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ゆるく続けた節約アプリで、気づけば生活が整っていた話

ゆるく続けた節約アプリで、気づけば生活が整っていた話

触れたきっかけと思ったこと

節約アプリをダウンロードしたのは、確か去年の3月だったと思う。別に切羽詰まっていたわけじゃない。むしろ、給料日前になるとなんとなく財布が寂しくなって、「あれ、今月何にお金使ったっけ?」と首をかしげることが増えていただけだった。

友人との飲み会で、ふと誰かが「最近、家計簿アプリ使ってるんだよね」と話していたのがきっかけだ。私は正直「え、めんどくさそう」と思った。学生時代に家計簿をつけようとして三日坊主で終わった経験があったからだ。ノートに几帳面に支出を書き込んで、電卓で計算して、予算オーバーしたら反省して……そんなストイックなことを続けられる自信なんてなかった。

でも、その友人は意外と気楽な口調で「レシート撮るだけだから楽だよ」と言っていた。私の中で家計簿といえば、毎日きっちり記録して、費目ごとに細かく管理して、というイメージだったから、撮るだけと聞いて少し興味が湧いた。それでも半信半疑だった。本当にそんなに簡単なのか、どうせ最初だけで続かないんじゃないか、という疑念が頭の中をぐるぐる回っていた。

帰宅後、ベッドに寝転がってスマホを触っていたとき、ふと思い出してアプリストアで「家計簿」と検索してみた。ものすごい数のアプリが出てきて、正直どれがいいのか全然わからなかった。ダウンロード数の多さとレビューの高さを頼りに、なんとなく一つを選んでインストールした。「とりあえず試してみるか」くらいの軽い気持ちだった。どうせすぐ飽きるだろうし、スマホの容量を圧迫したら消せばいいやと思っていた。

アプリを開くと、意外にシンプルな画面が表示された。収入を入力してくださいとか、目標貯金額を設定してくださいとか、いくつか初期設定を促すメッセージが出てきた。でも私は「あとでやろう」とスキップして、とりあえずレシート撮影の機能だけを試してみた。その日買ったコンビニのレシートをカメラで撮ると、あっという間に金額や品目が読み取られた。「おお、すごい」と少し感動した。正直、ここまで便利だとは思っていなかった。でも、それだけだった。その日は特に何も考えず、アプリを閉じてそのまま寝てしまった。

翌日、仕事帰りにスーパーで買い物をした。レジを通って袋に詰めながら、ふと昨日のアプリのことを思い出した。「そういえば、撮るだけって言ってたな」と、帰りの電車の中でレシートを撮影してみた。するとまた、あっという間に記録された。なんだか妙に気持ちがよかった。達成感とはまた違う、ちょっとしたゲーム感覚のような軽い満足感があった。それが、私とこのアプリとの最初の出会いだった。

最初に戸惑った体験

最初の数週間は、正直よくわからないまま使っていた。レシートを撮るのは楽しかったけど、それをどう活かせばいいのかがピンとこなかった。アプリには毎日の支出がグラフで表示されたり、カテゴリー別に集計されたりする機能があったけど、それを見てもただ「へえ、こんなに使ってるんだ」と思うだけで、特に何かが変わるわけではなかった。

一番戸惑ったのは、分類の仕方だった。アプリは自動で「食費」「日用品」「娯楽費」などに振り分けてくれるんだけど、その分類が微妙にずれていることがあった。例えば、ドラッグストアで買った食品が「日用品」に分類されていたり、コンビニで買ったお菓子が「食費」に入っていたり。最初は「まあいいか」と放置していたけど、週末にふとアプリを開いて支出を確認したとき、なんだかモヤモヤした気持ちになった。

私は几帳面な性格ではないけど、中途半端に間違っているのが気になるタイプだ。それで、いくつかの項目を手動で修正してみた。でもそれをやり始めると、今度は「どこまで細かく分けるべきか」という新たな疑問が湧いてきた。例えば、外食も「ランチ」と「ディナー」で分けるべきなのか。コンビニのコーヒーは「食費」なのか「嗜好品」なのか。考え始めるとキリがなくて、だんだん面倒になってきた。

ある日、修正作業に30分くらいかけてしまって、「これじゃ本末転倒だな」と思った。もともと楽だから始めたのに、細かく管理しようとして時間を食っていたら意味がない。それに、完璧に分類したところで、私の生活が劇的に変わるわけでもない気がした。そこで一度、修正するのをやめてみた。アプリが自動で振り分けたままにして、レシートを撮るだけに徹することにした。

すると、不思議なことに気が楽になった。完璧を目指さなくてもいいんだ、という開き直りみたいなものが生まれた。それでも、毎日レシートを撮ることだけは続けていた。別にノルマとして課していたわけじゃなく、なんとなく習慣になっていたからだ。仕事帰りの電車の中で、今日買ったものをパシャッと撮る。それだけのことだけど、妙に落ち着く瞬間でもあった。

ただ、レシートをもらい忘れたときは少し困った。特に自動販売機で飲み物を買ったときとか、割り勘で食事をしたときとか。最初は「まあ、記録しなくてもいいか」と思ったけど、それが続くと、なんとなく気持ち悪かった。記録に穴があると、全体の数字が信用できなくなる気がしたのだ。それで、レシートがないときは手動で金額だけ入力するようにした。これも面倒といえば面倒だったけど、完璧に項目を分けるよりはずっと楽だった。

そんなふうに、最初の一ヶ月は試行錯誤の連続だった。アプリの使い方に慣れるというより、自分なりの付き合い方を探っている感じだった。正直、この時点では「節約できている」という実感は全くなかった。ただ、支出を記録しているという事実だけがあった。それでも、なぜか続けていた。多分、レシートを撮る瞬間の小さな達成感が、私を続けさせていたんだと思う。

試行錯誤しながら気づいたこと

二ヶ月目に入ったころ、アプリの「月次レポート」という機能に初めて気づいた。月が変わったタイミングで通知が来て、先月の支出をまとめたレポートが表示されるというものだ。最初は「へえ、こんな機能あったんだ」くらいの軽い気持ちで開いてみた。

そこには、私の一ヶ月の支出が円グラフで表示されていた。一番大きな割合を占めていたのは「食費」で、全体の約40パーセント。次に「交通費」「娯楽費」と続いていた。数字だけ見れば当たり前のことなんだけど、視覚的に見ると妙にリアルだった。「え、食費ってこんなに使ってるの?」というのが正直な感想だった。

具体的な金額を見ると、外食とコンビニでの買い物が大半を占めていた。自炊はしているつもりだったけど、実際には週の半分くらいは外で済ませていた。朝はコンビニのおにぎりとコーヒー、昼は職場近くのカフェ、夜は疲れて自炊する気力がなくて出前を頼む。そんな日が思ったより多かった。一回一回の金額は大したことないけど、積み重なると結構な額になっていた。

このとき初めて、「記録するだけでも意味があるんだな」と思った。別に反省したわけじゃない。ただ、自分の行動パターンが客観的に見えたというだけだ。でもそれが、なんとなく意識の変化につながっていった。次の日、いつものようにコンビニに寄ろうとしたとき、ふと「今日は家で食べようかな」と思った。強制されたわけでもなく、自然にそう思えた。

それからは、自分の支出に対する見方が少し変わった気がする。買い物をするとき、レジに並びながら「これ、アプリで見たらどう表示されるかな」と考えるようになった。別に買うのをやめるわけじゃない。でも、一呼吸置くようになった。「本当に今必要か?」「家に似たようなものがなかったっけ?」そんなふうに、自分に問いかける癖がついた。

面白かったのは、この変化が全然苦痛じゃなかったことだ。むしろ、ちょっとしたゲーム感覚だった。「今月は食費を少し抑えられるかな」とか「先月より貯金額を増やせたらいいな」とか、そんなふうに楽しみながら考えるようになった。目標を設定して自分を追い込むんじゃなく、結果を見てちょっとずつ調整する。そのゆるさが、私には合っていた。

あと、意外だったのは、無駄遣いだと思っていたものが、実はそうでもなかったということだ。例えば、月に数回行くカフェ。金額だけ見れば節約の対象になりそうだけど、私にとってはリフレッシュの大切な時間だった。そこで本を読んだり、ぼんやり外を眺めたりすることが、仕事のストレスを軽減してくれていた。だから、それは削らなくてもいいと判断した。

逆に、なんとなく買っていたコンビニのお菓子は減らすことにした。別にお菓子が嫌いになったわけじゃなく、「なんとなく」買っていただけだと気づいたからだ。本当に食べたいときだけ買うようにしたら、満足度は変わらないのに支出は減った。この「選択と集中」みたいな感覚が、少しずつ身についていった気がする。

自分なりに工夫したポイント

三ヶ月目あたりから、私なりの使い方のコツみたいなものが固まってきた。最初は右も左もわからず手探りだったけど、だんだん自分に合ったやり方が見えてきたのだ。

まず、記録のタイミングを固定した。以前はバラバラに撮影していたけど、それだと忘れることもあった。それで、「その日のうちに必ず記録する」というルールを自分に課した。ただし、厳密に「何時まで」とは決めなかった。夜寝る前でもいいし、帰宅してすぐでもいい。とにかく、その日が終わる前に済ませる。それだけを守るようにした。

次に、週に一度、土曜日の朝に支出を振り返る時間を作った。といっても5分から10分程度の短い時間だ。コーヒーを飲みながら、アプリを開いて一週間の支出をざっと眺める。細かく分析するわけじゃなく、「今週は外食多かったな」「日用品を買いすぎたかも」といった、ざっくりした印象を確認するだけだ。この習慣が、意外と効果的だった。

振り返ることで、自分の行動パターンが見えてきた。例えば、ストレスが溜まった週は外食やネットショッピングが増える傾向があった。逆に、休みの日に自炊を楽しんだ週は、食費が抑えられていた。こういうパターンに気づくと、「今週はちょっと疲れてるから、無理に自炊しなくてもいいか」とか「余裕があるから、作り置きしてみようかな」とか、柔軟に対応できるようになった。

あと、私が工夫したのは「ゆるい予算設定」だった。アプリには予算を設定する機能があるんだけど、最初は厳しく設定しすぎて、すぐにオーバーしてしまっていた。それが逆にストレスになっていたので、少し余裕を持たせた予算に変更した。食費なら、平均より少し多めに設定する。そうすると、予算内に収まることが増えて、達成感が得られるようになった。たまにオーバーしても「まあ、今月は仕方ないか」と思えるようになった。

さらに、項目の分類も自分流にカスタマイズした。アプリのデフォルト設定だと細かすぎて管理が大変だったので、大きく「固定費」「変動費」「自己投資」「楽しみ費」の四つに絞った。固定費は家賃や光熱費など毎月決まった支出、変動費は食費や日用品、自己投資は本やセミナー、楽しみ費は趣味や娯楽。このくらいシンプルにしたら、一目で状況が把握できるようになった。

それと、現金払いとキャッシュレス決済の記録方法も工夫した。最初はレシート撮影だけだったけど、途中からクレジットカードや電子マネーとアプリを連携させた。すると、買い物した瞬間に自動で記録されるようになって、さらに楽になった。ただ、全部を連携させると逆に把握しづらくなったので、メインで使うカード一枚だけを連携させることにした。

こうした工夫は、どれも大したことじゃない。でも、小さな調整を積み重ねることで、アプリが自分の生活にフィットしていった。最初は「アプリに合わせて自分を変えなきゃ」と思っていたけど、そうじゃなくて「アプリを自分に合わせればいい」と気づいたのが、大きな転換点だった気がする。

日常や生活でどう変わったか

半年くらい経ったころ、ふと気づいたことがある。部屋が前より片付いていたのだ。別に大掃除をしたわけじゃない。でも、なんとなく物が減っていて、スッキリした印象になっていた。最初は偶然かと思ったけど、よく考えたら節約アプリと関係があった。

支出を記録するようになってから、買い物の仕方が変わっていた。以前はなんとなく「安いから」「セールだから」という理由で買っていたものが、「本当に必要か?」と一度考えるようになっていた。その結果、衝動買いが減って、本当に欲しいものだけを買うようになった。不要な物を買わなくなったから、部屋に無駄なものが増えなくなったのだ。

食生活も変わった。外食やコンビニでの食事が減って、自炊の頻度が増えた。といっても、毎日きっちり料理するわけじゃない。週末に作り置きをして、平日はそれを温めるだけとか、簡単なものを作るとか、そのくらいのゆるさだ。でも、それだけでも体調がよくなった気がする。前より疲れにくくなったし、肌の調子もいい。節約のために始めた自炊が、思わぬ健康効果をもたらしていた。

お金の使い方も、明らかに変わった。以前は給料日前になると「やばい、お金がない」と焦っていたけど、今はそういうことがなくなった。支出を記録しているから、残高がどれくらいあるか常に把握できているし、計画的に使えるようになった。無理に節約しているわけじゃないのに、月末に余裕がある。この安心感は、想像以上に大きかった。

貯金も少しずつだけど増えていった。最初は「節約アプリで貯金なんてできるのかな」と半信半疑だったけど、三ヶ月後には数万円、半年後には十万円以上貯まっていた。大きな額じゃないかもしれないけど、私にとっては大きな成果だった。これまで貯金がほとんどできなかった私が、ゆるく続けているだけで貯められるようになった。それが自信につながった。

人間関係にも、ちょっとした変化があった。以前は友人との飲み会に誘われると、断る理由がなければなんとなく参加していた。でも、支出を記録するようになってから、「今月はもう何回か外食してるし、今回はパスしようかな」と自然に判断できるようになった。それで友人関係が悪くなったわけじゃない。むしろ、本当に会いたい人とだけ会うようになったことで、一回一回の時間が濃くなった気がする。

時間の使い方も変わった。コンビニに立ち寄る回数が減ったことで、帰宅時間が早くなった。その分、家でゆっくり過ごす時間が増えた。読書をしたり、映画を見たり、好きなことをする時間が持てるようになった。お金を使わなくても楽しめることが、意外とたくさんあることに気づいた。

それと、将来に対する不安が少し軽くなった。以前は「老後の資金とか大丈夫かな」と漠然と不安を抱えていたけど、今は「少しずつでも貯金できている」という事実が、心の支えになっている。まだまだ十分な額じゃないけど、ゼロから少しずつ積み上がっていく過程が、目に見えて実感できる。それが、安心感につながっている。

こうして振り返ると、節約アプリは単にお金を管理するツールじゃなかったんだと気づく。生活全体を見直すきっかけをくれたんだと思う。支出を記録することで、自分の行動パターンが見えて、無駄や偏りに気づいて、少しずつ調整していく。その繰り返しが、いつの間にか生活を整えていた。大げさかもしれないけど、人生が少し変わった気がする。

続けてみて見えてきたこと

一年続けてみて、節約アプリの本当の価値がわかった気がする。それは、お金を貯めることそのものよりも、自分の生活を可視化して、自分らしい暮らし方を見つけるためのツールだということだ。

最初は「節約しなきゃ」という義務感みたいなものがあった。でも、続けているうちに、それが「自分にとって大切なものは何か」を考えるプロセスに変わっていった。支出を記録して振り返ることで、何にお金を使ったときに満足感があって、何が無駄だと感じるのかが、だんだんクリアになっていった。

例えば、私にとってカフェでの時間は価値があるけど、なんとなくコンビニで買うお菓子は価値が低い。友人との食事は大切だけど、惰性で参加する飲み会はそうでもない。こういう「自分の価値観」が、支出のデータを通して浮かび上がってきた。それがわかると、お金の使い方が自然と変わっていった。無理に我慢するんじゃなく、自分が本当に大切にしたいことに集中する。そんな使い方ができるようになった。

続けるコツも見えてきた。一番大事なのは「完璧を目指さないこと」だと思う。最初のころ、私は細かく管理しようとして挫折しかけた。でも、ゆるく続けることを選んだら、逆に長続きした。一日や二日記録を忘れても気にしない。大体合っていればいい。そのくらいの気楽さが、継続の鍵だった。

もう一つは「数字に振り回されないこと」だ。アプリを使っていると、どうしても数字が気になる。予算をオーバーしたとか、先月より支出が増えたとか。でも、そこで自分を責めても意味がない。大事なのは、その理由を考えて、次にどうするかを決めることだ。「今月は友人の結婚式があったから仕方ない」とか「来月は少し控えめにしよう」とか、柔軟に調整すればいい。数字はあくまで参考であって、絶対的な基準じゃない。

それと、アプリは手段であって目的じゃないということも忘れちゃいけない。最終的に目指すのは、自分が心地よく暮らせる生活だ。アプリはそのための道具に過ぎない。だから、アプリを使うことが負担になったら、使い方を変えるか、場合によっては使わない選択肢もありだと思う。私の場合は、ゆるく続けるスタイルがたまたま合っていたけど、人によって最適な方法は違う。

続けていて面白かったのは、季節ごとの支出パターンが見えてきたことだ。夏は冷房代が増えて、冬は暖房費がかさむ。年末年始は交際費が増える。そういう変動が、一年通して記録することで見えてきた。それを知っていると、「来月は光熱費が増えるから、他を少し控えよう」とか、先を見越した調整ができるようになる。これも、続けたからこそ得られた視点だった。

あと、記録を見返すのが意外と楽しいことにも気づいた。三ヶ月前、半年前と比べて、自分の支出がどう変化したかを見るのは、ちょっとした振り返りになる。「あのころは毎日コンビニ行ってたな」とか「この月は頑張って自炊してたな」とか、自分の頑張りや変化が目に見える。それが、モチベーションの維持につながっていた。

そして何より、お金に対する不安が減ったことが大きかった。以前は「お金が足りなくなったらどうしよう」という漠然とした恐怖があった。でも今は、自分がどれくらい使っているか把握できているから、根拠のない不安がなくなった。不安が減ると、心に余裕ができる。余裕ができると、他のことにも前向きになれる。節約アプリが、精神的な安定にまでつながっているとは、始めたころには想像もしなかった。

まとめ

振り返ってみれば、私が節約アプリを始めたのは本当に些細なきっかけだった。友人の何気ない一言と、ちょっとした好奇心。それだけだった。大きな目標があったわけでもなく、切羽詰まっていたわけでもない。ただ「なんとなく試してみようかな」という軽い気持ちだった。

でも、そのゆるい始まり方が、結果的によかったんだと思う。もし最初から「絶対に節約するぞ!」と意気込んでいたら、多分続かなかっただろう。完璧を目指して疲れて、すぐに諦めていたはずだ。でも、ゆるく始めたからこそ、ゆるく続けられた。そして、ゆるく続けているうちに、いつの間にか生活が変わっていた。

節約アプリは魔法のツールじゃない。使ったからといって、すぐに劇的に生活が変わるわけじゃない。でも、毎日コツコツ記録を続けることで、自分の行動が少しずつ見えてくる。そして、その見える化が、小さな変化を生む。その小さな変化が積み重なって、気づいたときには大きな変化になっている。私が体験したのは、そんなプロセスだった。

今、私の生活は一年前と比べて明らかに整っている。部屋は片付いているし、食生活も健康的になった。お金の不安は減って、貯金も少しずつ増えている。でも、一番大きな変化は、自分の暮らし方に自信が持てるようになったことかもしれない。何にお金を使って、何を大切にするか。その軸がはっきりしたことで、日々の選択に迷いが減った。

もちろん、完璧な生活を送れているわけじゃない。たまに無駄遣いもするし、記録を忘れることもある。でも、それでいいと思っている。大事なのは完璧を目指すことじゃなく、自分らしく続けられることだから。

これからも、このゆるいスタンスで続けていくつもりだ。節約アプリは、もう私の生活の一部になっている。特別なことをしているわけじゃなく、ただ日常の中に自然に溶け込んでいる。そして、その自然さこそが、長く続けられる秘訣なんだと思う。

もし、この記事を読んで「ちょっと試してみようかな」と思った人がいたら、ぜひ気楽に始めてみてほしい。完璧を目指さなくていい。ゆるく、自分のペースで。そうすれば、きっとあなたも、気づいたときには生活が少し整っているはずだから。

月末に後悔しなくなった!家計簿アプリがくれた“予算の見える化”体験談

月末に後悔しなくなった!家計簿アプリがくれた"予算の見える化"体験談

触れたきっかけと思ったこと

「今月、お金使いすぎたかも…」と毎月末に通帳を見るたび、胃がキリキリしていた。そんな生活を送っていた私が家計簿アプリを使い始めたのは、もう一年以上前のことになる。

きっかけは些細なことだった。いつものように給料日前の週末、友人とランチをしていたときのこと。「今月もう財布がやばい」と愚痴った私に、友人が「家計簿アプリ使ってみたら?」と提案してくれたのだ。正直、その瞬間は「いや、家計簿なんて面倒じゃん」と内心思っていた。これまで何度も紙の家計簿やエクセルで管理しようとして挫折してきた私にとって、また新しい方法を試すのは億劫だったのだ。

でも、友人は続けてこう言った。「私も昔は月末になると『なんでこんなにお金ないんだろう』って毎回後悔してたけど、アプリ使い始めてから予算が目に見えるようになって、全然焦らなくなったよ」と。その言葉が妙に心に引っかかった。予算が目に見える、という表現が新鮮だった。私がこれまで失敗してきたのは、家計簿をただ「記録する」ことだけで終わっていたからかもしれない。

その日の夜、スマホのアプリストアで「家計簿」と検索してみた。驚くほどたくさんのアプリが出てきた。レビューを読みながら、銀行口座やクレジットカードと連携できるもの、シンプルに手入力するもの、カメラでレシートを読み取るものなど、様々な種類があることを知った。迷いに迷って、最終的に選んだのは「予算設定機能」が充実していて、かつUIが見やすいと評判のアプリだった。

ダウンロードして最初に目に入ったのが「予算を設定しましょう」という画面。今までの家計簿ツールでは、まず「支出を記録しましょう」だったから、この違いに少し驚いた。予算を先に決めるのか、と。そこで初めて、私は自分が毎月何にいくら使っているのか、そして本当はいくら使うべきなのか、全く把握していないことに気づいてしまった。食費、交際費、美容費、趣味…項目を見ながら、「えっと、私って普段いくら使ってるんだっけ?」と途方に暮れた。

とりあえず適当に数字を入れてみたが、合計すると手取り給料を超えてしまった。これじゃダメだと削ってみても、どこを削ればいいのか分からない。三十分ほど格闘して、ようやく一応の予算設定が完了したとき、私は「これ、ちゃんと続けられるかな」という不安と、「もしかしたら何か変わるかも」という期待が入り混じった気持ちになっていた。

最初に戸惑った体験

家計簿アプリを使い始めた最初の一週間は、正直言って混乱の連続だった。まず、「これって記録すべき?」「これはどの項目?」という判断に毎回迷った。

初日、コンビニで缶コーヒーとガムを買った。レジで支払いを済ませ、店を出てすぐに「あ、記録しなきゃ」と思い出した。アプリを開いて金額を入れるまではよかったが、項目選択で手が止まった。これは「食費」?それとも「嗜好品」?いや、そもそもガムって食費に含めていいのか?そんなことを真剣に悩んでいる自分がおかしくて、少し笑ってしまった。結局「食費」に分類したが、この小さな迷いが、この先何度も私を悩ませることになる。

もっと困ったのは、複数の項目にまたがる買い物だった。ドラッグストアで洗剤とシャンプーと化粧水とお菓子を買ったとき、レシートを見ながら項目ごとに金額を分けて入力しようとしたが、これが想像以上に面倒だった。レシートには税込み価格しか書いていないし、複数買って割引があったりすると、どうやって分ければいいのか分からなくなった。結局その時は、面倒になって全額を「日用品」に入れてしまった。でも後から見返すと、お菓子も日用品に含まれていることが気になった。これじゃ正確な支出が分からないじゃないか、と。

さらに戸惑ったのが、クレジットカードの扱いだった。アプリでは銀行口座やクレジットカードと連携できる機能があったが、最初は怖くて連携できなかった。セキュリティ面での不安もあったし、そもそもログイン情報を入れることに抵抗があった。だから手入力でクレジットカードの支出も記録していたのだが、これがまた大変だった。ネットショッピングで買い物をすると、その場で記録を忘れてしまう。後日、カード明細を見て「あれ、これ何買ったんだっけ?」となることもしばしば。

予算管理についても、最初は全く機能していなかった。アプリには「食費の予算残高:あと15,000円」というように表示されるのだが、この数字を見ても、正直ピンとこなかった。15,000円あるなら、今日は外食してもいいかな、と思って使ってしまう。でも月の半ばを過ぎた頃、「食費の予算残高:あと2,000円」という表示を見て、愕然とした。まだ二週間も残っているのに、食費が2,000円しか残っていない?そこで初めて、私は予算というものを全く理解していなかったことに気づいた。

一番困ったのは、最初に設定した予算が全く現実的ではなかったことだ。食費を月3万円に設定していたが、一週間で1万5千円を使ってしまった。このペースだと月6万円になる計算だ。でも、かといって予算を6万円に増やせば、他の項目を削らなければならない。そうすると今度は交際費や美容費が足りなくなる。どうすればいいんだ、と頭を抱えた。

友人に相談すると、「最初の一ヶ月は予算無視で、まずは自分が何にいくら使っているか記録することに専念したら?」とアドバイスをくれた。なるほど、と思った。そもそも自分の支出の実態を知らないのに、予算を立てられるわけがない。でも同時に、「じゃあこの一ヶ月は何のためにアプリ使ってるんだろう」という虚しさも感じた。予算の見える化を期待してアプリを始めたのに、予算は機能していない。記録するだけなら、以前やっていたノート家計簿と変わらないじゃないか、と。

試行錯誤しながら気づいたこと

それでも、友人のアドバイス通り、まずは一ヶ月間ひたすら記録することに決めた。予算オーバーの警告が出ても、とりあえず無視。毎日の支出を淡々と入力し続けた。この期間、私はあることに気づき始めた。記録すること自体が、少しずつ私の買い物の仕方を変えていたのだ。

コンビニでお菓子を手に取ったとき、「これを買ったらアプリに記録しなきゃ」と思った瞬間、ふと手が止まった。別に誰かに監視されているわけじゃない。記録するのが面倒だから買わない、というのも変な話だ。でも、不思議と「本当にこれ必要かな?」と考えるようになっていた。アプリに記録するという行為が、自分の消費行動を一度立ち止まって振り返る機会になっていたのだ。

一ヶ月が経ち、アプリの「月次レポート」機能を見たとき、私は言葉を失った。グラフで表示される私の支出の内訳は、想像していたものとまるで違っていた。一番多いと思っていた食費は、確かに多かったが、それと同じくらい「その他」の項目が膨らんでいた。その他って何だ?と詳細を見ると、ほとんどがコンビニでの少額の買い物だった。缶コーヒー、お菓子、雑誌、ちょっとした文房具…一つ一つは数百円なのに、合計すると月に2万円近くになっていた。

さらに衝撃だったのは、「交際費」の内訳だった。飲み会やランチは予想通りだったが、「友達へのプレゼント代」が予想以上に多かった。誕生日や結婚祝い、出産祝い…確かに買っていた記憶はあるが、こんなに頻繁だったのか。月によってバラつきはあるものの、平均すると月1万円近く使っていた。これは予算を立てるとき、全く考慮していなかった項目だった。

この一ヶ月の記録を見ながら、私はノートに支出を書き出してみた。絶対に必要な固定費(家賃、光熱費、通信費、保険)、ある程度必要な変動費(食費、日用品、交通費)、そして自由に使えるお金(交際費、美容費、趣味、被服費、その他)。これらを実際の支出額で書き出すと、自由に使えるお金がほとんど残っていないことが分かった。いや、むしろマイナスだった。私は毎月、貯金を切り崩して生活していたのだ。

ここで初めて、私は本気で予算を考え始めた。今までは「なんとなく使いすぎないようにしよう」くらいの意識だったが、このままでは貯金がなくなってしまう。でも、どこから削ればいいのか。食費を削る?交際費を削る?それとも趣味を我慢する?

悩みながらも、まずは「無意識の支出」を削ることにした。コンビニでのついで買いや、特に必要でもないのに買ってしまう雑貨類。これだけで月2万円近く浮くはずだ。次に、交際費の見直し。全ての誘いを断るわけではなく、本当に行きたい飲み会だけに絞る。そして、被服費は月に一度、予算内でまとめ買いすることにした。今までは欲しいと思ったときに買っていたが、それだと無計画にお金が出ていってしまう。

新しい予算を設定し直したとき、不思議な気持ちになった。数字は以前より少ないのに、なぜか安心感があった。それは、この数字が「実態に基づいている」からだと気づいた。以前の予算は、理想や希望で決めた数字だった。でも今回の予算は、自分の実際の生活を見つめて、削れるところを削り、必要なところは確保した、現実的な数字だった。

自分なりに工夫したポイント

予算を立て直してからも、すぐに順調にいったわけではなかった。予算内に収めようとするあまり、月の後半は極端に支出を抑えて、ストレスを溜めてしまったこともあった。そこで私は、アプリをもっと自分に合った形にカスタマイズしていくことにした。

まず工夫したのは、「週単位」での予算管理だった。アプリの基本機能は月単位の予算管理だったが、私にとっては一ヶ月という期間が長すぎた。月初めに使いすぎても「まだ時間がある」と油断してしまうし、逆に月末に残高を見て焦っても手遅れだった。そこで、月の予算を四週で割って、週ごとの予算を自分でメモ欄に書き込むことにした。

例えば、食費の月予算が4万円なら、週に1万円。毎週日曜日の夜に、その週の食費を振り返って、予算内に収まっているかチェックする。もし使いすぎていたら、次の週は少し控えめにする。逆に余っていたら、その分を次週に繰り越すか、ちょっとした贅沢に使っていい、というルールにした。この週単位の管理が、私には合っていた。一週間なら具体的に「何にいくら使ったか」を覚えているし、軌道修正もしやすい。

次に工夫したのは、「特別費」の項目を作ったことだ。冠婚葬祭、医療費、家電の買い替えなど、毎月は発生しないけれど、年に数回ある大きな出費。これらを通常の予算に組み込むと、予算が狂ってしまう。そこで、毎月5千円ずつ「特別費用の積立」として別に取り分けることにした。実際にお金を別口座に移すわけではないが、アプリ上で「貯蓄」として記録し、特別な出費があったときにはここから使う、という形にした。これで、結婚式のご祝儀で3万円出ても、通常の生活費を圧迫せずに済むようになった。

それから、支出の記録方法も工夫した。最初は全ての買い物を細かく分類していたが、これが面倒で続かなくなりそうだった。そこで、「ざっくり分類」に切り替えた。ドラッグストアでの買い物は、多少お菓子が混じっていても「日用品」でまとめる。完璧を求めすぎず、だいたい合っていればOK、という気楽なスタンスにした。大事なのは、細かい正確性ではなく、全体の傾向を把握することだと割り切った。

また、モチベーション維持のために、小さなご褒美システムも作った。月の予算内に収まったら、余った金額の半分は好きなことに使っていい、というルール。もう半分は貯金に回す。例えば、今月は予算より4千円余った。そうしたら2千円は貯金、2千円は自分へのご褒美として、ちょっと高めのスイーツを買ったり、気になっていた本を買ったりする。この「余ったお金で買う」という行為が、不思議と罪悪感なく楽しめた。むしろ、節約のご褒美として、以前より味わって消費できるようになった気がする。

もう一つ、大きく工夫したのは「見える化」の方法だった。アプリの中だけで見ていると、どうしても実感が薄い。そこで、毎週日曜日の振り返りのときに、スマホのスクリーンショットを撮って、専用のアルバムに保存することにした。週ごとの予算の推移や、各項目の使用率を、パラパラと見返せるようにしたのだ。これが意外と効果的だった。三ヶ月前、二ヶ月前、先月と並べて見ると、自分の改善が目に見えて分かる。食費の使いすぎが徐々に改善されていく様子や、無駄遣いが減っていく過程が、視覚的に実感できた。この「成長の記録」を見ることが、続けるモチベーションになった。

日常や生活でどう変わったか

家計簿アプリを使い始めて半年が経った頃、私の日常は静かに、でも確実に変わっていた。一番大きな変化は、月末の不安がなくなったことだ。以前は給料日前になると、「今月大丈夫かな」とドキドキしながら通帳を確認していた。でも今は、常に予算残高を把握しているから、月末に驚くことがない。「今月の食費はあと5千円、交際費はあと3千円」と分かっているから、残りの日数で調整できる。この「把握している」という安心感は、想像以上に大きかった。

買い物の仕方も変わった。スーパーに行くとき、以前は特に考えずにカゴに商品を入れていた。今は、アプリで今週の食費残高を確認してから行く。残りが少なければ、本当に必要なものだけを買う。余裕があれば、少し良い食材を買ってもいい。この「メリハリ」がつけられるようになったのが、大きな変化だった。全てを我慢するわけではなく、使うべきところには使う。でも無駄なところは削る。その判断が、感覚ではなく数字に基づいてできるようになった。

外食の楽しみ方も変わった。以前は、誘われたらとりあえず行く、というスタンスだった。でも今は、「今月の交際費予算、あとどれくらい残ってるかな」と確認してから決める。予算が厳しいときは、正直に「今月ちょっと厳しいから、来月にしない?」と言えるようになった。最初は言い出しづらかったが、友人たちは意外と理解してくれた。むしろ「私も実は今月きついんだよね」と言われることも多くて、みんな同じなんだな、と安心した。

そして、予算に余裕があるときの外食は、罪悪感なく心から楽しめるようになった。以前は食事中も「今月使いすぎてるかも」という不安が頭の片隅にあったが、今は「今月はまだ余裕があるから大丈夫」と思いながら食べられる。この精神的な余裕が、食事の美味しさを何倍にもしてくれる気がする。

仕事中の過ごし方も少し変わった。以前はランチタイムに、同僚に誘われるまま毎日外食していた。でも今は、週に二回は手作りのお弁当を持っていく。お弁当を作ること自体は面倒だが、その分の予算が浮いて、月末に好きなものを買える、と思うとモチベーションが上がる。そして不思議なことに、お弁当を作るようになってから、自炊の頻度も増えた。週末にまとめて作り置きをするようになり、平日の夕食も外食が減った。結果として、食費の予算達成率が上がった。

休日の過ごし方にも変化があった。以前は、特に予定がないとショッピングモールをぶらぶら歩いて、なんとなく服や雑貨を買ってしまうことが多かった。でも今は、予算の残高を見てから出かける場所を決める。予算が厳しい週は、お金のかからない図書館や公園に行く。予算に余裕がある週は、気になっていたカフェに行ったり、欲しかった服を買いに行ったりする。同じ休日でも、計画的に過ごせるようになった。

意外だったのは、貯金が増え始めたことだ。私は家計簿アプリを「貯金のため」に始めたわけではなく、「月末に後悔しないため」に始めた。でも、予算内で生活できるようになったことで、自然と余剰金が出るようになった。その余剰金の半分を貯金に回すルールにしていたから、気づけば数万円の貯金ができていた。以前は「貯金しなきゃ」と思っても、気づくとお金がなくなっていた。でも今は、「使わなかったお金が貯金になる」という感覚。この違いは大きかった。

周りの人間関係にも、良い影響があった。友人と食事に行ったとき、私が家計簿アプリの話をすると、興味を持ってくれる人が多かった。「私も月末いつもお金なくて困ってるんだよね」という友人に、アプリを勧めたこともある。そして、お金の話を以前よりオープンにできるようになった。「今月予算厳しいから」と正直に言えるし、逆に友人が「ごめん、今月ピンチで」と言ってきても、共感できる。お金の話がタブーではなく、日常会話の一部になった。

続けてみて見えてきたこと

一年以上続けてみて、予算の見える化がもたらしたものは、単なる節約や家計管理以上のものだったと感じている。それは、「自分自身の価値観の見える化」だった。

毎月の支出データを見返していると、自分が何にお金を使っているかが、そのまま自分の価値観を表していることに気づいた。例えば、私は美容費より書籍代の方が多い。これは、外見を磨くことより知識を得ることに価値を置いているということだ。交際費は削りたくない一方で、被服費は最低限で満足している。これは、人との繋がりを大切にしているけれど、ファッションにはそこまで興味がない、という価値観の表れだ。

この気づきは、予算配分を考えるときにも役立った。世間一般の「理想的な家計の内訳」を参考にするのではなく、自分の価値観に合った予算配分をすることが大切だと分かった。私にとっては、書籍代や習い事の費用は削りたくない。これらは私の人生を豊かにしてくれるものだから、優先順位が高い。一方で、流行の服を追いかけることには興味がないから、被服費は最小限でいい。このように、自分の価値観に基づいて予算を組むことで、無理なく続けられるようになった。

また、予算の見える化は、将来への不安を軽減してくれた。以前は、「老後のお金は大丈夫だろうか」「もし病気になったら」といった漠然とした不安があった。でも、毎月の収支を把握し、少しずつでも貯金ができていることを実感できるようになると、その不安が和らいだ。もちろん、まだまだ十分な貯金があるわけではない。でも、「今の生活を続けていけば、毎月これくらい貯金できる」という見通しが立つだけで、心が落ち着く。

予算管理を続ける中で、「完璧を求めない」ことの大切さも学んだ。月によっては予算オーバーすることもある。急な出費が重なることもあるし、友人の結婚式が続くこともある。そんなとき、以前なら「ああ、またダメだった」と落ち込んでいたかもしれない。でも今は、「今月はイレギュラーな出費が多かったから、来月で調整しよう」と冷静に考えられる。大事なのは、一ヶ月単位で完璧にすることではなく、年間を通してバランスを取ることだと分かった。

そして何より、予算の見える化は「お金との向き合い方」を変えてくれた。以前の私にとって、お金は「足りない」「不安」というネガティブな存在だった。でも今は、お金は自分の価値観を実現するためのツールだと思えるようになった。適切に管理すれば、自分の望む生活を実現できる。そのための第一歩が、予算を見える化することだった。

データを振り返る楽しみも発見した。三ヶ月ごとに、支出のグラフを見返すのが習慣になった。「あ、この月はコロナで外食が減ったな」「この時期は引っ越しの準備で日用品が増えたな」と、グラフを見ながら自分の生活を振り返る。それはまるで、日記を読み返すような感覚だ。数字の羅列が、自分の人生の記録になっている。

最近では、予算管理が楽しくなってきた。以前は「やらなきゃいけないこと」だったが、今は「ゲーム感覚」で取り組んでいる。「今月は食費を予算内に収められるかな」「先月より無駄遣いを減らせるかな」と、自分との勝負のような感じ。達成できたときの喜びは、思いのほか大きい。

まとめ

振り返ってみると、家計簿アプリを使い始めたあの日から、私の生活は本当に変わった。でも、劇的に節約できるようになったとか、大金が貯まったとか、そういう派手な変化ではない。もっと静かで、もっと深いところでの変化だった。

毎月末に感じていた、あの言いようのない後悔と不安がなくなった。「今月もまた使いすぎた」「来月こそは気をつけよう」と思いながら、結局次の月も同じことを繰り返す。その負のループから抜け出せたことが、何よりも大きい。今は月末になっても、ドキドキしない。なぜなら、自分が何にいくら使ったか、残りはいくらか、それが全部見えているから。

予算の見える化がくれたのは、単なる数字の管理ではなかった。それは「安心」であり、「自由」であり、「自己理解」だった。予算という枠があることで、その中では自由に使える。何も考えずに使うのではなく、自分で選んで使う。その主体性が、お金に対する不安を減らしてくれた。

完璧な家計管理ができているわけではない。今でも時々、予算オーバーするし、記録を忘れることもある。でも、それでいいと思っている。大切なのは、完璧にやることではなく、自分のペースで続けること。そして、お金という数字の向こう側にある、自分の生活や価値観と向き合い続けること。

もしあなたも、私のように月末に後悔する生活を送っているなら、家計簿アプリを試してみてほしい。最初は戸惑うかもしれない。面倒だと感じるかもしれない。でも、続けていくうちに、きっと何かが見えてくる。それは単なる数字ではなく、あなた自身の生活の姿だ。そして、その姿が見えたとき、変わりたいと思っていたことが、少しずつ変わり始める。

私にとって、家計簿アプリは人生を変えるような大げさなものではない。でも、日々の小さな不安を減らし、毎日を少しだけ心地よくしてくれる、そんな存在だ。月末に後悔しない生活。それは、予算という小さな枠組みの中に、確かに存在している。