでいいや」と思えるようになった。無理して不要なものを買う方が、よっぽど無駄だから。

ただ、そういう「諦める判断」ができるようになったのも、アプリでちゃんと管理しているからこそだと思う。無意識に失効させるのと、意識的に諦めるのは、全然違う。前者は単なる無駄だけど、後者は自分で選んだ結果だから、後悔がない。

もう一つ、続けてみて分かったのは、「完璧を目指さなくていい」ということ。私も最初の数ヶ月は、全てのポイントを完璧に管理しようと頑張っていた。でも、それだと疲れてしまう。だから今は、「メインで使う5つのポイントだけは絶対に失効させない。他は、まあ仕方ないか」くらいの気持ちでやっている。

そのくらいの緩さが、長く続けるコツなんだと思う。実際、この1年間で失効させてしまったポイントもある。300ポイントくらい。でも、以前のように何千ポイントも無意識に失効させることはなくなった。それだけでも、大きな進歩だと思っている。

最近、面白いことに気づいた。ポイント管理を通じて、「未来の自分へのプレゼント」という考え方を持てるようになったんだ。ポイントを貯めて、計画的に使うって、つまり「今の自分が、未来の自分のために準備しておく」ってことなんだよね。

例えば、今月コツコツ貯めたポイントで、来月、ちょっといい化粧品を買う。それって、今の私から未来の私への小さなプレゼント。そう考えると、ポイントを貯めることも、管理することも、なんだか楽しくなってきた。

まとめ

1,500ポイントを失ったあの日から、もう1年以上が経った。今、私の財布はスッキリしていて、スマホのポイント管理アプリには、失効日まで余裕のあるポイントが並んでいる。「失効まで残り7日」なんて赤い警告は、もうずっと見ていない。

正直に言うと、最初は面倒くさかった。カードを一枚一枚登録して、残高を調べて、有効期限を確認して。「こんなの続くわけない」って何度も思った。でも、続けてよかったと心から思っている。

今では、ポイント管理アプリは私の生活に欠かせないツールになった。毎月1日の「ポイント棚卸しデー」も、もはや習慣になっている。買い物に行く前に、サッとアプリを開いて確認する。それだけで、失効のリスクはほぼゼロになった。

何より嬉しいのは、「お金を無駄にしている」という罪悪感がなくなったこと。以前は、ポイントを失効させるたびに、「あー、またやっちゃった」って自己嫌悪に陥っていた。でも今は、自分のお金としっかり向き合えている実感がある。

ポイント管理って、結局のところ、お金との付き合い方なんだと思う。ポイントもお金も、使ってこそ価値がある。貯めることが目的じゃなくて、自分や家族のために、いいタイミングで使うことが大事なんだ。

もしあなたが、財布の中にポイントカードがたくさん入っていて、「いつか使おう」と思いながら結局失効させてしまっているなら、一度ポイント管理アプリを試してみてほしい。最初の設定は確かに面倒かもしれない。でも、その数時間の手間で、これから先ずっと、ポイントを無駄にしない生活が手に入る。

私にとって、あの1,500ポイントの失効は、本当に貴重な授業料だった。あれがなければ、私は今でもポイントカードを放置して、無駄に失効させ続けていたと思う。そう考えると、あの1,500円は決して無駄じゃなかった。私に大切なことを教えてくれた、意味のある損失だったんだと思っている。

今日も、スマホの通知が来た。「美容院のポイント、失効まで残り28日です」って。よし、そろそろ予約しようかな。髪も伸びてきたし、ちょうどいいタイミングだ。ポイントを無駄にしないだけじゃなくて、自分を大切にする時間も作れる。これが、私にとってのポイント管理アプリの一番の価値かもしれない。

Canvaでサムネを作り始めたら、動画づくりが少し楽しくなった理由

触れたきっかけと思ったこと

動画を投稿し始めて三ヶ月が経った頃、自分の動画一覧をスマホで眺めていて、なんとも言えない気持ちになった。内容には自信があるつもりだったのに、なぜかクリックしたくならない。サムネイルがどれも似たり寄ったりで、正直なところ地味だった。文字を入れただけの簡素なものや、動画の一場面をそのまま切り取っただけのものばかり。他の人の動画と並んだとき、明らかに埋もれている。

それまで動画編集ソフトでサムネイルも一緒に作っていた。動画の書き出しが終わったら、ついでにサムネイルも適当なフレームから作る。そんな流れが当たり前になっていて、特に疑問も持たなかった。でも、再生数が伸び悩んでいる現実を前にして、もしかしたらこのサムネイルが原因なんじゃないかと思い始めた。

友人に相談したら、「Canvaって知ってる?」と聞かれた。名前だけは聞いたことがあった。デザインツールらしいということは知っていたけれど、デザインなんて専門的なことをやったことがない自分には関係ないと思っていた。でも友人は「簡単だよ、無料でも使えるし」と言う。正直、半信半疑だった。デザインツールって難しいんじゃないの? Photoshopみたいな専門ソフトは触ったこともないし、センスもない。

それでも、このままサムネイルが地味なままでいるのも嫌だった。動画の内容を頑張って作っているのに、入り口で人が入ってこないのはもったいない気がした。とりあえず試してみるだけならタダだし、ダメなら元のやり方に戻ればいい。そう思って、その日の夜にCanvaのサイトを開いてみた。

登録は思ったより簡単だった。メールアドレスを入れて、いくつか質問に答えるだけ。あっという間にトップ画面が表示された。画面にはたくさんのテンプレートが並んでいて、正直、圧倒された。こんなにあるのか。どこから手をつけていいのかわからない。でも、検索バーに「YouTubeサムネイル」と入力してみたら、サムネイル用のテンプレートがずらっと出てきた。

プレビューを見ているだけで、なんだか楽しくなってきた。プロが作ったようなデザインが、テンプレートとして用意されている。文字の配置も、色の組み合わせも、全部考えられている。これを自分の動画に合わせて変えていけばいいのか。そう思ったら、少しだけ希望が見えた気がした。それまで「サムネイル作成=面倒な作業」だったのに、この瞬間から「ちょっと面白いかも」に変わった。最初のきっかけなんて、そんな些細なものだった。

最初に戸惑った体験

実際にテンプレートを選んで編集を始めてみたら、予想以上に戸惑うことが多かった。画面の使い方自体はシンプルだったけれど、どこをどう変えればいいのか、何をすれば「良いサムネイル」になるのかが全くわからなかった。

最初に選んだテンプレートは、派手な色使いで文字が大きく配置されているものだった。なんとなくインパクトがありそうだと思って選んだ。テンプレート上の文字をクリックすると、簡単に編集できた。自分の動画タイトルを入力してみる。でも、なんだか違う。文字数が合わないのか、レイアウトが崩れてしまった。長すぎる文字が枠からはみ出してしまって、バランスが悪い。

フォントを変えようとしたら、選択肢が多すぎて選べなかった。日本語フォントだけでも何十種類とある。明朝体、ゴシック体、手書き風、ポップ体。どれを選べば自分の動画に合うのか見当もつかない。適当に選んでは戻し、また別のフォントを試す。そんなことを繰り返しているうちに、時間だけが過ぎていった。

色も同じだった。背景色を変えようとしたら、カラーパレットが出てきて、無限の選択肢があるように思えた。テンプレートの色はオレンジだったけれど、自分の動画は落ち着いた雰囲気だから青がいいかもしれない。でも青にしたら、文字の色も変えないと読みにくい。文字を白にしたら、今度は影が足りない気がする。一つ変えると、他のバランスも変わってしまう。デザインってこんなに難しいのかと、途方に暮れた。

画像の配置にも苦労した。テンプレートには写真が入っていたけれど、それを自分の素材に差し替えたい。手持ちの写真をアップロードして、テンプレートの画像と入れ替えた。でも、サイズが合わない。画像が引き伸ばされて変な比率になってしまったり、逆に小さすぎて余白ができてしまったり。トリミングの仕方もよくわからなくて、何度もやり直した。

一番困ったのは、全体の統一感だった。テンプレートを使っているのに、自分が手を加えると急に素人っぽくなってしまう。文字を追加したり、色を変えたりするたびに、なんだかちぐはぐになっていく。プロが作ったテンプレートの良さが、自分の編集で台無しになっている気がした。

何時間もかけて作ったサムネイルを保存して、改めて見てみた。正直、微妙だった。確かに前よりは派手になったけれど、何かが違う。インパクトはあるけれど、自分の動画の雰囲気と合っていない気がした。派手すぎて、逆に嘘っぽく見える。これを使って本当にいいのかと迷った。

結局、その日はそのまま保存だけして、実際に使うのは先延ばしにした。もっと他のテンプレートを試してみようと思った。自分の動画に合うデザインがあるはずだ。最初の一回目で諦めるのは早い。でも同時に、思っていたより難しいという現実も突きつけられた。簡単にプロっぽいサムネイルが作れると期待していたけれど、そう甘くはなかった。

寝る前に、もう一度Canvaを開いて、別のテンプレートを眺めた。今度はシンプルなデザインを選んでみようと思った。派手さよりも、自分らしさを出せるものがいい。テンプレートの中には、落ち着いた色合いで、余白を活かしたデザインもあった。次はあれを試してみよう。そう思ったら、少しだけ前向きな気持ちになれた。失敗したけれど、まだ始まったばかりだ。

試行錯誤しながら気づいたこと

次の週末、改めてCanvaに向き合った。今度はシンプルなテンプレートから始めることにした。白い背景に、大きめの文字が一つ。写真が半分を占めるレイアウト。これなら自分でも扱いやすそうだと思った。

実際に編集を始めてみると、前回よりもスムーズに進んだ。要素が少ない分、迷う場面が減った。文字を入力して、フォントを選ぶ。今回はゴシック体の中でも、太めのものを選んだ。文字数が少ないから、多少大きくしても読みやすい。色は紺色にしてみた。黒だと重すぎるし、青だと軽すぎる。紺色はちょうどいいバランスだった。

写真を差し替えるとき、ふと気づいたことがあった。テンプレートの写真って、ただ綺麗なだけじゃないんだと。配置に意味がある。例えば、人物が写っている写真なら、顔の向きが文字の方を向いている。視線誘導というやつだ。自分の写真を選ぶときも、それを意識してみた。被写体が中央を向いている写真を選んだら、文字との関係が自然になった。

それから、余白の使い方にも気づいた。最初の頃は、空いているスペースがもったいなくて、何か埋めたくなっていた。文字を増やしたり、装飾を追加したり。でもシンプルなテンプレートを使ってみて、余白があるからこそ見やすいんだと分かった。情報が少ない方が、かえって目に入りやすい。全部詰め込もうとしなくていいんだ。

色の組み合わせについても、少しずつ理解が深まった。Canvaには「カラーパレット」という機能があって、テンプレートで使われている色が一覧で見られる。その色から選べば、統一感が保てる。自分で一から色を選ぶより、ずっと失敗が少ない。ああ、だからプロのデザインは綺麗なのかと納得した。色のルールを守っているからだ。

何枚かサムネイルを作っているうちに、テンプレートをそのまま使うんじゃなくて、自分なりにアレンジする楽しさが分かってきた。例えば、文字の位置を少しずらしてみる。背景の色を微妙に変えてみる。小さな変化だけれど、それだけで印象が変わる。自分の動画に合わせて調整していく過程が、なんだか創作活動みたいで楽しかった。

ある日、動画のシリーズ物を作ることになった。連続した内容の動画だから、サムネイルも統一感を持たせたい。Canvaで同じテンプレートを使って、色だけを変えてみることにした。第一回は青、第二回は緑、第三回は赤。文字と配置は同じで、色だけが違う。作っている最中、これはうまくいきそうだという予感がした。

実際にアップロードして、自分のチャンネルページを見たとき、思わず笑ってしまった。綺麗に並んでいる。統一感があって、シリーズ物だとすぐにわかる。今までの動画一覧とは明らかに違う。こんなに印象が変わるのかと驚いた。

それから、他の人のサムネイルを見る目も変わった。人気YouTuberのサムネイルを改めて観察してみると、みんなルールを持っていることに気づいた。文字の配置が決まっている人、使う色を絞っている人、写真の切り取り方にこだわっている人。一見バラバラに見えても、実は統一感があるんだ。それがブランディングになっている。

自分もそういうルールを作ってみようと思った。文字は画面の下三分の一に配置する。背景は寒色系で統一する。写真は必ず人物を入れる。小さなルールだけれど、それを守るだけで、自分らしさが出るような気がした。

試行錯誤の中で一番大きな気づきは、完璧を目指さなくていいということだった。最初の頃は、プロみたいなサムネイルを作ろうとして力んでいた。でも、自分は動画クリエイターであって、デザイナーじゃない。サムネイルは動画への入り口であって、作品そのものじゃない。そう割り切ったら、気持ちが楽になった。動画の内容を正直に伝えられるサムネイルであればいい。嘘をついてまで派手にする必要はない。

そう思えるようになってから、サムネイル作りが苦痛じゃなくなった。むしろ、動画を作り終えた後のちょっとしたご褒美みたいに感じられるようになった。今日はどんなサムネイルにしようか。どの写真を使おうか。考えること自体が楽しくなってきた。

自分なりに工夫したポイント

何枚もサムネイルを作っているうちに、自分なりのやり方やこだわりが生まれてきた。最初は手探りだったけれど、だんだんと「自分のパターン」が見えてきた。

まず、テンプレートの選び方を変えた。派手なものやトレンドっぽいものよりも、自分の動画の雰囲気に合うものを優先するようにした。自分の動画は解説系が多いから、清潔感があって、文字が読みやすいデザインを選ぶ。逆に、エンタメ系の動画のときは、少し遊び心のあるデザインにする。動画の内容に合わせてテンプレートを使い分けるようになった。

文字の入れ方にも工夫をした。最初の頃は、動画タイトルをそのまま入れていた。でも、タイトルが長いと文字が小さくなってしまって読みにくい。だから、サムネイル用にタイトルを短縮するようにした。キーワードだけを抜き出す。「〜する方法」は「〜のコツ」に言い換える。文字数を減らすことで、フォントサイズを大きくできる。スマホで見たときの視認性が格段に上がった。

色使いについては、自分なりのルールを作った。メインカラーは三色まで。それ以上使うとごちゃごちゃする。そして、必ず一つは落ち着いた色を入れる。派手な色だけだと目がチカチカするから、グレーやベージュを入れてバランスを取る。Canvaのカラーパレット機能で、補色や類似色を確認しながら選ぶようにした。

写真の選び方も変えた。動画の一場面をそのまま使うんじゃなくて、サムネイル用に別撮りすることもあるようになった。表情や構図を意識して撮る。笑顔よりも、真剣な表情の方がクリックされやすいと聞いて、実際に試してみた。あるいは、驚いた表情や、指さしているポーズ。少し演技っぽくなるけれど、サムネイルとしては効果的だった。

それから、文字に影をつけることの重要性にも気づいた。背景が明るい場合、白い文字は読みにくい。でも影をつければ、どんな背景でも文字が浮き上がる。Canvaでは文字を選択して、「エフェクト」から簡単に影がつけられる。この小さな工夫で、プロっぽさが増した気がした。

レイヤーの重ね方にも慣れてきた。最初の頃は、テンプレートの構造を理解していなくて、要素を動かすたびにレイアウトが崩れていた。でも、レイヤーの概念が分かってからは、自由に編集できるようになった。背景、写真、文字、装飾。それぞれが別のレイヤーになっている。順番を入れ替えたり、透明度を調整したり。細かい調整ができるようになって、表現の幅が広がった。

時間をかけすぎないことも工夫の一つだった。最初の頃は一枚のサムネイルに数時間かけていたけれど、それでは本末転倒だ。動画編集に時間をかけるべきなのに、サムネイルに時間を取られてしまっては意味がない。だから、制限時間を決めた。一枚につき三十分まで。時間内に完成させる。そう決めたら、逆に集中できるようになった。迷っている時間がもったいないから、直感で決める。その方がかえって良いサムネイルができることもあった。

保存する前に、必ずスマホで確認するようにもした。パソコンの画面で見ると綺麗でも、スマホで見ると文字が小さすぎることがある。実際にスマホで見て、読めるかどうか、インパクトがあるかどうかをチェックする。これは友人からのアドバイスだったけれど、本当に役立った。今の時代、ほとんどの人がスマホで動画を見るんだから、スマホでの見え方が一番重要だ。

もう一つ、自分の中で大事にしているのは、嘘をつかないことだった。サムネイルで過度に期待させて、実際の動画内容と違っていたら、視聴者をがっかりさせてしまう。派手なサムネイルを作りたい気持ちはあるけれど、動画の内容を正直に表現することを優先した。地味でもいいから、嘘がないサムネイルにする。そう決めてから、作るときの迷いが減った。

こうした工夫は、一度に思いついたわけじゃない。失敗したり、他の人のサムネイルを観察したり、少しずつ試していく中で身についていった。今でも完璧だとは思っていないけれど、自分なりのスタイルができてきたことは確かだ。

実際の場面でどう役立ったか

Canvaでサムネイルを作るようになってから、具体的な変化がいくつもあった。数字として表れたものもあれば、気持ちの面で感じたこともあった。

一番わかりやすかったのは、クリック率の変化だった。YouTubeのアナリティクスを見ると、インプレッション数に対してどれくらいクリックされたかが分かる。サムネイルを変える前は、クリック率が2%台だった。百人が目にして、二人がクリックする程度。でも、Canvaで作ったサムネイルに変えてから、少しずつ上がっていった。最初は3%、次は4%。ある動画では6%を超えた。

数字だけ見ればわずかな差だけれど、体感としては大きかった。同じ内容の動画なのに、サムネイルを変えただけで人が入ってくる。それまで埋もれていた過去の動画も、サムネイルを作り直してみたら、再び再生されるようになった。動画の内容が良くても、入り口が悪ければ見てもらえない。逆に、入り口さえしっかりしていれば、中身を見てもらえるチャンスが増える。当たり前のことだけれど、それを実感として理解できた。

コメントも変わった。「サムネイルが気になってクリックしました」と書かれることが増えた。あるいは、「最近サムネイルが綺麗になりましたね」と言ってもらえることもあった。見てくれている人は、ちゃんと気づいてくれるんだと嬉しくなった。自分では些細な変化だと思っていたけれど、視聴者には伝わっていたんだ。

シリーズ物の動画では、特に効果を感じた。統一感のあるサムネイルにしたことで、「続きが気になる」と思ってもらえるようになった。一つの動画を見た人が、関連動画として表示された次の動画もクリックしてくれる。サムネイルが揃っているから、シリーズだとすぐにわかる。視聴者の導線がスムーズになった。

動画投稿のモチベーションにも影響があった。以前は、動画が完成しても、サムネイル作りが億劫で投稿を先延ばしにしてしまうことがあった。でも今は、サムネイル作りも含めて楽しみになっている。動画を作り終えたら、「さて、今回はどんなサムネイルにしようか」とワクワクする。その工程自体がクリエイティブな時間になった。

他のクリエイターとの交流でも役立った。SNSで動画を宣伝するとき、サムネイルが綺麗だとシェアされやすい。他の人が「このサムネイル素敵ですね」と反応してくれる。そこから会話が生まれて、つながりが広がった。サムネイルがコミュニケーションのきっかけになるなんて、思ってもみなかった。

仕事の依頼が来たときも、サムネイル作りの経験が役立った。企業から動画制作の相談を受けたとき、サムネイルも含めて提案できた。Canvaで作ったサンプルを見せたら、「このクオリティなら安心です」と言ってもらえた。動画編集だけじゃなく、サムネイルも含めたトータルの提案ができることが、自分の強みになった。

個人的に一番嬉しかったのは、家族や友人からの反応だった。自分の動画を見せたとき、「サムネイルがプロっぽいね」と言われた。それまでは「頑張ってるね」くらいのリアクションだったのに、明らかに印象が変わった。素人っぽさが抜けて、ちゃんとした動画に見えるようになったんだと実感した。

ある日、昔の動画のサムネイルと、今の動画のサムネイルを並べて見比べてみた。わずか数ヶ月の違いなのに、別人が作ったみたいに違う。昔のサムネイルは、今見ると恥ずかしくなるくらい地味で雑だった。でもその比較が、自分の成長を感じさせてくれた。Canvaを使い始めたことで、確実にスキルが上がっている。

実際の場面で役立ったのは、技術的なことだけじゃなかった。サムネイルを作る時間が、自分の動画を客観的に見つめ直す時間にもなった。「この動画の一番の魅力は何だろう」「どんな人に見てほしいんだろう」。サムネイルを作りながら、動画の核心を考える。その過程で、自分の動画作りに対する姿勢も変わっていった気がする。

続けてみて変化したこと

Canvaでサムネイルを作り続けて半年が経った頃、自分でも驚くような変化に気づいた。サムネイル作りが習慣になっただけじゃなく、動画制作全体に対する考え方が変わっていた。

一番大きな変化は、企画段階からサムネイルを意識するようになったことだった。以前は、動画を作り終えてから「さて、サムネイルどうしよう」と考えていた。でも今は、企画を考える時点で「このテーマならサムネイルはこんな感じかな」とイメージしている。サムネイルで表現できないテーマは、そもそも動画として弱いんじゃないかと思うようになった。

例えば、「最近感じたこと」みたいな漠然としたテーマは、サムネイルにしづらい。でも「〇〇して気づいた三つのこと」なら、数字も入るし、具体性がある。サムネイルも作りやすい。企画の時点でサムネイルを意識することで、テーマ自体が明確になる。結果的に、動画の内容も分かりやすくなった。

撮影の仕方も変わった。サムネイル用の素材を意識して撮るようになった。動画の中で使う映像だけじゃなく、サムネイルに使えそうなカットも撮る。表情のバリエーションを増やしたり、構図を変えてみたり。編集のときに「サムネイルに使える素材がない」と困ることがなくなった。

色に対する感覚も鋭くなった。街を歩いていても、看板やポスターの配色が気になるようになった。「この組み合わせは読みやすいな」とか、「この色は目立つけど品がある」とか。日常の中でデザインを観察する癖がついた。それがサムネイル作りにもフィードバックされて、色選びのセンスが少しずつ磨かれていった気がする。

他の人の動画を見るときの視点も変わった。内容だけじゃなく、サムネイルにも注目するようになった。人気の動画はどんなサムネイルにしているのか。文字の大きさは? 色使いは? 写真の選び方は? 研究するように見るようになった。真似するんじゃなくて、学ぶ。良いと思った要素を自分なりに取り入れてみる。そうやって引き出しが増えていった。

意外だったのは、Canvaでサムネイル以外のものも作るようになったことだった。SNS用の投稿画像や、動画の中で使う字幕テロップのデザイン。最初はサムネイル専用だと思っていたけれど、実はいろんなことができるツールだと気づいた。動画のエンドカードもCanvaで作ってみたら、統一感が出て良かった。一つのツールでいろんなデザインができる便利さを知った。

チャンネル全体のブランディングにも意識が向くようになった。サムネイルの統一感が、チャンネルの個性になる。自分のチャンネルを訪れた人が、「このチャンネルはこういう雰囲気なんだな」と一目で分かるようにしたい。そのためには、サムネイルだけじゃなく、チャンネルアートやプロフィール画像も揃える必要がある。全部Canvaで作ることで、トータルのデザインに一貫性が生まれた。

動画づくりに対する自信も少しずつついてきた。サムネイルがしっかりしていると、動画全体がプロっぽく見える。それが自分の自信にもつながる。「ちゃんとした動画を作っている」という実感が持てる。その自信が、動画の企画や撮影にも良い影響を与えている気がする。

再生数も安定して伸びるようになった。劇的に増えたわけじゃないけれど、着実に右肩上がりになっている。新しく投稿した動画が、以前よりも早く再生される。登録者数も少しずつ増えている。サムネイルだけの効果じゃないだろうけれど、少なくとも足を引っ張る要素ではなくなった。入り口がしっかりしているから、中身を見てもらえるチャンスが増えた。

何より、動画づくりが楽しくなった。以前は義務感で作っているような部分もあった。再生数が伸びないと、何のために作っているんだろうと思うこともあった。でも今は、純粋に楽しい。企画を考えるのも、撮影するのも、編集するのも、サムネイルを作るのも。全部が一連の創作活動として楽しめている。

サムネイル作りを通して、デザインの基礎みたいなものも身についた気がする。色の組み合わせ、文字の配置、余白の使い方。専門的に学んだわけじゃないけれど、実践の中で体感的に理解できた。それが動画編集にも活きている。テロップの入れ方や、画面構成を考えるとき、デザインの視点が加わった。

もう一つ、コミュニティの中での立ち位置も変わった。同じように動画を作っている仲間から、「サムネイルどうやって作ってるの?」と聞かれることが増えた。自分が教える側になるなんて思ってもみなかった。Canvaのことを教えたり、自分なりの工夫を共有したり。そうやって誰かの役に立てることが嬉しかった。

半年前の自分に伝えたい。サムネイルをちゃんと作るだけで、こんなに変わるんだよと。もっと早く始めればよかったと思う反面、今のタイミングだったから楽しめたのかもしれないとも思う。焦って完璧を目指していたら、きっと続かなかった。試行錯誤しながら、少しずつ成長していく過程そのものが、楽しかったんだと思う。

まとめ

Canvaでサムネイルを作り始めてから、動画づくりが少し楽しくなった。いや、少しどころじゃないかもしれない。明らかに、動画制作に対する姿勢が変わった。

最初は、再生数を伸ばすための手段としてサムネイルを改善しようと思った。地味なサムネイルを何とかしたい

現金派の私がキャッシュレス完全移行できた"たった1つの理由"

触れたきっかけと思ったこと

私はずっと現金派だった。財布の中に一万円札が何枚も入っていないと落ち着かない。レジで小銭を数えて、ぴったりの金額を出すのが好きだった。キャッシュレスなんて、使いすぎが怖いし、お金を使った実感が湧かないし、システムトラブルが起きたらどうするんだって思っていた。

友人たちが「便利だよ」「ポイント貯まるよ」と言っても、私の心は動かなかった。むしろ「そんなの関係ない。現金があれば十分」と頑なに拒んでいた。実際、現金で困ったことなんてほとんどなかったし、何より安心感があった。お金が減っていくのを目で見て確認できる。これが私にとって何より大事なことだったのだ。

転機が訪れたのは、あの日のことだった。仕事帰りに立ち寄ったいつものスーパーで、レジに並んでいたときのこと。私の前にいた若い男性が、スマホをかざして一瞬で会計を終えた。その後ろには、お年寄りがカードをタッチして支払いを済ませた。さらにその後ろの主婦らしき女性も、スマートウォッチを機械にかざして終了。

そして私の番になった。財布から小銭入れを開けて、498円の支払いのために500円玉を探す。ない。仕方なく千円札を出す。502円のお釣りを受け取って、小銭入れに戻す。この間、おそらく30秒ほど。でもその30秒が、後ろに並んでいる人たちの視線とともに、妙に長く感じられた。

その日の夜、ふとスマホを見ていたら、会社の後輩がSNSに投稿していた。「今日一日で使ったお金が自動で記録されてて便利すぎる」というコメントとともに、あるアプリの画面のスクリーンショットが載っていた。

私が現金にこだわっていた最大の理由は「お金の流れを把握できる安心感」だった。でも、もしキャッシュレスでそれができるなら?いや、むしろ現金より正確に把握できるなら?その可能性に、初めて心が揺れた。

翌日、後輩に声をかけた。「あのアプリ、どうやって使うの?」と。彼女は目を丸くした。あれだけ現金派を貫いていた私が、キャッシュレスに興味を示すなんて思っていなかったのだろう。でも私は本気だった。「お金の流れを自動で記録できる」。この一点に、私は賭けてみたいと思ったのだ。

最初に戸惑った体験

後輩に教えてもらいながら、まずはスマホ決済アプリをダウンロードした。クレジットカードは持っていたので、それを登録する。銀行口座も連携させる。思っていたより簡単だった。でも、ここからが本当の試練の始まりだった。

次の日の朝、いつものコンビニに寄った。いつもならレジで現金を出すところだが、今日は違う。スマホを取り出して、アプリを開く。バーコードが表示される。これを店員さんに見せればいいはず。

「お支払いは?」と聞かれて、「あ、えっと、これで」とスマホを差し出した。店員さんは慣れた様子でバーコードをスキャンした。ピッ。それだけで終わった。

でも私は混乱していた。本当に支払えたの?いくら払ったの?お釣りは?頭の中が疑問符でいっぱいになった。レジを離れてから、慌ててアプリを確認する。履歴に「○○コンビニ 324円」と記録されていた。ああ、ちゃんと払えていたんだ。

それでも不安は消えなかった。次は昼食。いつもの定食屋に入った。食事を終えてレジに向かうと、「現金のみ」の文字が目に入った。しまった。キャッシュレス対応じゃなかった。

慌てて財布を確認すると、千円札が一枚だけ。食事代は850円。ギリギリセーフだった。このとき初めて気づいた。キャッシュレス決済は、どこでも使えるわけじゃない。現金も持っておかないといけないんだ。

その日の夜、スーパーでの買い物でまた戸惑った。商品をカゴに入れながら、頭の中で計算する癖がついていた私は、「これで2000円くらいかな」と見積もっていた。レジでスマホ決済をすると、実際は2438円だった。あれ、思ったより高い。でももう支払ってしまった後だった。

現金なら、レジで金額を聞いてから、「やっぱりこれ要らないです」と言えた。でもキャッシュレスだと、ピッとやった瞬間に終わってしまう。この速さが便利な反面、考える時間を奪っているような気がして、少し怖くなった。

さらに困ったのは、週末のこと。友人たちと居酒屋に行って、割り勘になった。みんなキャッシュレスで払おうとしたが、お店は現金のみ。結局、現金を持っていた二人が立て替えて、後で各自が銀行振込することになった。これがものすごく面倒だった。

「やっぱり現金の方が楽なんじゃないか」。この時点で、私はもう挫折しかけていた。キャッシュレスに移行しようと決めたのは、お金の流れを自動で記録できるからだった。でも実際は、使えない店があったり、予想外の出費があったり、思っていたよりずっと複雑だった。

帰宅してから、アプリの履歴を見た。確かに、コンビニでの324円、スーパーでの2438円、コンビニでのお茶130円、全部記録されていた。でも「現金払い」の記録はない。定食屋の850円も、居酒屋の4500円も、どこにも載っていない。

これじゃあ意味がない。キャッシュレスで払ったものしか記録されないなら、全体のお金の流れは見えない。私が本当に知りたいのは、今月いくら使ったかということ。キャッシュレスの分だけじゃなくて、現金も含めた総額なんだ。

そこで思いついた。現金で払った分は、手動で記録すればいい。家計簿アプリみたいなものを併用すればいいんじゃないか。早速、家計簿アプリもダウンロードした。そして定食屋の850円、居酒屋の4500円を手入力した。

でも、これをずっと続けられる自信はなかった。結局、手動で記録するなら、現金だけで管理するのと変わらない。「自動で記録される」というメリットが半減してしまう。一週間でもう心が折れそうになっていた。

試行錯誤しながら気づいたこと

挫折しかけていた私を救ってくれたのは、また後輩だった。昼休みに愚痴を聞いてもらっていたら、彼女がこう言った。

「先輩、それって使える店を増やせばいいんじゃないですか?」

当たり前のことだった。でも私は気づいていなかった。キャッシュレスが使えない店があるから困る、じゃなくて、キャッシュレスが使える店に行けばいい。発想の転換だった。

「まずは一週間、キャッシュレスが使える店だけで生活してみてください」と彼女は提案してくれた。確かに、最近はほとんどの店でキャッシュレス決済ができる。コンビニ、スーパー、ドラッグストア、飲食店、洋服屋。よく考えたら、私が普段使う店のほとんどは対応している。

問題は「いつもの店」にこだわりすぎていたことだった。「いつもの定食屋」は現金のみだけど、隣のカフェはキャッシュレス対応だ。別にいつもの店じゃなくてもいい。キャッシュレスが使える店を選べばいいだけのことだった。

そして私は一週間のチャレンジを始めた。財布には最小限の現金だけ入れて、基本的にすべてキャッシュレスで支払う。使えない店には行かない。このシンプルなルールを自分に課した。

最初の三日間は順調だった。コンビニ、スーパー、ドラッグストア、どこでもスムーズに支払えた。そしてアプリには、すべての支出が自動で記録されていった。「今日は2847円使った」「昨日より573円少ない」。数字が可視化されるって、こんなに面白いんだと初めて思った。

四日目、問題が起きた。ランチで入った店がキャッシュレス対応だと思っていたら、「現金のみ」の張り紙があった。でももう席についてしまっていた。仕方なく財布から現金を出して払った。チャレンジ失敗か、と落ち込んだ。

でもその夜、気づいたことがあった。一週間のうち、現金で払ったのはこの一回だけだった。ということは、支出の90%以上はアプリに記録されているということだ。100%じゃなくても、90%把握できていれば十分じゃないか。

そもそも私が現金派だったとき、本当にすべての支出を把握できていただろうか。レシートをもらっても、財布に入れっぱなしで見返すことはなかった。月末に「今月いくら使った?」と聞かれても、正確には答えられなかった。なんとなく「このくらいかな」という感覚だけだった。

それに比べたら、今は90%が自動で記録されている。しかもリアルタイムで確認できる。「今日あといくら使える」「今月あとどのくらい余裕がある」。これが常に分かる状態になっている。

これって、実は現金のときよりずっと正確にお金を把握できているんじゃないか。そう気づいたとき、視界が開けた気がした。

一週間が終わって、アプリの記録を見返した。合計で18,732円使っていた。内訳も全部記録されている。食費が11,200円、日用品が4,800円、交通費が2,732円。こんなに細かく把握できたのは初めてだった。

そして私は理解した。私がキャッシュレスに求めていたのは「完璧さ」じゃなかった。「ある程度の精度で、楽に、お金の流れを把握すること」だったんだ。現金だと把握が大変すぎて結局やらない。でもキャッシュレスなら、自動で90%把握できる。この90%が、私にとっての「たった1つの理由」になりつつあった。

自分なりに工夫したポイント

「90%把握できればいい」という考え方にシフトしてから、私のキャッシュレス生活は格段に楽になった。でも、より快適に使うために、自分なりにいくつかの工夫を重ねていった。

まず始めたのは、「メイン決済を一つに絞る」ことだった。最初は後輩に勧められたアプリだけを使っていたけど、周りの人たちを見ていると、みんな複数のアプリを使い分けていた。「この店はこっちがお得」「あの店はこのカードがポイント高い」。でも私には、それが逆に面倒に思えた。

私の目的は「お金の流れを把握すること」だ。だったら、支払い方法はシンプルな方がいい。複数のアプリに支出が分散したら、結局全体像が見えにくくなる。だから私は、一つのアプリに決めた。どんな店でも、そのアプリが使えるなら必ずそれで払う。ポイント還元率とか、キャンペーンとか、そういうのは二の次にした。

これが想像以上に効果的だった。一つのアプリを開けば、すべての支出履歴が時系列で並んでいる。「先週の火曜日、何に使ったっけ?」と思ったら、すぐに確認できる。支払いもスムーズになった。レジで迷わない。スマホを出して、いつものアプリを開いて、バーコードを見せる。この動作が完全に習慣化された。

次に工夫したのは、「週単位でお金を見る」ことだった。最初は毎日アプリを開いて、「今日は○○円使った」と確認していた。でもこれだと、日によって変動が大きすぎて、逆に不安になることがあった。今日は3000円しか使っていないのに、昨日は8000円使っている。この差って正常なんだろうか、と。

そこで、週単位で見るようにした。日曜日の夜に、その週の支出を振り返る。「今週は合計2万3000円だった。内訳は食費1万5000円、日用品4000円、交通費2000円、その他2000円」。こうやって週ごとに確認すると、パターンが見えてきた。

だいたい週に2万円から2万5000円の間で推移している。たまに3万円を超える週があるけど、それは服を買ったり、友人と外食したりした週だ。「今週は2万円で収まった、良かった」「今週は3万円超えた、来週は控えめにしよう」。このサイクルが、自然と家計管理になっていった。

さらに私は「現金の扱い方」も変えた。完全にキャッシュレスに移行すると決めたとはいえ、現金がゼロだと不安だ。だから財布には常に1万円だけ入れておくことにした。1万円あれば、たいていの緊急事態には対応できる。でも、この1万円は「触らないお金」と決めた。

基本的にすべてキャッシュレスで払う。現金しか使えない店に当たったら、その時だけ1万円から出す。そして次の日、ATMで1万円をおろして、また財布に戻す。財布の中は常に1万円。これを維持することで、「今月現金でいくら使ったか」も把握できるようになった。

たとえば月初に財布に1万円入れて、月末にも1万円入っている。その間にATMで2回おろしたなら、現金では2万円使ったということだ。この2万円は、アプリの記録には載っていない10%の部分だ。アプリの記録が月8万円なら、実際の支出は10万円。この計算式ができあがった。

最後に工夫したのは、「月初めにその月の予算を決める」ことだった。過去の支出履歴を見ると、だいたい月10万円前後で生活していることが分かった。だったら、毎月10万円を予算として設定して、その範囲内で生活しよう。

アプリの中には予算設定機能があった。月10万円と設定すると、「今月の残り予算:43,280円」というように、リアルタイムで残額が表示される。これが思いのほか効果的だった。「あと4万円しかない。今週は節約しよう」「まだ5万円も残ってる。ちょっと贅沢してもいいかな」。こういう判断が、その場でできるようになった。

日常や生活でどう変わったか

キャッシュレス生活を始めて三ヶ月が経った頃、ふと気づいたことがある。財布が軽くなっていた。物理的な重さじゃない。精神的な重さだ。

以前は、財布にお金がどのくらい入っているか、常に気にしていた。「今日はまだ2万円残ってる」「あと3000円しかない、ATM寄らなきゃ」。この意識が、常に頭の片隅にあった。でも今は違う。スマホさえあれば支払える。財布の中身を気にする必要がなくなった。

そして不思議なことに、お金の管理は以前よりずっと正確になっていた。矛盾しているようだけど、これが現実だった。現金で管理していたときは、「なんとなく」把握していた。でも今は、アプリを開けば正確な数字が分かる。気にしなくても、ちゃんと管理できている。この感覚が新鮮だった。

買い物の仕方も変わった。以前は、レジで小銭を数えるのが面倒で、つい「1000円でいいや」と大きいお札を出していた。そうすると、小銭がどんどん増えていく。財布がパンパンになる。でもキャッシュレスなら、金額がいくらでも関係ない。324円でも、2438円でも、スマホをかざすだけ。この手軽さに慣れると、もう戻れない。

それと、衝動買いが減った。これは予想外の変化だった。キャッシュレスにすると、使いすぎるんじゃないかと心配していた。でも実際は逆だった。

理由は単純で、「記録が残る」からだ。現金だと、コンビニでお菓子を買っても、その場で消費して終わり。でもキャッシュレスだと、アプリに「○○コンビニ 328円」と記録される。「また無駄遣いしてる」というのが可視化されてしまう。だから、買う前に「本当に必要か?」と考えるようになった。

特に効果があったのは、飲み物だ。以前は、ちょっと喉が渇いたらすぐコンビニで飲み物を買っていた。1日に2本、3本買うこともあった。でもある日、週の支出を見返していて気づいた。「飲料」の項目が、週に2000円を超えていた。月にしたら8000円以上だ。

それから私は、水筒を持ち歩くようになった。朝、家でお茶を入れて持っていく。喉が渇いても、まず水筒を飲む。本当に足りなかったら、その時買えばいい。この習慣で、飲料代が月2000円くらいに減った。年間で7万円以上の節約になる。

この変化は、キャッシュレスにしたからこそ気づけたことだった。現金だったら、「なんとなく飲み物買ってるな」とは思っても、具体的に月いくらか、年間いくらかなんて計算しなかった。数字で見えるからこそ、「これはまずい」と気づけた。

友人との関係も、微妙に変わった。以前は割り勘のとき、「1人3500円ね」と言われても、「3000円しか持ってない」とか「お釣りある?」とか、現金のやり取りで面倒なことが多かった。でも今は、スマホで送金できる。「じゃあ後で3500円送るね」「送った」「届いた」。これで完結する。

ただ、これには注意が必要だとも気づいた。あまりに簡単に送金できるせいで、「お金を渡した」という実感が薄い。「あれ、この人に送金したっけ?してないっけ?」と分からなくなることがあった。だから私は、送金したらメモを取るようにした。「○○さんに3500円送金(飲み会代)」というように。アナログな方法だけど、これが一番確実だった。

そして何より変わったのは、時間の使い方だった。以前は、週に一度くらいATMに行っていた。銀行のATMが空いている時間を気にして、昼休みに急いで行ったり、仕事帰りに寄ったり。そして列に並んで、カードを入れて、暗証番号を押して、金額を選んで、お金を受け取って。この一連の作業に、毎回5分から10分かかっていた。

今は、ATMに行くのは月に1回か2回だけだ。しかも、必要な時に行けばいいから、急ぐ必要もない。この時間が浮いたことで、昼休みをもっとゆっくり過ごせるようになった。本を読んだり、散歩したり。小さな変化だけど、積み重なると大きな違いになる。

レシートの管理からも解放された。以前は、レシートを財布に入れて、週末にまとめて確認して、捨てる。この作業が地味に面倒だった。でもキャッシュレスなら、電子レシートが自動で保存される。欲しい時に検索できる。「先月のあの買い物、いくらだったっけ?」と思ったら、アプリで検索すればすぐ見つかる。

続けてみて見えてきたこと

キャッシュレス生活を始めて半年が過ぎた。もう完全に習慣化されて、現金で払うことの方が違和感を覚えるようになった。そして、この半年間の記録を振り返ってみて、いくつかの発見があった。

まず、自分のお金の使い方には明確なパターンがあるということ。月初は出費が多い。家賃、光熱費、通信費など、固定費の引き落としがあるからだ。その後、月中は比較的安定している。そして月末になると、また少し出費が増える。おそらく、「今月もう少し余裕があるから」という心理が働くのだろう。

この波を知ることで、計画的にお金を使えるようになった。「月初は固定費で5万円くらい出ていくから、それを考慮して使わないと」「月末に余裕がありそうなら、あの服買おう」。こういう判断が、データに基づいてできるようになった。

次に気づいたのは、季節によっても支出が変わるということ。夏は飲み物代が増える。冬は食費が増える(温かいものが食べたくなるから)。春と秋は、なぜか洋服代が増える。こういう傾向が、数字で見えてきた。

これを知っておくと、「今月は食費がかさんでるけど、冬だから仕方ない」と納得できる。逆に「夏なのに飲み物代が先月と変わらない、水筒作戦が効いてる」と確認できる。自分の行動の効果が、数字で見えるのが面白かった。

それと、「お金の価値観」が変わった。以前の私は、「節約=我慢」だと思っていた。でも今は違う。節約とは、「本当に必要なものにお金を使うこと」だと理解した。

たとえば、コンビニで毎日飲み物を買うのをやめたことで、月6000円節約できた。でもその分、月に一度、好きなレストランでちょっと贅沢なランチを食べるようになった。これで3000円使っても、差し引き3000円は節約できている。しかも、「我慢した」という感覚はない。むしろ、月に一度の贅沢ランチが楽しみになった。

こういうメリハリをつけた使い方ができるようになったのは、支出が可視化されているからだ。「どこで無駄遣いしているか」が分かるから、「どこを削ればいいか」も分かる。そして削った分を、「本当に価値あること」に使える。

また、貯金の意識も変わった。以前は、「余ったお金を貯金する」という考え方だった。でも余ることなんてほとんどなかった。なんとなく使って、月末には給料日前で財布が寂しくなっている。その繰り返しだった。

でもキャッシュレスにしてから、「先に貯金する」ことができるようになった。給料が入ったら、まず2万円を貯金用の口座に移す。残りで生活する。これができるようになったのは、「残りいくらで生活できるか」が常に分かるからだ。

予算管理アプリを見れば、「今月の残り予算」が表示される。その範囲内で生活すればいい。もし足りなくなりそうなら、早めに調整できる。「今週はもう予算の半分使ってる、来週は抑えめにしよう」という判断が、リアルタイムでできる。

半年で12万円貯まった。小さな額かもしれないけど、以前の私からしたら大きな変化だった。この12万円は、「我慢して」貯めたお金じゃない。「自然と」貯まったお金だ。キャッシュレスによって支出が可視化されて、無駄な出費が減って、その結果として貯まった。

そして何より、「お金に対する不安」が減った。以前は、月末になると「今月いくら使った?大丈夫かな?」と漠然とした不安があった。でも今は、アプリを開けば正確な数字が分かる。「今月は9万3000円使った。予算内に収まった」と確認できる。この「分かっている」という安心感が、想像以上に大きかった。

不思議なことに、お金のことを考える時間は減ったのに、お金の管理は良くなった。これがキャッシュレスの最大のメリットかもしれない。「意識しなくても、ちゃんと管理できている」状態。これが、私が求めていたものだったんだと、今なら分かる。

まとめ

思い返せば、私がキャッシュレスに移行できた理由は、本当にシンプルだった。「お金の流れを自動で記録できる」。ただそれだけだった。

ポイント還元でも、キャンペーンでも、スマートさでもない。私にとっては、「今月いくら使ったか、何に使ったか、これから何に使えるか」が分かること。それだけが重要だった。そしてキャッシュレスは、それを自動でやってくれた。

今でも、キャッシュレスが完璧だとは思っていない。現金しか使えない店もあるし、システムトラブルのリスクもゼロじゃない。でも、90%の支出が自動で記録される便利さには代えられない。

あの日、スーパーのレジで感じた「もやもや」から始まった私のキャッシュレス生活。最初は戸惑いの連続だった。でも試行錯誤しながら、自分なりのやり方を見つけて、今では完全に生活の一部になった。

現金派だった私が変われたんだから、誰でも変われると思う。大事なのは、「なぜキャッシュレスにしたいのか」を明確にすること。ポイントが欲しいのか、スマートに見られたいのか、それとも私みたいに、お金の流れを把握したいのか。

理由が明確なら、その目的に合った使い方が見つかる。そして続けられる。私の場合、それが「自動記録」だった。たった1つ、でも私にとっては何より大切な理由。これがあったから、頑なな現金派の私が、キャッシュレスに完全移行できた。

今、財布の中には1万円だけ入っている。スマホがあれば、それで十分。そう思えるようになった自分に、ちょっと驚いている。変化って、意外と自然に起こるものなんだなと思う。

この記事を読んでいるあなたも、もし現金派で迷っているなら、まず「自分が何を求めているか」を考えてみてほしい。答えが見つかれば、きっと自分なりのキャッシュレス生活が始められると思う。私がそうだったように。